05「森野の日常に足されたキノコ達」
05「森野の日常に足されたキノコ達」
世の中、理不尽な事は少なくない…
『理不尽に対抗するでなく、諦めるでもなく開き直って
次の道を模索するって事が「一番、有意義」で、大事なんだよ』と
僕が個人的に勝手に崇めている「師匠」が昔、言っていた
だから僕は、特別仕様のoso的キノコ擬人化図鑑を片手に
キノコの妖精達と共存する生活を送る事を拒絶せず
関係を楽しむ為に受け入れていく事を心に決めたのだが、しかし…
『これはメリットより、デメリットの方が大きくないか?』
僕は今…最大級の「後悔」を抱えている。
ヴォルヴァタの説明不足さ加減から
後日、ヴィロサに教えて貰う事となった
「キノコ専門ネゴシエイターの候補者」に必要な絶対条件が
僕を悲しくさせる原因になっていたのだ
「友人以上になった全てのキノコ娘達を必ず
平等で均等、平均的に扱わなければイケナイ」だなんて
僕的には、相手が2人3人…
せいぜい最大5人か6人までなら、「何とか成るかもしれない」
と、言う所だが・・・
「キノコ種類の数だけ存在する娘達の半分以上と仲良く」
と、なれば話は別で…
そんな状況下って、冗談抜きで難し過ぎるでしょ?
そう思いませんか?
更に、平等に扱わないと・・・
不満を持ったキノコ娘達から嫉妬の籠った攻撃を受けるって…
マジで笑えないんですが、如何いたしましょう?
而も、登録された当日ならば…
「キノコ専門ネゴシエイターの候補」を拒否する事が
可能であった…と、言う事実
拒否しても、本当は大丈夫で
キノコ娘達の気を引く事になる、見得る様になった目は…
得れなくなる方法・・・
伊達眼鏡でも掛ければ、少しは見えなくなって事態改善するのだそうな
「正直、そう言う事は…先に教えて欲しかった」
たまたま立ち寄った店の店員がソレで・・・
とかで会話しても、キノコ娘だと気付かない振りをしておけば
キノコ娘にちょっかい掛けられずに、安全に普通に暮らせたらしい
「って、僕が事態を少しも把握していなかった時の
彼女等の、あの時の、あの大袈裟な態度は何だったんだ?」
僕は若干、アレは詐欺だと思っている
でも、空はその事を知らなかったそうで…
ヴィロサの方は知っていたが…
「面白そうだから」と、故意に隠蔽していた…と、言う事だ。
そこに続きまして・・・
「キノコ専門ネゴシエイターの候補者」が受けられる恩恵にも
虚しさを禁じ得なかった
キノコな友人達以外のキノコの妖精とも、一応は交渉できる
「キノコ専門ネゴシエイター」の能力は・・・
「交渉できるだけで、友達以上にならないと意味が無いのだけれども」
それなりに100歩譲って「良し」としよう…
友達以上になったキノコに対しての限定特典
美味しいキノコを見分けられる
「キノコ・ソムリエ」的な能力については・・・
因みに、日本に生息するキノコの生息数は約5,000~6,000種
僕の知る限り、その中で名前が付いて図鑑に載ってるのが約2,000種程度
その中の10%のキノコ「200種程度」が食べれるキノコで
それですら「取敢えず、食べれる」であって
食用に向くと言う意味では無かったりするのは、如何な現状か?
「そう考えてくと、殆どが毒キノコじゃねぇ~のか?」とか
「毒キノコに対してそんな能力ありましても…ねぇ?」とか
「そもそも僕は…キノコを食べるのが苦手なんだが」と、言う事で
「僕のやる気が削がれていく」ってのは…放置して良い問題か?
他にも、友達以上になった毒キノコを100%見分けられる
「キノコ狩り名人」的な能力があるらしいが・・・
毒キノコと食えるキノコの比率は無視したとしても
「友達じゃないキノコの見分けが出来なきゃ危なくないか?
寧ろ、油断した分だけ危険な気がするぞ!」
そんな僕の疑問に、ヴォルヴァタは・・・
『じゃ、食べなきゃいいでしょ!春兎ちゃんは意地悪さんだなぁ~』
と、可愛らしく逆切れしてきた。
んでもって、「キノコ専門ネゴシエイター」のレベルを上げると
進化系「キノコ・ルーラ」と、言うモノに成れるらしいのだが
「ルーラ『ruler』」とは「支配者・統治者・主権者」と、言う意味で
季節外れで眠ってるキノコの妖精を起こして、キノコを養殖できる様な
どんな時期でも、どんなキノコの妖精にでも命令できる
そんな感じの能力が手に入るらしいのだが・・・
キノコ工場や、キノコ食材の専門店又は、キノコ料理専門の店
そんな職業を選ばないと役に立たない能力…と、言う訳でもないそうだ
マイナス方向な意味で・・・
実は、普通に気軽に使える能力ではないらしい
「まぁ~初期段階で、キノコ娘達を平等にってあるから
当たり前の事なのかもしれないのだが…」
「ルーラ」の意味「支配者・統治者・主権者」を無視して
現実問題、会社における中間管理職的な役割でしかないと
ここ数日で、僕は悟った。
悟った場所は、ヴィロサが店長をしている店…僕のバイト先
雑貨屋「このこどこのこきのこなこのこ」のアルバイト店員になって
僕は、本当に後悔している
そう、僕は「このこどこのこきのこなこのこ」のアルバイト店員で
「キノコ専門ネゴシエイターの候補」になった事で
キノコ娘達の中で有名人になってしまったのだ
有名人になると、突然「見知らぬ親戚」が、増えたり…
聴いた事の無い「友人・知人」湧いて出たり…
憶えの無い「元恋人」が降って湧いたりするモノらしいが
それはどうも…眉唾モノではなくて、本当の事らしかった
キノコ娘達は冗談抜きで、親戚と偽って遊びに来ている
どんなトリックが隠されているのかは知らないが
僕の両親は…『そう言う親戚が居たと思う』と、それぞれに言う。
そして只今、僕の家には・・・
今日まで見た事も聞いた事も無かった、
初対面の親戚の子が、ワラワラ集まってきている
同じ顔が5つ、ほぼ御揃いの髪型、御揃いの服を着て
裾が蜘蛛の巣状に編まれた御揃いの短いマントを付けて
御揃いの栗のペンダントをした
5人揃ったロリ娘達、通称「ビター・マロンズ」
「苦栗・Ⅰ~Ⅴ・マロン」達と
後、僕的にちょっと『あのキノコ娘は、大丈夫なのか?』と訊きたくなる
「ブーマー」と呼ばれているキノコ娘が…
空と一緒に、僕の家の僕の部屋で
僕の母が作ったクッキーを食い荒らしながら遊んでくれている
僕は後片付けの事を思い、溜息を吐いた。
そして、僕の両親は・・・
僕の将来を左右するつもりでいるらしき気品高いキノコ娘と
そんな彼女に付き従う従者の様なスーツ姿の年配なオジサマを前にして
ガチガチに緊張し…僕の意思を確認しないで
勝手にキノコ娘とオジサマの申し出を了承していた。
実はそのオジサマ・・・
世界的な大きな企業には「必ず何人かはいる」と、言う
噂の最高幹部な偉い人らしい
僕の両親が緊張する理由は・・・
僕の父の働く会社が、その会社の子会社であるから…だそうだ
オジサマがニコヤカニ…満足気に口を開く
『春兎君が高校を卒業した後は…
我が社で働きながら大学に通い、各種資格を取得した後
大学卒業後は、我が社に正式に入社する…と、言う事で
異論はありませんね?
では、サインを頂いた契約書類を持ち帰らせて頂きます。』
オジサマとキノコ娘は、契約書の写しを残して行く
僕はキノコ娘が支配する会社に
今、正にガチで売り飛ばされてしまっていたのだ
「さて…今後の僕の人生は終わってるのかもしれないな…」
人生を悲観して黄昏ている僕に対し
「女王殿下」と呼ばれているキノコ娘は、僕を一度だけ見て
『今後の働きを期待しています、ごきげんよう』と、言って
我が家の目に前に停車させていたリムジンに乗って帰って行った。
因みに・・・
女王殿下に「オジサマ」と、呼ばれていたオジサマは…
僕と同じ人間で、「キノコ専門ネゴシエイター」を経て
「キノコ・ルーラ」となるまでレベルを上げ
カンパニーの最高幹部になったらしい
更に言えば・・・
オジサマは、キノコ娘の女王殿下に仕えている
4人の「執事」兼「秘書」の内の一人で…
序に説明すると・・・
僕は、そのオジサマの跡継ぎ候補の一人に選出されていたらしい
「明日、バイトに行った時にでもヴォルヴァタに…いやいや駄目だ
彼女に訊いたら二度手間になるな…
ヴィロサに、詳しく話を訊いてみる必要がありそうだ」
僕は、卒業後に実質無償で行く大学とその後の就職が決まって
大喜びしてくれている両親を尻目に、取敢えず自室へ戻る事にした。
想定していたのとは違い
部屋は、まぁ~まぁ~綺麗に保たれていたのだが・・・
僕は、自分の開いた部屋の扉の前
僕専用にカスタマイズされた、oso的キノコ擬人化図鑑を開く
後ろからなので、顔は見えないが…
何処となく手とか震えてるみたいで、なんかちょっとイッテル雰囲気
琥珀色の毛先が薄い色なっていくグラデーションの毛艶の良い綺麗な髪
白いマフラー?に、黒いポンチョ?いや…マント?
ポンチョなのかマントなのか分からないのと同じ様に
縦線ラインの入った白系のワンピースの裾には白いファー
腕には青い刺青・・・
『ん~…これか?』
僕は図鑑に描かれた絵を頼りに「ブーマー」と呼ばれる
キノコ娘の正体を確認した。
僕は解説を読んで、部屋に入るのを躊躇した
「ちょっと、図鑑の最後の方の解説の伏せ字が気になるし…」
強いて言えば・・・
幼女達の会話の内容に、男として逃げ出したくなった
なぁ~んて事もあるが…
「このまま放置する訳にも…」
僕は勇気を出して自分の部屋に足を踏み入れた。
僕に気付いた空の表情が凍りつく
『わ…私…ホントは…AVとか…興味…無いから…ね…ホント…だよ』
空が俯きながら漏らした言葉は、図鑑の解説にも近い状態で載っていた
僕に見詰められ黄色くなった空は
部屋の中で傘を差し、身を隠そうとする…
そんな空を見て、僕の顔から抑えようの無い苦笑いが零れる
「確かに、エロイ話しを口にしていたのはブーマーってキノコ娘だが」
僕が見た・・・
ブーマーと2人、向き合ってエロイ話を聴く空の表情から
「空よ!興味津々にしか見えなかったぞ」
僕は空の表情を思い出しつつ、傘にポンポンっと優しく指先で触れ
『空は、動物は好きか?
AVはAVでも、アダルトじゃないAVはどうかな?
アニマルの方…」と、言って
犬や猫のDVDとポータブルプレーヤーを渡してみた。
僕は何故か、幼女系なキノコ娘に付き纏われる傾向にある様なので
『対処に困るだろう?』と、ヴィロサに
そう言う娘等が好みそうなアイテムを無償提供して貰っていたのだ
「ありがとうヴィロサ!本当に助かってる」
僕は本気で、ヴィロサに感謝しながら
主に「ビター・マロンズ」が散らかしたであろう場所の掃除を開始した。
ビターマロンズのNo.4の娘以外の6人が
DVDの釘付けになってくれて、掃除は捗ったが背中が重たい…
4と言う数字の形を模したヘアピンを付けた娘が
『お兄ちゃん!皆がかまってくれないよ?ねぇ~私と遊んで!』と
僕の背中に張り付いて来ているのだ
「4の娘が一番懐いてくれてるんだが…困ったな」
暫くすると、空が気付き…No.3の娘が気付き…
ブーマー以外の娘が、僕におんぶや抱っこをせがんでくる様になる
「休日が休日じゃ無くなったな…」
僕の日常はこうやって、キノコ娘達に浸食されて行くのであった。