13「日常化して行くトラブル」
13「日常化して行くトラブル」
雛が・・・
『今日は、リカちゃんが失敗できない御仕事に行っていて
リカちゃんが御迎えに来るまで、この周辺で待っていなきゃ駄目なの』
なぁ~んて事を言うので
「リカちゃんって…人間か?それとも、キノコ娘なんだろうか?」
待ち人が何者かは知らないけれども
小さいキノコ娘な御嬢さんを一人きりにするのも忍びなく
日向も雛に気を使ってか?
『こんな時間になると、家に帰るのも面倒くさいな…
そうだ、今日は俺等と一緒に此処で夜遊びする?』と・・・
僕も似た様な事を提案しようと思っていたので、丁度良かったが
日向が僕の了承を得る事無く言い出して、そうする事になった。
幸いな事に、キノコ娘効果による暗黙の了解で・・・
面会時間を越えても、騒いでいても怒られない様子なので
僕と日向と雛は夜通し雑談と御菓子パーティーに華を咲かせる
キノコ娘が近くに存在する事による特殊な効果の存在に
まだ、慣れていない僕は…最初、戸惑いを覚えたのだが
一晩を通して、慣れる事が出来た
「騒いでも、人に迷惑が掛からなくなる効果って凄いね
手放せなくなりそうだ…」
そして「入院費用」は、臭裏紅の保護者の「山中さん持ち」で
明日は「末広さん」が「車を出して家まで送ってくれる」
と、言う事なので・・・
僕と日向は、自分達の財布の中の金が続く限り
雛を連れて売店を何度も往復し
僕は看護婦さんに・・・
『森野君、君は頭を怪我してるんだから安静にね』と
数回注意を受ける事になったが
3人で、本当に楽しい時間を過ごす事が出来た。
今まで僕がやった事の無かった「羽目を外した行為」は
「ちょっと楽しくて癖になりそうだ」と、思え
僕は「また、こう言う機会があっても良いな」とは、思ったのだが・・・
この時はまだ、こんな事が日常化するなんて事を想定していなかった
将来的に、こう言う存在を受け入れた事を後悔する事になるんだが
それは未来の話しであって、今は関係ない。
外が白みだした夜明け前・・・
何時の間にか雛が、僕の膝の上で寝静まり
僕と日向も仮眠を取ろうとした時、病室の扉が開いた
「看護婦さんが様子を見に来たのか?」と思ったら…
ベットを囲む薄い色合いのカーテンを開けたのは
見覚えの無い事は無い気がする、黒いパンツスーツ姿の女性だった
僕は彼女に指を指し、頭を抱え…
『あ…えぇ~っとぉ~』
何かを思い出し掛け腕を組んで小首を傾げる
『貴女と何処かで会った事ありますよね?』
僕は失礼ながら、彼女の顔を目をじっと見据えた。
日向が空気を読んで、僕のキノコの擬人化図鑑を開いて渡してくれる
「気遣い上手め…」
僕は図鑑を覗き込んで…
日向の御蔭で何んとか、彼女の事を思い出せた
『大阪弁の…と、違くて…前に駅の階段で、助けてくれましたよね?
あの時はありがとうございました』と、僕が言うと…
タキシードを着こなす男装の麗人ルッスラ・S・ニグリカも
何か思い出したらしく、舌打ちしてから
『あん時の…って、まぁ~えぇ~わ
雛が気に入ったんやったら問題ないんけど、何でこぉ~なったん?』
雛は、上に来ていた赤い着物を脱ぎ捨て
襦袢姿になって、幸せそうに熟睡する
ルッスラ・S・ニグリカは、雛を何か言いたげに見詰めていた。
僕と日向が、今まで思いもしなかった有らぬ誤解に動揺し
「どう説明したら良いんだろうか?」と本気で悩んでいると・・・
驚くべき方向から
余計な誤解を新たに生んでくれる救いの手が差し伸べられる
『もういい加減にして!どうして春兎と日向の邪魔をするの!
雛紅は、2人が良い感じになる度に気を引こうとして奇行に走るし
私!一晩中2人がベットインするのを待っていたのに
今度は、ニグリカなの!私の青い花園を踏み荒らさないでよ!
マジで、雛紅を連れて帰って欲しいわ!』
ロッカーとカーテンの隙間からいかがわしいスケッチを描き溜め続ける
姫乃が姿を現してくれたのである。
僕と日向は、姫乃が隙間から出て来る時に落とした絵を見て
直に目の当りにして・・・
腐女子の脅威に恐れ戦き無言になる
『そうなんや、雛が空気読めんでごめんな…』
『いや、違うから…
さっきの誤解も困るけど、その誤解も勘弁して下さい』
絶望的な気分もシンクロして、僕と日向の声が同時に流れ出していた。
この後・・・
『あぁ~ん、もう!誤魔化すのに必死になっちゃって、かわいぃ~
同時に同じ事を言っちゃう程に、一心同体なのね』
『そっか、御二人さん頑張ってな』
姫乃の暴走した発言を信じ掛けている「ルッスラ・S・ニグリカ」に対して
僕等が必死に『僕等はそう言う関係ではない』
と、伝え続けたのは言うまでもない
そんな、ちょっとした静かな騒ぎに雛が目を覚ましてくれた
御蔭で一度は誤解が解けてくれた、のだが・・・
今度はベットの端に立ち、その傍に片ひざ立てて屈んでいた
ルッスラ・S・ニグリカと話していた雛が「静かに暴走」を始める
『えぇ~の?雛?
この少年って前に、駅構内の階段で雛に躓いた奴とちゃうのん』
『それじゃあこれは、運命の再会?そっかぁ~春兎は、あの時の…
でも、良いわ!もう私達は、一夜を共にしてしまったんだもの…
仕方ないわよね』
頬に手を当て体をくねらせて雛が何か、変な事を言い出し・・・
振り返り…両手を僕に伸ばして
『春兎!日向でも良いわ!私を抱き上げて!』と、言った
雛の後ろでは、ハンドガンを僕等に見える様に掲げ
「拒否したらわかっているだろうな?」
と、言わんばかりのニグリカが控えている
もう、僕と日向は・・・
誤解とか、そんな物はどうでもよくて現実問題
この状況をどうして良いのか分からない状態に陥っていた。
ただ、この場で発生した救いは・・・
僕と日向の仲を卑猥にしたい姫乃と
雛の気持ちを優先するニグリカの戦争が勃発した事かも知れない
漫画直伝の技を駆使してニグリカと戦う姫乃
魔法でも使ってるかの如く、暗器を使い攻撃を仕掛けるニグリカ
漫画の様な壮絶バトルの攻防戦は、病院の裏庭の芝生の上で行われ
僕と日向は、雛を接待しながら観戦する事になっている
「姫乃とニグリカのどっちが勝っても
僕等に救いが無い気がするのは気の所為だろうか?」
この時の僕等は・・・
互いに生気の無い薄い笑いを浮かべていたに違いない。
そうこうする内に日は登り、病室に・・・
末広さんに連れて来て貰ったらしい、空とブーマーとビターマロンズ
山中さんと臭裏紅が姿を現す
臭裏紅は、病室に入ってきて早々
僕が高校を卒業し、大学に通いながら働く事にされている会社を
定年してからから30年
キノコ狩り歴80年のベテラン「山中 残」さんの山と現金資産を
将来、相続する事を条件に
灰色の髪に飾られた赤紫色のサングラスを直しながら
灰色の服から覗く、ピンク色の網タイツが包む細い脚を見せびらかせ
『君を傷モノにしたから婿に貰ってあげる!』と、言ってくれた。
「山とか無いわぁ…固定資産税舐めんなよ」
僕の苦笑いに、山中さんも臭裏紅も気付いてはくれない
『春兎!私に今直ぐ「紅の所有物になる」って宣言なさい』
雛の居る側と逆の腕に腕を絡ませ、胸を押し当て
紅は自分の足を僕の足に絡ませてまでくれる
僕は無言で日向に助けを求めたが・・・
日向は激怒する雛を止めるのに忙しくそれどころではなかった
『あげない!春兎を貰うのは私よ!
私を落として傷モノにしたんだもの!春兎が婿になるなら
私の婿にならなきゃイケナイんだから!
なんたって私は、傷モノにされた方なんですもの!
私の方が選ばれるべきなのよ!』
小さな体の雛が、自分より大きな紅に立ち向かっている。
『傷モノにした』とか『傷モノにされた』とか
そう言う言葉は「女の子達に叫んで欲しくないな」なんて
僕の思いは「伝えれば伝わるんだろうか?」
僕は若干、現実逃避に走る
丁度、その頃…姫乃と何故だか和解し
2人の間で、何かしらの友情を芽生えさせたニグリカが戻ってきて
『飽きへんなぁ~よ~やるわ…』と、呆れ顔で溜息を吐いた。
そして、少し離れた場所に空色の影
『駄目!渡さない…春兎は…私の…だって、傘…傷モノ…なら…
私のが…先だもん…傷モノにした…だから…私…貰って貰うの!』
良く分からないが…空も会話に参戦しているらしい
更にはその付近・・・
『御風呂での、裸の御付き合い…私の方が…有利…春兎は私の物』
人様が誤解する様な言い回しで
ブーマーまでが、僕の争奪戦に参加しているらしい
ブーマーの言葉を聞いて
『それなら、体洗って貰ってる私達のがもっと上よ!』
ビターマロンズ達が『ね~』と声を揃えてハモらせている。
『えぇ~っと、春兎?体洗うって、何してんのお前…』
日向が微妙な目で僕を見る
『仕方ないだろ…洗って風呂から出さないと5人が逆上せて
脱水症状起こした上に熱中症になるんだから…』
僕の言葉に対して、日向は・・・
『何だか、お母さん街道まっしぐらだな…心中お察ししとくよ』と
僕の肩を軽くポンポンっと叩いた。
風呂の話が出てきて『今日は私と』トークでヒートアップし
収拾つかなくなった婿争奪戦は・・・
『春兎はまだ
18歳になって無いから結婚できないんじゃないのかな?』
と言う、末広さんの突っ込みの御蔭で延期される事になった
「延期じゃなくて永遠に中止してくれて良いのに」
って、僕の気持ちは…キノコ娘達には届かなくて
この戦いが僕の高校卒業以降、頻繁に起こり
大学在学中に僕が耐え切れなくなって・・・
僕の『一生独身宣言』及び
キノコ娘達の『春兎独占禁止法』ってのができるなんて
この時の僕は、気付きも考え付きもしなかったなぁ~…。
騒ぎが一段落して、支払い等の面倒な手続きを山中さんにして貰い
末広さんの車で、僕はやっと家に帰る事が出来た
あれから、数日が過ぎた・・・
僕の部屋は増築された新しい部分ではなく、古い木造の2階部分で
そこからは、僕の家の小さな庭と裏の末広さん家の庭が見える
そんな僕の部屋にある、明るい窓辺で
僕専用の「oso的キノコ擬人化図鑑」を日向が開き
物凄く「憐れみの籠った視線」を日向が、僕に向けてくる
『春兎が好かれるのは…普通に毒があったり、難があったり
色々な意味で食えないキノコばかりだな…
キノコ娘の毒に負けない様に気を付けて、諦めずに頑張れよ』
と、日向は本気で僕を慰めてきた
僕はキノコ娘のイラストの周囲に書き込まれた文字
パラメーターを一瞬だけ見て、片手で額を押さえ
髪を掻き上げながら自嘲気味に笑う
『人間の女の子には、モテた事すら無いのにな』
僕が冗談混じりに言うと、日向は本気にして
『モテたいのか?つぅ~か、女友達紹介してやろうか?』
携帯を取り出した・・・のだが
木造の家の天井から木の窓枠に移動する白い影に
日向の携帯は奪取され、携帯と一緒に影は姿を消してしまった。
『今の…何?』
携帯が消えた事と、窓枠に急に緑色の藻が生えたのを日向は驚いている
僕は日向が手にしたままの「キノコ擬人化図鑑」のページを捲り
シラウオタケ |(白魚茸)のページを開く
『白魚 緑 って言うらしい…
数日前に道端に落ちてるの見付けて保護したら
何だか、この家を気に入ったみたいで住みつかれてね』
と、言いながら僕は立ち上り・・・
天井からぶら下がる緑の魚の様な後ろ髪を掴んだ
『きゃっ…いやん!』と、小さく緑が小さく悲鳴を上げる。
『携帯を日向に返しなさい』と言っても、返さない様子なので
僕は緑を指で優しくつっつき、すぅ~っと指の腹で体の線をなぞり
降伏させ、日向に携帯を返却させた
『今のエロ過ぎだろ…何時もこんな事してんのか?』
その様子を見ていた日向が赤面と言うか、耳まで真っ赤になっている
「何処がエロかったんだろうか?」と思いながら
『必要に応じてな…』と、だけ僕は答えた
そして僕は、日向の居る窓辺に座り・・・
水玉模様に見える程、所々枯れた芝生を発見して
「また、埃原茶狐の仕業だな…」と、思いながら
「芝生の種」を検索しPC画面の購入ボタンをクリックして注文する。
こんな風に、僕の日常は
困った性質のキノコ娘達のやらかしちゃった事の後処理をしたり
扉の隙間から覗く空が、御盆にケーキと御茶を準備して持って来て
『春兎…ケーキ…美味しいよ…あのね…えぇ~っとね…』
何かしら言い淀んでいる…そう言うのを見付けては
『入っておいでよ、一緒にオヤツが食べたいんでしょ?』
受け入れて相手をするって具合に
かまって欲しい寂しがりやなキノコ娘達の世話に費やされて行くのであった。
そして、僕は・・・今更ながらに「子供の頃の事」を思い出す
あの時まだ、子供だった僕は
「動物園の珍しい動物の飼育係になりたくて」
七夕の短冊に「めずらしいのの、しいくがかりになりたい」と、書いたのだ
『曲がりなりにも、願いは叶ったのか…』
僕は、綺麗な星の瞬く夜空を眺めながら
次々と部屋に乱入してくるキノコ娘達を眺めて今日も溜息を吐いた。
因みに将来、大人になった僕は・・・
墓地が非課税な事を知って、散骨型の霊園を山に作り
そこに、行き場の無くなったキノコ達を自由に生息させる…
何て事をしながら金を荒稼ぎして
キノコ娘達の起こすトラブルに巻き込まれつつ幸せに暮らしましたとさ・・・。
設定の変更
似たキャラクターがいなかったのでストーリー変更とかをしてたら
あらすじと御話が違った方向に行ってしまいました・・・。
それでも、読者様が楽しんでくれてればいいなぁ~なんて
我儘な事を作者は考えています!




