10「キノコな交友関係を辿る」
10「キノコな交友関係を辿る」
山頂のキャンプ場に辿り着き・・・
先に到着して泣いていた、NO、4が泣きやんで
笑顔のビターマロンズが5人勢揃いで、僕の周囲を駆け回っている
山の上の汗ばむ気候に、汗だくになってダウンした空は・・・
駐車場で、僕の母に面倒を見て貰っているそうだ
因みに、来られる事すら脅威だったブーマーも・・・
キャンプ場の端っこの方の水道を占拠して
犬の糞を踏んで、転んで汚した服の裾を洗っている
ブーマーは・・・
スカートの裾が乾くまで当分、大人しくしているだろうから
暫くは、ブーマーの行動を心配して監視する必要も無いであろう
僕は安堵して、5人揃ったビターマロンズに集られながら
米を洗い、米を炊く為に飯盒を火に掛けた。
『春兎の予言通り、本当に白菜と白葱とホタテのひもが入った
味噌汁と白飯だけ…の昼食になるとはな』
日向が苦笑いをする
「それにしてもこれは、僕がこの班に存在する所為なのだろうか?」
5を迷子にしない為に頑張った結果、僕と日向は・・・
食べられるキノコとの縁が無く
毒キノコも「ニガクリタケ」しか、目にしない状態で
他の班のメンバーも、何故か・・・
イッポンシメジ・カキシメジ・ツキヨタケ
コレラタケ・ドクツルタケ等
食べられない毒キノコしか見付ける事が出来なかったのだ。
『キノコが食べたいならコレ入れて食べる?苦くておいしいよ?』
ニガクリタケを手にして、ビターマロンズの1人が
日向に対して、無邪気に微笑む
本来なら、齧らないと・・・
クリタケかニガクリタケなのかを判別できないのだが
キノコ娘達からの恩恵で、僕と日向には見ただけで判断できるので
日向は『それは遠慮するよ』と、首を横に振った。
『えぇ~なんでぇ~?美味しいのに!』
マロンズ達は、勧める標的を別に移し
班の他のメンバーや、他の班にも提案していくので
味噌汁を作る日向がマロンズに対する対応に困り、僕を見る
僕は、飯盒を他の自分の班のメンバーに任せ
食中毒事故を防ぐ為、ビターマロンズを火の傍から離す事にした。
『勧めてくれてありがとう…美味しくても、ごめんな』
僕はマロンズ達から、ニガクリタケを受け取り
『人間には、食べれないんだよ…死んじゃうからね』
一人づつマロンズの頭を撫でて、緩い笑いを浮かべる
そんな中で、食中毒事件が発生してしまった。
僕と日向、キノコ娘達に寄生されている老人達数人を残し
食事中の者や、食事を終えた者が
嘔吐や下痢の典型的な胃腸系中毒症状で、次々と倒れていく
僕等は、食事前だった保健室の先生と症状の軽い者達に皆を任せ
残った料理を全て回収し、調理場を見渡し原因を探す。
但し、保健室の先生・・・
一般的に言えば「保健医」とも称される養護教諭なのだが
勿論、医者の免許を持っている「保険医」とは別の物である
保険師の資格を持ち、養護教諭二種免を取った人もいるが
それは、ほんの一部で…
保険師もまた、看護師の資格を持った人であって医者ではない
更に、余談だが・・・
全ての学校に「学校医・校医」と言う学校職員が置かれるが…
殆どが学校近くの開業医で非常勤職員、学校には来ていないし
学校のイベント事に参加する事も無いのでその事を忘れてはいけない
「現状、医者は…この場所に存在しない」
僕は、その事を暫くしてから思い出して
「流石に保険の先生、連絡してるよな?」と
少し迷いながらも、家の近所に住む校医に電話を掛ける。
結果としては・・・
連絡がなされてはいなかったが、直ぐに来てくれるらしい
僕は、「患者の人数が多い事」と…
終さん曰く「クサウラベニタケを始めとする
キノコ食中毒の御三家による食中毒」である事を告げた
コレで、救急車が足りなくて運べない者達に少しでも
治療の手が差し伸べられるであろう、僕は溜息を吐いて
暗い表情の終さんの表情を盗み見
終さんが口にしたキノコの名前・・・
常備していたキノコ擬人化図鑑の「クサウラベニタケ」のページを開く
灰色の髪に飾られた赤紫色のサングラス
灰色の服装に映える、襟元のピンク色のポイントカラーと
灰色の服から覗く、細い脚を包むピンク色の網タイツ
イッポンシメジ科イッポンシメジ属する彼女は…
彼女は山登りの途中で見た、キノコ娘だった。
終さんは、キノコ擬人化図鑑を見ている僕を見付け
『臭裏 紅(クサウラ クレナイ)は
ワシに寄生するキノコ娘なんじゃがの…もう、ワシは追掛けてやれん
ワシの図鑑を持って追掛けてやってくれんかな?』と
僕に向かって切なげに微笑む
僕が無言で図鑑を受け取ると、終さんは・・・
『逃げた紅を探すには、柿占地(カキシメジ)のシャロン・ウスタと
月夜茸(ツキヨタケ)の静峰 月夜(シズミネ ツキヨ)の協力が
必要になるだろう
先に2人を見付けて、協力して貰うと良い』と、言う
僕は、目次順に月夜茸とカキシメジを確認してヴィロサに電話を掛けた。
僕の真後ろで、携帯の着信音が鳴る
『手伝って欲しいんでしょ?』
携帯から…真後ろから…直接、ヴィロサの声が聞こえてきた
僕は取敢えず、そのまま用件を伝える
『ヴィロサが直接買い付けてるゴシック系アクセサリーの店の
キノコ娘なショップ店員の携帯番号を教えてくれないか?』
ヴィロサは面白がって、僕の背中に自分の背中を合わせ会話を続ける
『高いわよ?』
『困ったな、持ち合わせが余り無いんだけど…
社割りで何んとかならない?
序に、静峰月夜に連絡取って話しを通してくれるとありがたいんだけど』
『仕方のない子ね、分かったわ…
明日の御茶の時間、楽しみにしているから』
と、互いに電話を切る
『何、その振り…即興コント?御前等、どう言う関係だよ』
日向が唖然としている
僕は笑顔で『微妙な関係』とだけ、答えておいた。
ヴィロサが電話を掛け
暫くすると、林の中からゴスロリな服装の女性が姿を現す
静峰月夜は、この近所の催し物広場でやっている
イベントのフリーマーケットに出品側として参加していたらしい
静峰さんは、自分のボディーラインを自慢するかの様に胸を張り…
左手を腰に当て、右の手の人差指を僕に突き付ける
『君が春兎?友達でもないのに私を呼び出したんだから
それなりの報酬を用意して頂戴ね!
それと、私のアクセの御店の店番にヴォルヴァタを借りたから
後で君が、私の店の店番の御礼をしてあげてよね』
僕はこのごたごたの終息後、この事で苦悩する事になりそうだった。
『ヴィロサの友達は皆、美人さんだね』
僕は取敢えず・・・
静峰さんに突き付けられた静峰さんの手を取り、営業スマイルを向け
『この騒動が終わったら、静峰さんの為に僕が何をすればいいのか…
静峰さんへの報酬は、何が良いのか…僕に教えて下さいね』
静峰さんの御機嫌を取る事にするが・・・
『ヴィロサったら、ちょっと意地悪だわ
私…私達を採っては、ゴミの様に捨てるから人間って好きになれないのよ』
静峰さんは、人間がお気に召さないらしい…
取られた手を振り払ったりはしなかったけど、嫌そうな顔をする
僕は少し考え・・・
『月夜茸って凄く美味しいんだよね?』と日向に訊く
日向が『らしいね』と答えるのを確認して
『凄く美味しいのに、食べちゃ駄目なんて
キノコ好きなら、ショックで悔しくて投げ捨てたくもなるだろうな…
ゴメンね?大人になりきれない人間の為に不快な思いさせて』と
本当に残念そうに、悲しそうに僕は溜息を吐いて見せる
静峰さんは僕の言葉を聞いて、ちょっと照れた様子で
『君!私の事、月夜って呼んで!呼び捨てで良いわ』と、言って
僕の手の中に収まった自分の手をゆっくり引き抜いた。
「意外と好感触だなぁ~」
僕は使えそうな手ゴマを発見した事を確信して
「何れ、確実に操れるように好みとかリサーチしておこう」と
心の中でこっそり、ほくそ笑む
『ふふふ…春兎ったら善からぬ事を考えてない?』
ヴィロサは僕の内心に気付いて、何か言いたげに笑った。
僕はそこの所を無視して
『次は、柿占地のシャロン・ウスタさんだね』と
キノコ擬人化図鑑の柿占地のページを確認する…確認して・・・
『えぇっとぉ~…終さん?シャロン・ウスタさんって
友好的に話しができる方なんでしょうか?』
僕が、キノコ食中毒患者を悲しげに見詰める老人に声を掛け
その老人、終さんは・・・
大きな溜息を吐いて笑い『難しいかな?』と、言った。
その場の空気が凍り、絶望的な雰囲気が生まれる
日向が怪訝そうに会話に入ってきた
『人間の食事に、毒キノコを混入させたキノコ娘探すのに
そんな他のキノコ娘を探して、意味あるのか?
そもそも…月夜だけで紅を発見する事はできないのか?』
『はぁ?そもそも私…
君に呼び捨てして言いなんて言ってないんだけど?』と
月夜は日向の対して、機嫌を少し悪くした。
『そう言えば、ヴィロサは臭裏紅さんの携帯を知らないのか?』
僕が思い出したかの様に訊くと
『私は知らないわ!
彼女の携帯を知ってるのはシャロンさんくらいじゃないかしら?
月夜も臭裏さんの、知らないでしょ?』
『知らないわよ…あの娘、直ぐ番号が変わるんだもの!
でも、ホント…知ってるとしたら、ネットでやり取りしてる
ウスタりんくらいだけなんじゃないかしら?』
キノコ娘達の世界も複雑で、それなりにIT化はしているらしい
『その「ウスタりん」とは、どうやって連絡取るんだ?』
日向がまた、会話に入ってきた
僕は「ちょっと日向、黙ってて欲しいな」と、思いながら
日向にビターマロンズを見て貰うように頼み
『ヴィロサと月夜は、シャロン・ウスタさんと連絡取れる?』と、尋ねる
ヴィロサは『知らないわ』と言い
月夜は『電話は出ないから、メールしてみるね』と、言った。
月夜は、メールを送ると…
『「ウスタりん」はね、松林に居る時しか連絡取れないのよ
それと、広葉樹の近くに居る時には近付いちゃ駄目なの
話し掛けるなら、松林に居る時にね』と、意味深な事を言う
僕は再び、キノコ擬人化図鑑の柿占地に目を落とす
『「マツ林に生える物は無毒」って噂があるから
シャロン・ウスタさんが松林に居る時は、キノコ娘的に無毒なのか?』
僕の言葉にヴィロサがクスクス笑う
『ちょっと違うかも…松林に生える物が無毒かどうかは別にして
松林に居る時のシャロンは比較的、意地が悪くないわね
瘴気は何時も通り放ってるけど』
『瘴気を放つってどういう状態なんだよ』
僕は苦笑いを浮かべ、月夜の携帯に返信が来るのを待った。
待ち時間は意外と少なく、思いの外…返信が早く有り
キノコの食中毒で苦しむ遠足に出席した皆を
末広さんや終るさん達のメンバーに託し
問題を起こしそうなブーマーと、悪戯をしそうなビターマロンズを連れ
僕と日向は、ヴィロサと月夜の案内で催し物会場へ行き
途中、月夜のアクセサリーの出店で店番をしているヴォルヴァタに
『この埋め合わせは何時かするから
ヴォルヴァタが僕に何をして欲しいか考えておいてね』と、僕は声を掛け
ヤマドリ・B・ポルチーニ嬢の出店の手伝いをする
おはつさんと初さんへ、日向と一緒に軽く挨拶をしてから
その近くに存在していた松林に入る。




