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08「遠足の集合場所まで向かう」

08「遠足の集合場所まで向かう」


風呂ふろ場を後にした僕と日向ヒナタ

今日の遠足へ行く準備をととのえ、末広スエヒロさんの家の玄関げんかんを出た


目指すは・・・

キノコの雑貨屋ざっかやを定休日にしてまで来た「ヴィロサとヴォルヴァタ」

「おはつさん」こと「松林 初(マツバヤシ ハツ)」

ルリルリ…いや、「初さん」こと「瑠璃小路 初(ルリコウジ ハツ)」

そして車で、遠足の集合場所まで連れて行ってくれる「末広さん」が待つ

末広さんの家のとなり隣接りんせつした駐車場ちゅうしゃじょう


僕は日向の案内で、日向と一緒に庭を抜け

この家の勝手口から出て、駐車場に辿たどり着いた


その駐車場には…そのメンツだけでは無く

「畑 千野(ハタケ ユキノ)」が、庭の畑から

ヤマドリ・B・ポルチーニじょうに届ける野菜を届けに来ていた。


千野は僕を見ると・・・

農業用の作業着として使っている

あわ褐色かっしょくのつなぎに、少し窮屈きゅうくつそうに隠されている胸を軽く弾ませ

御日様の香りと土の匂いをさせて、近付いて来る


『私の作った野菜は美味しかった?』

そうくからには、昨日の夕食や、朝食に使われていた野菜も

千野が作った物なのであろう…


僕は、さも残念そうな表情で

『ちょっとしたトラブルで全部食べれなくて残念だったけど

特に赤飯みたいな豆の入った御飯と、胡瓜きゅうりの浅漬けが美味しかったですよ』

『そうかそうか!』

千野は、僕の答えに満足した様子で満面の笑みを浮かべ


日向の『俺は小豆の赤飯のが好きだけどな』との一言で

千野は不機嫌そうにほほふくらませ

『同じ豆でも、煮物の飾りに入ってた「ささげ」は

もっと入ってても俺的には、よかったのにな…と、思うぞ』

との日向の一言で…また、機嫌が完全に直る


どうやら千野は、熱しやすく冷めやすい

ある意味で、扱いやすそうな性格をしているようだ


そして今の会話から・・・

千野は自分が作る作物の中で「ささげ」と言う豆がお気に入りだ

と、言う事が分かった


僕は、今後のキノコ娘達との付き合いを考え

キノコ擬人化図鑑で確認し

こっそりと、その詳細を携帯にメモって置く事にした。


僕等が駐車場に来た事で、出掛けるメンバーが全員がそろった

僕等は千野に見送られて

末広さんの運転するワゴン車で、隣町の電車の駅へと向かう


その間、ヴィロサとヴォルヴァタが・・・

僕のかばんから、勝手に「遠足のしおり」を取り出し

『なにこれ!コレって行く事に何か意味があるの?』

『あらあら…面白くなさそうな予定なのね』と

高校生の遠足の内容にケチを付ける


正直、そんな事・・・

キノコ娘達に言われなくても分かっている

だからって、休むと…内申書ないしんしょと単位が犠牲ぎせいになってしまうから

どんなに馬鹿馬鹿しかろうと、我慢がまんして参加するのが

学校の行事と言うもんであろう

僕は見て見ぬ振り、聞えてはいるが…聞いていない振りをする事にした。


『なぁ~春兎ハルト、一晩だけの体験で言うのも何なんだけどさ…』

末広さんの車に乗車してから、しばらく黙っていた日向が

僕に話し掛けてくる


『春兎は、キノコ娘達を嫌いになったりしないのか?』

『え?』

そんな事を聞かれると思ってなかったので

「そもそも、キノコ娘に特別な感情持ってないし」と

僕は少し考える


『今の所、別に嫌うまでの事はないな…

必要最低限のルールを守っていてくれさえすれば

僕は別に気にならないし』

『へ~そぉ~なんだ…』

日向は何か言いたげに僕を見るが、そこは無視する事にする。


日向も、出掛ける前の事等に突っ込みを入れる方はあきらめたようで

大きく溜息ためいき

『必要最低限のルールってなに?』と

当たりさわりない事を訊いて来た


『僕の家や部屋で勝手に繁殖はんしょくしたりしない事…

空以外は皆…一応の所、約束守ってくれてるんだよ』

『繁殖って…あ~まぁ~…変な所に、繁殖されたら困るよな…』

日向は、キノコが生えた家を想像したらしい


会話に入って来ていない末広さんが

運転しながらも、僕等の会話を聞いてクスクス笑っている


『で、空は良いのか?』

僕的に訊かれたくないが、自分から口にした事なので

今度は僕が溜息を吐きながら・・・


『最初に出会った日には、すでに家に帰ったら繁殖されてて

僕の母親が「めずらしいし可愛かわいいから」って言って

空色茸ソライロタケ」を家の中至る所で育ててるんだよ…

それでも、「植木鉢の中以外では繁殖しない」って約束

ちゃんと守ってるから、放置する事にしている』


日向は僕にあわれみを帯びた視線を送り

『春兎、お前って人間の器の大きい男なんだな…』

『そりゃどぉ~も』

僕は人生を諦めたようなうれいを帯びた笑いを返した。


『あぁ~そう言う事か…もう、寄生きせいされてしまっていたんだね

だから、春兎君の御両親ごりょうしんは「空」の存在を違和感いわかんなく

受け入れていたんだ』

僕等の会話を黙って聞いていた末広さんが

何気なく可笑おかしな事を口にする


『あの…「寄生」って何の事ですか?』

『ん?キノコ娘の女王陛下付じょうおうへいかつきの人間の従者じゅうしゃから聞かなかったか?』

僕が質問した事で、末広さんが運転をしながら驚いた顔をした


『キノコ娘は、気に入った人間の血筋に寄生する事があるんだよ

寄生された人間の身近な血縁者は、無条件で…

キノコ娘達と交友を温められるようになるんだぞ!凄かろう?

因みに、家の家系は私が千野に寄生されているから

私の兄にも影響があって

その孫の日向にも、キノコ娘を強く認識できるんだよ』


『へぇ~そうなんだ』と、日向は納得しているが…僕は・・・

「ちょっと待て、その寄生の仕方って怖くないか?

どう言う理屈でそうなるのかも、理解できないぞ!」と、思った。


僕はまた、知らなかった事実が出てきて…不意に不安を感じ

ヴィロサとヴォルヴァタのいる僕等の後ろの座席に顔を出す

『2人は僕にうそや、何か…まだ、僕に話していない事はないか?』

ヴィロサとヴォルヴァタは、僕に対して微笑ほほえ


『私達は毒キノコのキノコ娘なのよ?

毒抜きして美味しく食べられるキノコでもないわ!』

『そうそう、毒キノコに毒が無くなったら

ただのキノコになってしまいますね…そんな都合のいい事

あると思います?』

2人の答えを聞いて・・・

僕は溜息を吐き、黙って座席に戻る事になった


今の雰囲気ふんいきから、まだまだ色々あるらしい事が僕にも推測すいそくできた

日向は、僕を同情する様に『どんまい』と

僕の背中を優しくポンポンっと2度叩き…

『キノコ娘と知り合って良い事だってあるだろ?』と、言う


『あったかなぁ~?』

僕は「無い気がする」と、言う言葉を飲み込んで

苦笑にがわらいを浮かべるしかできなかった。


『そう言えば…春兎は、キノコ娘に欲情したりはしないのか?』

僕は、急に小声になった日向に耳打ちされ戸惑とまどった

『欲情って…誰に対してだよ』


「そもそも、キノコ娘が自分達の前後に乗車した車内で

何故その話を持って来るんだ?」


僕は後ろの座席に乗っているヴィロサとヴォルヴァタ

前の座背のおはつさんと初さんの様子を見てから、日向に小声で返す

『僕の知る限りのキノコ娘に、僕が欲情するのは無理だぞ…

皆、エロくないだろ?』


僕は、風呂場での事を思い出し

『それ以前に、じらいあってのエロスだと思わないか?

正直、僕は…露出狂ろしゅつきょうのオッサンよろしく恥じらいも色気も無く

女の子が全裸で出て来てもエロイとは思えないのだが…どうだろう?』

『そうか?女の子が全裸で出てきたら、エロくないか?』

裸族らぞくにエロさは、感じれ無いだろ?』


僕はふと、思い付き

『例えばの話だけど・・・

風呂場で全裸で、犬のウンコんだくつの裏や服を手洗いしてて

洗面所に近付くと、ウンコの付着した物を片手に

そのままの姿で出て来て、無駄むだにエロイ事を言われてみろよ

日向は、そんなシチュエーションでエロイ気持ちになれるのか?』


日向は一瞬、考え

『それって実話だろ?…しかも、ブーマーの事か?

流石さすがに俺も、あのキノコ娘に対してそれは無理だわ…

彼女…エロイ事言ってても、色気が無さ過ぎてエロくない』

『だろ?』

『じゃぁ~ヴィロサさんとかにはどう?』


僕は座席の隙間すきまからヴィロサを見て…『無いな…』と、心底思った

『日向的には、ヴィロサは有りなのか?』

訊き返され、困った様子の日向は…

『毒があるからかな?美人で、胸元が開いた服装で

体のライン的にエロイはずなのにエロくないよな?どう思う?』

『僕に訊き返すなよ』と、僕はちょっと笑い


暫く論議ろんぎして、僕等の中で

「キノコ娘達に『エロさを求める事』それ自体が間違っている」と、言う

結論けつろんが出たころには・・・

僕等は無駄にエロくなりきれないエロトークで盛り上がり過ぎ

何時いつの間にか普通の声で会話してて


おはつさんと初さんに・・・

まるで、道端みちばたに落ちている犬の糞でも見るかの様に

ヴィロサとヴォルヴァタには・・・

「君達、馬鹿でしょ?」と、言わんばかりの表情で見られ


女性陣の無言の攻撃にちょっとだけ、自分達の会話を恥じる事となり

末広さんに『まだまだ、御子様だねぇ~うらやましいよ』と

温かい目で見られ、ちょっと反省はんせいする事態におちいっていた。


気付けば車は、隣町の電車の駅前近くまで来ていた

僕等は『この辺で良いです』と、車を降りる事にする


『そうか?じゃあ…また、後でな』

末広さんは僕等が車を降りると、イベント会場まで車で向かう為

山へと車を走らせた


その場に残された僕と日向は車を見送り、振り返って沈黙ちんもくする

『春兎!日向!遠足は?遠足は何処どこ?』

「5」のヘアピンを付けた、「No、1~No、5」までいる

ビターマロンズの「No、5(ナンバー、ファイブ)」だけが何故なぜか付いて来ていた。


『春兎、どうするよ…』

僕は携帯を出し、末広さんの番号を知らなかった事に気付く

『日向、末広さんの番号知ってる?電話で呼び戻してあずけよう』

『そうだな…って、あれ…ごめん…

何か俺、もしかしたら携帯忘れてきたかもしんない』

一応、僕も日向の鞄を確認し2人で沈黙する


自分の家に電話して、そっち経由で連絡を回して貰う事も考えたが…

事態が悪化しそうなので、僕はメールだけして携帯を鞄にしまう事にした


此処ここに、置いていく訳には…いかないよな』

日向はオロオロしている

『それは駄目だめだろ!御子様を置き去りにしちゃ…

仕方ない、僕が先生に交渉こうしょうしてみるしかなさそうだな…

駄目だったら僕は帰るから…末広さん達によろしく、遠足の後の事も!』

僕は、時間の余裕もそう無い事に気付き

自分の荷物と「No、5」の手を引き歩き出す事を選んだ。


冗談じょうだんだろ?それだけは勘弁かんべんしてくれ!

春兎が帰るなら、俺も一緒に帰るか…むしろ、帰らせねぇ~ぞ!』

日向は追掛けて来て、No、5をはさんで隣に並ぶ

『多分、俺にはヴィロサさんとヴォルヴァタさんの相手は無理だ』

日向の素直な意見に、僕は少し想像を膨らませ

日向が2人にいじめられている様子を思い浮かべ、少しだけ笑ってしまう


『ねぇ~遠足まだぁ~?』

No、5が僕と日向の手を引っ張る

僕は、No、5の髪と日向の髪を見比べ適当な事を思い付く


『5、僕や日向との関係を訊かれたら「親戚しんせき」って答えられる?

出来るならコンビニに寄って

遠足に一番、必要な…「遠足のおやつ」買ってあげるよ』

『わぁ~い!遠足ぅ~おっやつぅ~』

No、5は僕等の手を放し、目の前のコンビニに入って行ってしまった。


『と、言う事で…日向も「5や僕」との関係を訊かれたら

遠過とおすぎて教えるのが面倒めんどうな程度の親戚」って答えるようにな!

多分、5は…

僕の家に住み付いている事を素直に話してしまうだろうから

コレが、矛盾むじゅんに気付かれるリスクをける為の予防線に成ると思う

協力きょうりょくしてくれるよな?』


『おう!』

日向は、ちゃんと全部を理解出来ていなさそうな雰囲気だが

協力はしてくれそうだった


僕等はNo、5を追ってコンビニに入り

飲み物とおやつを買ってから、遠足の集合場所へ向かった。

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