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戦場のローレライ  作者: ゆうき
六章 オレ達の休日
37/41

35話 賑やかさ

お待たせしました! 今回は少し長めです

「ふぅ〜さっぱりしたな」


「たまには来るのもいいものだね」


 風呂から上がったオレ達は、扇風機に当たりながらまったりしていた。


「んぐっんぐっ……ぷはーっ! やっぱ風呂上がりのフルーツ牛乳は最高だぜ!!」


「おいそこのタオル一枚男。風呂上がりはコーヒー牛乳だろうが!」


「僕は無難にお茶がいいけどね……!」


 お互いの主張を無駄にぶつけ合う。気のせいかもしれないが、シュノが思ったより熱くなってることに驚きだ。


 ……てか、誰もノーマルの牛乳は好みじゃないんだな……。


「なあ、なんかこうのんびりしてるとよ、実家を思い出さないか?」


「確かにそうだな!」


「なに言ってんだいレグ? どっかのバカがいつも騒がしくするから、のんびりなんてしてられなかったじゃないか」


「んだとシュノ!」


「あっ反応したってことは、君も自分がバカだって自覚してたんだ?」


 まさに語るに落ちる。悪魔のような、そんな嫌らしい嘲笑を浮かべるシュノに、オレはぼんやりとそんなことを思っていた。


「うるひゃいうるひゃい! 俺様はバカじゃねーやい! てか俺様のどこがバカか言ってみろよバーカバーカ!」


『……全部?』


「………」


 無言でバイスはその場に倒れた。会心の一撃とはこのことか。


 あと、バイスの心から鈍い音が聞こえたのも気のせいじゃないだろうな。


「まあ元気だしたまえバイスよ」


「ぐすん……なんだレグ……俺をバカにしにきたのか……?」


「バカだろうとなんだろうと、バイスはバイスじゃないか。もっと前向きに生きていこうぜ!」


 ぼんぽん、と優しくバイスの背中を叩いてやると、涙目のバイスに見つめられた。


「そうだな! 俺様は俺様! 天下無糖のバイス様だぜ!!」


「おう! あと天下無双な!」


 何故か熱く握手をかわすオレ達。ああ、これが友情、青春ってやつなのか……!


「……なんなんだいこの茶番……」










「さて、涼んだしオレは戻るかな」


「僕ももう少ししたら戻るよ」


「ん? そういや二人はこの後どうすんだ?」


「僕は君の部屋に行くけど?」


「俺様もだな。一人でいてもやることねーや」


 それぞれ言葉は違うけど、どうやらオレの部屋に来る気マンマンのようだ。


 まあオレとしては全然構わないんだけどな。てか女子陣も来るって言ってたし。


「了解。とりあえず先戻ってるぜー」


「おーう」


 ひらひらと二人に手を振りながら、オレは大浴場を後にした。


「……あーそういや鍵かけてねーや」


 部屋に戻る廊下を歩いてるなか、誰に言うでもなくボソッと呟いた。


 まあ盗るものなんか置いてねーし、ティル達も戻ってくるし問題ねーか。


 って、いやいや……盗られて困るものあったじゃねーか。



「これは盗られたくねーな……」


 歩みを止めて、自分の右手首を見つめる。


 そこには、ティルがプレゼントしてくれたミサンガが、ゆらゆらと控えめに揺れていた。


 それを見つめてると、何故か暖かい気持ちになって笑顔になれている自分がいた。


 ……なんでだろうな? いつもプレゼントをあげる側だから、こういうことに慣れてないからだろうか?


「……よーわからんな」


 ムム〜っと腕を組ながら歩いていると、気づいたら部屋の前にまで到着していた。


「おっとっと、危うく通りすぎるとこだった」


 ははっと苦笑しながら、オレは部屋のドアノブに手をかけた


「やった一品完成!」


「案外手間取ったわね……」


 中から声が聞こえたからか、オレは反射的に手を止めていた。


 ん? てかこの声、ティルとサナか? 先に戻ってなにやってんだ?


「これで……も……こぶね!」


「なんでそうなるの!?」


「えー? だって……でしょ?」


「うー……」


 うーん、なんか良く聞こえねーな。まあ盗み聞きなんて良い趣味とは言えねーし、なによりオレの男らしさに反するな。


 おいそこ、自分で男らしさを言うなとか言うな。場の流れってのがあるだろ!


「まあとりあえず入るか……」


 再びドアノブに手を伸ばすと、ガチャっと音をたててドアは開いた。


「よっ。なにやってんだ……って」


「おっ戻ってきたなレグルス君よー!」


「おっ……おかえり」


 なんかどっかで見たような光景だな。まあいいや。どうやらさっき買ってきた食材で晩ごはんを作っていたようだ。


「おいおい、勝手に台所使うなよー」


「えー? 別にいいじゃーん!」


「いやいいけどよ。調味料の場所とか分かったのか?」


「まあ……なんとか」


 何故かやけに疲れているように、小さく溜め息をするティル。調理の最中になにかあったのか?


「それより、飯はどんな感じなんだ?」


「そうなのよレグルス! サナってば凄く料理上手なのよ! フィリアに負けないぐらい!」



 さっきとはうって変わって、身を乗り出しながら熱弁する。余程驚いたのか、感動したのかは定かではない。


 ……コロコロ表情が変わって可愛い。


 てかサナって料理出来るんだな。しかもフィリィクラスって……そりゃかなりのもんだぜ? 見掛けによらないとはこのことだな。


「まだ完成してないからテキトーにしててー」


「へーい」


 サナに促されるかのように、オレは隣の部屋の寝室に入り、ベッドにダイブした。


「あー……眠っ」


 リラックスしたせいか急に睡魔に襲われてきていた。やっぱまだ疲れが溜まってるのか……?


「………」


 気づいたら、オレはそのまま夢の世界へといざなわれていた――










「……やっぱり寝てるわね」


「………」


「ほら――さいよレ――」


 ゆさゆさ――


「………」


「起き――よ。ご飯――たわよ」


 ゆさゆさ――


「……?」


「もう、いい加減――」


「とりゃあ!」


「キャア!」


 ぼふっ!


「ごはぁ!!?」


 なななな、何だ? なんだ? ナンダ? 何かの襲撃か? あまりに突然のことに、オレは若干パニック状態になっていた。


 っと。まあここでパニックなったままなんてレグルスさんらしくねーな。とりあえず状況を確認だ。


 えーっと、確かオレはサナとティルがご飯を作ってるから、それまで休んでたんだよな? んで、多分寝ちまった、と。


 そこまではいいんだそこまでは。問題は、この腹部の痛みと、それに覆い被さるように、さくらんぼみたいな色に顔を染めた、ティルの姿があった。


 …………はい?


「な、なんでティルが???」


「さ、さささサナ!!? なにいきなり押してるのよ!!」


「えー? アタシは軽く肩を叩いただけだよー?」


 ああ、なるほど。サナのあの嫌らしいニヤニヤ顔を見て、だいだいの状況は把握した。


「もーティルったら、アタシを使ってレグルスにアタックするなんて大胆だなー♪」


「そそそそんなことしてない!!」


「キャー怖いー! 逃げろー♪」


 文字通りキャーキャー言いながら、サナはオレの寝室から出ていった。


 出る間際、意味深にオレにウィンクしていったが……なんのこっちゃ。


「れ、レグルス! 私そんなつもりじゃないんだからね! 勘違いしないでよ!!」


 さっきよりも顔を赤くしながら、ティルは踵を返した。


「なあティル」


「な、なに?」


 オレに背を向けたまま、顔だけをこっちに向ける。まだその顔は赤かった。


「ケガしてないか? 押されたんだろ?


「っ!?」


 ただケガがないか心配して聞いただけなのに、ティルの顔は、面白いくらいに真っ赤になっていた。頭から煙も出てる。


「なっなななんでよ? 別にケガなんか無いわ! それよりレグルスこそ大丈夫なの?」


「ああ。てかティル軽すぎだろ……ちゃんと飯食えよ?」


「よっ余計なお世話よ! はっ速く来なさいよね!」


 ビシッ! とオレに指差すと、スタスタと早足で部屋を後にした。


 なんかチラッとティルが笑っていたようなないような……気のせいか?


「……とりあえず飯だな。着替え着替えっと」


 寝てたせいで少しシワになってしまった服を脱ぐと、手際良く部屋着に着替えた。


 まあいつもなら面倒だからしないけどな……こういう細かい気配りがモテるコツだぜ?


「悪い、待たせたな」


「おせーぞレグ! こっちは腹ペコだぜ!」


「悪かったって」


 ギャーギャー喚くバカを軽く流しながら、テーブルについた。


 ちなみにオレの部屋のテーブルの足は短いから、椅子とかはとくに無い。だから適当に席につけるのが利点だな。


「んじゃ並べるよ〜! 今回はみんな疲れてるだろうからさっぱりしたものにしたよ」


「疲れ?」


「私達、そんなに疲れてない、よ?」


「いやいや〜なんだかんだでゲームも激しかったし、日頃の疲れとかも溜まってるっしょ〜」


 まあサナの言うことにも一理ある。


「それに、男子陣なんかは野菜とかは不足してそうだし〜♪」


「そんなこと……うん……ないぞ、きっと」


「レグルス君……自信が感じられないよ……」


 レムの小さいながらも鋭いツッコミに、オレは苦笑いを浮かべるしかなかった。


「どどどどうしょうシュノ」


「なんだい? 君みたいなのが怖がってても需要はないよ?」


「激しく同感だ」


 こんなバカがやるより、女の子が涙目で怖がる方が何百倍も可愛いってのは周知の事実だろう!? ……はいサーセン自重します、まる。


「そんなのどーでもいいんじゃ!」


「女の子がどうでもいいのか?」


「なんでそうなったかは知らねえけどよ、それどころじゃねーよ!」


「なんだよ」


「心当たりがありすぎんだよ!」


「……どうでもいっすわー」


「しどい!?」


 さーてバカはほっといて飯〜♪


「今日は和風ハンバーグと〜野菜タップリの煮物と〜サラダにしてみました!」


 えっへんと胸を張りながら料理の説明をしていくサナ。こりゃ確かにさっぱりしてるな。しかもうまそうだ。


「冷めないうちに召し上がれ〜」


「うほー!」


「行儀悪いよバイス」


「うっへー! こんなうまそうなのが目の前にあって我慢できっか!」


 口に食べ物を放り込みながら喋るなバカ。行儀の欠片も感じられないぞ。


「なるほどね、和風言うだけあって、ハンバーグは大根おろしで食べるんだ」


「さっぱりしてるから、いくらでも入るよ〜」


「んー! サナちゃん料理上手だね!」


「えっへへ〜参ったか〜♪」


「どれどれ……」


 それぞれの感想を聞きながら、オレは自分の皿に盛られた料理を覗き見る。そこにはやたら大きいハンバー……。


 いち早くオレは自分の皿の料理に違和感を感じた。サラダとか煮物は普通だ。けど、他の奴らと比べて、ハンバーグだけ違う。なんつーか、やたら大きくて形がいびつだった。


「あっレグルス、それはティルが作ったんだよ〜♪」


「えっ?」


 反射的にティルの方を見ると、彼女の綺麗な瞳と視線がぶつかった。


「っ!!」


 何故か急にプイッとそっぽ向かれてしまった。んーちょっと傷つくぞ。


「嫌なら別に食べなくていいわよ……サナが作ったのならまだあるし……」


「バーカ」


「あっ」


 前にもあったけど、女の子が作った料理を粗末になんかするかっての。ましてやティルが作ったんだろ? 食わなきゃ未来永劫後悔するわ。


「モグモグ……」


「ジーっ……」


「モグモグ……」


「ジジーッ……」


 そんな見られたら食いづらいんだけどな……。まあそれは置いといて、肝心の味だけどよ。


「うまいっ!」


「ほっほんと?」


 たったそれだけ言っただけなのに、ティルの顔は太陽みたいに明るくなった。


 いや、ティルにとってはその程度の言葉でも良かったのかもな。自分で作ったのをうまいって言われりゃ、誰だって嬉しいだろうしな。


「これティルが作ったのか?」


「あっ味とかやり方はサナが――」


「なーに言ってんのよー♪ ハンバーグの形のうまくやれるやり方とか味つけのやり方とか色々聞いたく――」


「ワーー! ワーー!!」


 耳まで真っ赤にしながら、いつのもティルとは思えないようなスピードでサナの口を塞いでいた。


 ……? どうしたんだ? ティルが叫んだせいで、サナの言葉も聞き取れなかったし。


「ふぁひはってんら?」


「口に入れたまま喋るな」


「んぐっ……んで、なにやってんだ?」


「さあな……」


「まあ君達には理解しないでいいよ。特にレグは」


「なんでだよ」


「まあその方が、傍観してる側としては面白いからね」


「ハハッ……」


 レムちゃんも分かってるのか、複雑そうな笑みを浮かべていた。


 ……たまにシュノってわけわからんこと言うよな……。


「もう! サナ!」


「えっへへ〜なにか問題でも?」


「ありまくりよ!」


「も〜二人ともケンカは止めてよ〜」


「フフっ、やっぱり賑やかがいいね」


 こんな感じで、オレ達の休日はやかましくも、和気藹々と楽しく過ぎていった――


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