二種類の薬
「やったぞ、ついに完成した」
「博士、おめでとうございます」
よろこぶ博士に、助手があいづちを打った。
かれらの前には、全部で四つの錠剤がならんでいる。左側の二つは青色、右側の二つは桃色だ。
「しかし、これらの薬はどのような効果を持つものなのでしょうか」
助手はたずねた。
「なに、きみはそんなことも分からずに実験をしておったのか。あきれたやつだな」
「はあ」
「青色の薬を一錠のむと、米つぶほどまで体がちぢむ。逆に、桃色の薬を一錠のむと、元の大きさに戻れるのだ」
「なるほど。画期的な薬ですね」
「そうとも。さて、試しにわたしときみで使ってみようではないか」
「ええ、光栄です」
二人は青色の薬をつまむと、ひとおもいにのみこんだ。薬の効果は本物で、かれらはぐんぐんと縮んでいった。小さな二人は顔を見あわせる。
「やりましたね」
「ああ」
それから博士は助手に指示をして、いくつかのテストを行った。体は正常に動かせるのか、といった内容のものだ。
「大丈夫なようですね。やはり博士は天才です」
「ははは、おだてても何もでんよ。さあ、そろそろ元に戻ろうか。桃色の薬は……っと」
二人の目の前には、巨大な桃色のかたまりが二つ、そびえていた。かれらの今の身長の二倍はあるだろうが、まちがいなく大きくなるための錠剤である。
「博士……まさか」
「ああ。わたしは大きなミスをおかしてしまったようだな」
二人は腹がはちきれそうになるまで錠剤を食べつづけたが、それはいっこうに減る気配はなかった。
よかったら感想欄かtwitter @cubitfmに感想をお願いします。