表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

12「トラブルに塗れた出会い」

12「トラブルにまみれた出会い」


キャッキャとさわぐビターマロンズとブーマーの口にする

ちょっとイケナイ、サブタイトルの御蔭で

姫乃ヒメノちゃんが・・・

キノコの女王様にまで、腐敗ふはいを広めているらしい事が分かった


分かったのだが、そんな腐敗で誰も死んだりしないから

僕は放置する事にした。


『自分の好きな物を伝道できるスキルかあるって、すごいね

ウスタりんは、素敵すてきな同士を持っててうらやましい…

その人脈じんみゃくで、臭裏紅クサウラ クレナイさんと連絡取ってもらっていいかな?

どうしても、会って話をしなきゃいけないんだよ

どうだろう?連絡先を聞いて僕から連絡するより

したしいウスタりんからの連絡の方が、良い気がするんだけども』

僕はウスタりんの半径45cm以内に入らない程度ていどの近くに座る


『ふふふ…

その「凄い」も「羨ましい」も、本音は180度逆の意味ですよね?

しかも、連絡する事をこばめば…

その代わり私に、べにりんの連絡先を要求するつもりでしょ?

人との距離まで、緻密ちみつに計算して…

何て、姑息こそく戦略含せんりゃくぶくみの腹黒い行動と御言葉でしょう

2段階でことわらなきゃ断れない御願いの仕方をするなんて非道な

春兎ハルトりん…いえ、春兎たん…今日から貴方も私の心の友ですよ』


ウスタりんに、何故だかとても気に入られたらしいが…何だか・・・

自分の言葉を丸裸にされて恥ずかしい気がするのは気の所為せいか?


僕は若干じゃっかんうつろに微笑ほほえ

『ありがとう…心の友だって言って貰えるなんて光栄こうえいだよ』

また、「何か否定ひていする事を言われるんじゃないか?」と思いながらも

社交事例しゃこうじれいを口にしていた。


ウスタりんが、手の中の携帯画面にそっと

罅割ひびわれた顔で、僕の居る方向に向けて首をかしげながら微笑む

『紅たん、春兎たんが御話したいそうですよ』

『へぇ~、そうなんだ…私にちょっかい出したら、泣かせちゃうよ?』

僕の真横から、聞き覚えの無い声が聞こえてきた


僕は驚き、声のした方向に振り向くと・・・

側頭部そくとうぶからこめかみの辺りまでに

独特の光沢を放つ灰色のきぬの生地にくるまれた、程良くやわらかく肉質的な

弾力のある物が、一瞬だけぽよ~んと触れる。


その正体は置いておいて・・・

想定外そうていがいな程に近い場所に出現した臭裏紅は、かがんでいた背筋を伸ばし

『初対面から、良い度胸だ』と、肩に掛けたリュックを持ち直して

そのリュックで、思いっきり僕の後頭部を打ち上げる様に殴打おうだした


不意打ちの容赦ようしゃの無い攻撃に僕の視界しかいが暗転する

僕は座っていた倒れた木から前のめりに落ちたのであろう

正面に枯れた松葉のかれた地面を感じ、混濁こんだくする意識の中


『紅たんったら、相変わらずテレ屋さんね』

と・・・ウスタりんの声

『出たな!邪悪じゃあくの化身!春兎のかたきめ!

仇打あだうちだ!ビターマロンズが成敗せいばいしてくれるぅ~!』

言わずと知れた・・・5人のハモった声


『春兎!大丈夫か?!』と多分、僕を抱き上げたのは日向ヒナタ

『きゃ~っ!素敵!何て素晴らしいシチュエーションなのぉ~』

と、煩悩ぼんのうの限りに叫んだのは姫乃ヒメノなんだろうな…

なぁ~んて事を考えていた。


次に意識を取り戻した時・・・

漂白剤臭ひょうはくざいくさい、白く少しかたい布団の上で僕は目を覚ました

周囲は薄暗く…自分が何故なぜ、こんな場所に居るかすら思い出せない


取敢とりあえず起き上がろうと、身動みじろぎすると・・・

鉄分の臭い、傷み掛けのたんぱく質の臭い、薬品に匂いのただよ

頭痛と、後頭部が引きるみたいに物理的にひどく痛んだ


僕は不思議に思い、片手を自分の後頭部にばすと

足音がし、寝ている場所が少ししずみ…きしむ音を立てる

そして、誰かに優しく手をつかまれた。


『春兎、触っちゃ駄目よ』

その声は、耳馴染みのある声で・・・

彼女は、僕が横向きに寝返りを打つに協力までしてくれる


『ヴィロサ…ありがとう』

僕が御礼を言うと、ヴィロサはうれしそうに微笑み

『良かった…記憶喪失きおくそうしつとかになって

私達の事を忘れてしまったらどうしようって、心配してたのよ』

と、笑う


普段の自信に満ちた、威張いばった様な笑顔ではなく

今まで見た事の無い程に、優しく愛らしいヴィロサの微笑に

ちょっと、僕はドキッとした。


手を伸ばせば触れられる距離

僕は僕の顔をのぞき込む、ヴィロサのほほに手を伸ばして触れ

何時いつもそんな風に優しく笑ってくれたら良いのに』と

思った事をそのまま口に出す


見る間にヴィロサの顔が真っ赤に染まって行く

「意地っ張りなヴィロサの中に、意外と純情な所があったモノだな」

僕がひそかに感心していると…

何処どこかで引き戸の開く音が聞こえてきて、部屋の電気が点灯した。


ヴィロサは飛び上る様に驚き、思いっきりあわてた様子で

ベットをかこむ薄い色のカーテンを開け、表情をかくす様にうつむいたまま

『春兎が起きた、大丈夫そうだから私帰るわ!』と、言って

部屋から出て行ってしまう


そんなヴィロサに

『送って行くから、待合で待っていなさい』と、言ったのは

多分、末広スエヒロさんの声だろう


僕は明るくなって良く見える様になった視界の中を見回し

天井からり下げられたカーテンレールとカーテンだけでも

此処ここが病院だと分かったのだが…

カード式のTVと同じくカード式の冷蔵庫に、簡素かんそなロッカー

自分が寝かされているベットの様子を見て

ここが入院用の病室である事を確信する。


「何だかとっても、大事になっているみたいだ…」

僕は、ヴィロサが出て行ったカーテンの隙間すきまから

他の誰かが入って来るのを待ち


入ってきた日向と末広さん、山中さんと…

山中さんに手を引かれ、連れて来られた臭裏紅にちょっと驚いた。


山中さんは『ほら、ベニちゃんあやまんなさい』と言い

不貞腐ふてくされた臭裏紅の頭を下げさせ

僕は、彼女にリュックで殴られ後頭部に

数針縫わなければいけない程の怪我をした事を知らされる


「彼女のリュックには、いったい何が入っていたのだろうか?」

僕は、彼女の持つ血糊の付いたリュックの中身が気になりながらも

先に謝罪を受けてしまっていて、深く追求もできず

苦笑いして受け入れるしかない


『それと、臭裏紅を見付けてくれてありがとう…

ベニちゃんが悪戯いたずらして食中毒になった学生さん達は皆

ベニちゃんが毒を弱めて、一大事にはならずに退院したんだよ』

と、山中さんは教えてくれた。


『チビ達…マロンズ達に掛けられた疑いは晴れたのかな?』

僕が気になっていた事を言うと…


『春兎…お前、大事な事忘れてるよ

キノコ娘の事は、普通のやつらの記憶には残らないんだってば

うたがいが晴れる以前に、出会った事を忘れるから大丈夫だ』と

日向が複雑な気持ちの現れた表情で笑い


『そっか、存在自体を忘れてしまうんだったな』

まだ、感覚的にれないキノコ娘の存在のあり方に

僕もちょっと複雑な気持ちになった。


遠くから子供達の声が聞こえてきて、近付いて来る

引き戸がガンッと大きな音を立て

見知らぬ子供達と、ビターマロンズ達が病室になだれ込んできた


『春兎~!御友達連れてきたよ~!一緒に遊ぼ~!』

末広さんと山中さん、臭裏紅を押し退けて

パジャマ姿の子供達とマロンズ達が僕の寝ているベットを取り囲む


『お兄ちゃん怪我なの?痛いねぇ~大丈夫?』

御子様は加減も常識も無く、僕の頭をでてくれた。


『怪我してて遊べないけど大丈夫だよ

でも…ごめんね、怪我してるから一緒には遊べないんだ』

僕は顔を引き攣らせながらも笑顔を作った


『じゃあ!ご本を読んでよ』

違う子供が、何故か僕に絵本を差し出してくる


「子供って、そんなに得意じゃないんだけどなぁ~」と、思いながら

僕は、抵抗する事も無く本を受け取り

『仕方ないなぁ~』と、起き上がろうとすると・・・


『やっさしぃ~、春兎は人としての器がでかいなぁ~…』

日向が笑いながら、起き上がろうとする僕に手を貸してくれた。


末広さん、山中さん、臭裏紅の姿が病室から消え

僕等は何故か、しばらくの間

見回りの看護婦かんごふさん達から注意を受ける事も無く

子供達が病室で大騒ぎする中、絵本を読み子供等の相手をしていた


気付けば・・・

窓の外は真っ暗になっていて、夕食が運ばれてきた


僕と日向は『夕食の時間になったみたいだから』と

子供等に「自分達の病室に帰るように」と言って、部屋を出すと

子供等を探していたらしい看護婦さん達から

僕と日向は、キツク注意を受ける事になった。


僕等が怒られている所を見て、子供達が反論はんろんする

看護婦さんが怒っている理由を知って、ビターマロンズも

看護婦さん達に対して怒り出した


僕等は溜息ためいき


マロンズと子供達ををなだ

むかえに来た看護婦さんに・・・子供達を

迎えに戻ってきた末広さんに・・・マロンズを預けると一息付いた


それから僕は、トイレに行き…ついでに、家に電話して…

病室に出戻る、戻ると・・・

日向が、僕用に出された食事のおかずを勝手に食べていた。


『何、勝手に食ってんだよ』

『えぇ~どうせ春兎は、茸は食べないだろ?』と、日向は食べ続ける


『帰るんじゃなかったのか?』とたずねると、日向は・・・

『末広おじさんの車が店員オーバーになったから

面会時間ギリギリまで此処に居る事にしたんだ』と、言う


日向は僕の分まで・・・

売店で、御菓子に菓子パン、総菜パンにジュースを買って来ていた

こうなっては、追い帰す事はできない。


末広さんから貰った、TVと冷蔵庫を使う為のカードをセットし

僕等は、TVを見ながら雑談しつつ食事をした

ある程度食べて、病院で準備された食事のトレーを返却し

可動式のベット用の机を片付けると下から絵本が出てきた


僕は、子供等の忘れものの絵本を手に取り

『仲良くなっても、直ぐに忘れられてしまうなんて

ちょっと、マロンズ達が可哀相かわいそうだよな』とつぶやくと、日向も・・・

『そうだな「また、明日遊ぼうね」って約束も

「また、明日ね」って別れた途端とたん、記憶と一緒に消えるんだよな』

と、小さく呟いた。


何処からともなく鼻をすする音が聞こえてきた

貴方達あなたたち!思ったより良い人間ね』

甲高かんだかい小さな声がやはり何処からともなく聞こえて来る


僕はベットから降りて探し、日向も声の出所を探して

まどのカーテンを開けると・・・

カーテンの中から木製の大きなキーホルダーと

そのキーホルダーの上に座る人形サイズの和装わそうの女の子

多分じゃなくても小さなキノコ娘の姿があった


『何でこんな所に…』と、僕と日向の声がハモル

『マロンズ達と遊んでたら置いていかれてしまったのよ!』

小さなキノコ娘は半泣きでさけんだ。


『取敢えず、こんな所で話すのは何だから』と

僕は、彼女を抱き上げベットに戻り

僕は彼女を胡坐あぐらをかいた自分のひざの上に座らせて

髪を撫でながら手元にあったティッシュで彼女の涙をぬぐ


日向が『天然の幼児キラーだな』と、呟いた

『幼児って…サイズが小さいからって、幼児認定は間違ってるだろ

女性に対して失礼だぞ…

それに、困っている人に親切にするのは人としてのたしなみだ』

僕の反論に、日向は・・・

『そうだな、春兎はそういう男だよな』と…

でも、密かに僕は・・・

「低コストで売れる恩は、売っておく主義なだけであったりする」


僕はまくらに小さなキノコ娘を座り直させ

日向に貰ったミルクティーのペットボトルを冷蔵庫から出し

ペットボトルのキャップに甘い紅茶を注いで小さなキノコ娘に渡して


彼女の話を聞く・・・

彼女は「龍谷 雛紅 (リュウコクヒナコ」と、言う名前で

地面に降りるのが嫌いなのだと言った


『日向に任せて良いか?』僕が言葉少なにうったえ掛けると

『あぁ~送って行くよ』と、日向が答えてくれる

僕等が雛紅の事を雛紅抜きで話していると

小さな腹の音が聞こえてきた。


『雛紅、何なら食える?』と、日向が

ベットの上にレジ袋から食べ物を出して広げ

『雛紅ちゃんが食べれる物が此処に無かったら、言って良いよ…

まだ、売店開いてるだろうから、一緒に買いに行こう』と、僕


雛紅は嬉しそうにポテトチップスの袋に

『では、コレ!コレが食べたいです!それと、雛って呼んで下さい』

雛は、頬を染めて微笑んでくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ