縁
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俺とかっちゃんはバッキンの店で一週間働いた。とは言ってもヒミコ達や孤児院の子供達にお土産を持っていったりもした。
他にもカルロ達がイチルア王国の意向で俺達の悪さを仕掛けてくる可能性もあったからでもある。
かっちゃん、ビアンカとともにバッキンの商業ギルドでカルロの情報を手に入れた。
そのために商業ギルドへの加入もした。
年会費として毎年金貨一枚を納めなくてはいけなくなったが、店とビアンカ姉妹の安全のためには必要だろう。
商業ギルドでは売りたい物や買いたい物の相談、斡旋をしてくれる。俺達には必要ないが便利な組織であろう。
商業ギルド員から聞いた話によると、カルロは二年ほど前に父親の店から独立してラマで頭角を現してきた新興商会らしい。
食料品、衣料品と生活必需品を中心に扱っていて物も良く、値段も妥当でまともな商会との事。
商業ギルドでは、そういう評判であった。
しかし疑問も残る。そんな短期間で王家からの依頼が来るものだろうか?父親との関係も悪くないと言うから父親の伝手で王家とのつながりが出来たのかも知れないが疑わしい。
もし俺達が賞金首と知っていてイチルア王国の騎士団辺りから差し向けられていたとしたらカルロからの情報も怪しい。
「お久しぶり。帰ってたんだね」
「やぁ、パオロ。店の商品補充で戻って来たんだ」
俺達が店先で品出しをしている時にパオロが来店した。
地味な感じの男だが腕は立つ気配の消し方も上手い。
ユリさんの件で一緒に行動したが信じるに足る男だ。
「護衛の仕事でバッキンから出る事になってね。塩を買いに来たんだ。あとソルティードッグを一杯ね」
パオロが来店理由を教えてくれる、
ギルドマスター達との宴会でも酒を呑んでいたし酒好きなんだろう。
「護衛って要人警護?商隊の護衛?」
「商隊の方だね」
商隊か……パオロは上位冒険者だから顔も広いかな?カルロの事を聞いてみよう。
「パオロ、ラマのカルロ商会のカルロって知ってる?」
「知っているけど何だい?」
「この間、本人がうちの塩を買いに来たんだ。それで彼の事を知りたくてね」
「ふむ……新興商会ながら順調に大きくなっているね。冒険者達を使うことも多いが冒険者からの評判は良いね。なんたって金払いが良い」
「ほー」
「店員達も明るくて良い対応をしてくれる」
「良い店の様だな。カルロは王家とも繋がりがあるらしいけど、その辺の事は知っているかい?」
「一時期話題になっていたね。新興商会が何故ってね」
「そうなるよねぇ」
「うむ。単純にラマ最大の商会主である父親の伝手らしいけどね」
「そうか。それでも若いのに大したものだな」
「だね」
「後、俺達の扱いはラマではどうなっているのかな?」
「冒険者ギルドでは問題ないだろうが騎士団と、衛兵には追われるんじゃないかな」
俺の事は忘れて欲しい物だ。
ラマとバッキンの行き来は普通に出来る。刺客が来ないとも限らないな。
俺が狙われるだけならいいけど、店やビアンカ姉妹を狙われると困る。
今のところ平穏だが何か手を打っておくか。
「情報料として一杯呑んでいきなよ」
「おぉ、ありがとう」
俺達はビアンカからソルティードッグを作ってもらい呑みだす。
グレープフルーツが見つかっていないから違う柑橘類であるレモンっぽくて酸味が少ない物を使っている。
レモンはあるけどここら辺では、利用価値が少ないようで安く売っている。精々水に絞って入れているくらいだ。
「パオロ、久しぶりやな。うちも呑むでー」
「やぁ、かっちゃん。お久しぶり」
デイジーと塩の配達に行っていたかっちゃんが戻って来て俺達が呑んでいるのを見つけて声を掛けてくる。
かっちゃんは酒呑み用のカウンターに入りかっちゃん用の背の高い椅子に座って呑みだす。
足をプラプラさせていて可愛い。
かっちゃんの細い尻尾が椅子の足をペシペシと叩いている。かっちゃんも酒好きだもんね。
パオロと呑んだ翌日にヒミコを訪ねた。
鬼の守護者を店で影の護衛として雇えないかと思ってさ。
冒険者より信用出来るし、腕も立つだろう。
最初は断られたがヤマトとミズホに会わせるからと言ったら、あっさり了承された。
護衛料は塩払いなので実質タダです。
話の後で孤児院の庭で焼肉をご馳走になった。
グローリアも遊びに来ていたので一緒に食べました。
「なっちゃんはいないの?」
グローリアが辺りを見回して俺に言う。
う……何だか不味い展開かも。
「なっちゃんはゴンタ達と一緒に山にいるんだ」
「なっちゃん……」
あわわ。グローリアが涙目になって俺を見上げてくる。
スカートの裾をギュッと握っている姿が俺の胸を締め付けて来る。
「ぐっちゃん、今度来る時はなっちゃんも一緒やからね」
俺がオロオロしていると、かっちゃんがフォローしてくれた。
「ほんとう?」
グローリアはジッとかっちゃんを見て言う。
「ホンマや。なっちゃんはぐっちゃんが好きやからねー」
「わたしも好きー」
「ぐっちゃんが泣いていると、なっちゃんも悲しくなってまうで?」
そう言われたグローリアは袖で涙を拭っている。
そんなグローリアの頭を撫でるかっちゃん。
「泣いてないのー」
「そうやな。ぐっちゃんはええ子やなー」
「うん!」
グローリアはニパッと笑顔になった。
小さい子には笑っていて欲しいね。
一度店へ走って戻り、ビアンカとデイジーも店を閉めて焼肉へ参加させた。
こういう時はみんなで楽しまないとな!
自分の店だから出来る芸当だ。
「ビアンカ、デイジー、俺達は明日バッキンを出るよ」
「そうですか……ゴンタ様にもよろしくお伝えください。次回はヤマト様とミズホ様にも合わせてくださいね?」
「早く会いたいです」
ビアンカ姉妹が言う。
「前から聞きたかったんだけど、初めて会ったときからゴンタ様って呼んでたよね?何で?」
俺は疑問に思っていた事をビアンカに聞いた。
「えっ!?だってゴンタ様ですよ?」
「ゴンタ様ですもん」
ビアンカとデイジーの返答は答えになっていなかった……何で解らないんですかという顔をされても困る。
「ミナモとはどう違うん?」
「かっちゃんでもゴンタ様とミナモを一緒にするのは許せませんよ!」
「ですっ!」
「あぁ……すまんなぁ」
ビアンカ姉妹の剣幕に押されるかっちゃん。
「解ってくれれば良いのです」
ビアンカが鼻息も荒く言い放つ。
何やらこれ以上の言及は難しそうだ。
何が彼女らにそこまで言わせるのか……謎は解けそうにない。
他の犬族に会ったら聞いてみるか。
全ての犬族がゴンタに会ったらこうなるのか気になります。
「トシさんは明日バッキンを出られるのですね」
ヒミコも話に加わって来た。
「はい。早朝に出ようと思います」
「次回はヤマトさんとミズホさんに会わせてくださいね?絶対ですよ?」
「絶対です!」
ヒミコとヤマに詰め寄られた。
「お、おう。ラミアの仲間も出来たから一緒に連れてくるよ」
「まぁ、ラミアですか!?」
「トシさんの所は賑やかですね」
ヒミコとヤマもラミアの事は知っているようだ。
「ギルスア王国の遺跡へ行った時に仲間になってね。今度は外に出ているラミアの捜索をするつもりなんだ」
「外ですか……盗賊にラミアが加わっているという噂は聞いていますよ?」
ヒミコが言う。
ヒミコは諸外国の情報も抜かりなく集めているようだな。
優秀な諜報員が世界へ散っているらしい。
「知っていましたか。俺達が追うのはそのラミアなんですよ。ラミアの里長からの依頼で情報を集めています」
「ラミアの里長……そうですか。そのラミアはドーツ王国の鉱山をまた襲った様ですわ」
「またですか!」
「はい。二週間ほど前に聞きました。どうも鉱物か鍛冶師を狙っているようですわね」
「ふむ」
思わぬところから情報が入ったな。ありがたい。
アンドロメダとシーダに良いお土産が出来た。
良い情報だけど、悲しい顔をされるんだろうな……ラミアの一族の者が賊として働いているのが悲しいだろうし、それを世間に知られているというのも耐えられないに違いない。
「ええ情報や。助かるで」
「お役に立てて嬉しいですわ。ですからヤマトさんとミズホさんの件をお願いします」
そこまでか……ゴンタ、ヤマト、ミズホの名前を出したらなんでもしてくれそうだな。大丈夫かヒミコ。そして隣で頷いているヤマもな。
その後も雑談と焼肉、酒を楽しんだ。
焼肉で、はしゃいでいる子供達を見ているのも楽しかった。
笑っている子供達は俺の心を穏やかにしてくれる。
そんな子供達の笑顔を守っているヒミコ達には頭が下がる。
店の雇用枠を増やしたり、差し入れといった援助を続けようと思った。
今度バッキンへ来るときはヤマトとミズホを必ず連れてこないとな……俺の身が危うい。




