34話 恐怖? のツイスターゲーム! 後編
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「………」
「わ、悪かったわよ」
「そうだよ〜ティルも謝ってるしさ〜」
「まずお前が謝れ」
顔に絆創膏を張り、たんこぶが出来た状態のオレは、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「アハハ〜いやぁティルがあんなに乗るとは思わなくてさ〜」
「反省しろ」
「すいません……」
目の前で正座をして、シュンとなるサナ。
可哀想かもしれないけど、優しくばっかしてても女の子のためにはならない。時には心を鬼にしないとな。
……言っとくけど、本気で怒ってる訳じゃないからな。
「まあ反省も済んだみたいだし、ティルのバツゲームを決めようか」
「ハァ……気が重いわね……じゃあこれ」
サイコロを振ると、そこにはなにも書かれていない、真っ白な面が示されていた。
「共通だね。じゃあカードを選んで」
「じゃあ……これにしようかしら」
ティルの引いたカードを見ると、そこには『早口言葉』と書いてあった。
……なんというか……まあ……単純だなぁ。
「なんか、最後にしてはパッとしねーな」
「……流石にオレも同感だな」
「出ちゃったものは仕方ないさ。じゃあティル、早口言葉は三つ用意したから、どれか一つクリアしてね」
「まあこれぐらい余裕ね」
コホンと咳払いをすると、早口言葉が示された紙を眺めた。
「これでいいかしら……じゃあいくわよ」
すぅーっと息を吸い込むと……
「にゃまむぎゅ!」
盛大に噛んだ。
「………」
「いっ今のは練習よ! すぅー……生麦にゃまごめ……」
また噛んだ。しかも舌を噛んだのか、プルプルしながらうずくまっている。
……可愛いなぁ全く。
「……ほ、ほらティル、もう一回やってみよう? ね?」
「うぅ……これぐらい出来るんだから……!」
フィリィが優しくティルの事を宥めていた。流石フィリィお姉ちゃん。
顔をゆでダコみたいに赤くし、指を合わせてモジモジしながらも、また息を吸い込む。
「生麦にゃまごみぇ……」
……本気で噛んだのか、口元を押さえながら、プルプルとしゃがみながら震えていた。しかも涙目。
「ほ、ほら! 違うやつでやってみよ? ね?」
「うぅ……」
恐らく半分嫌々になりながらも、また息を吸い込む。
「あかまきがみあおまきぎゃみぃ……」
やっぱりダメだった。
「……もうイヤー!」
顔を押さえて泣きながら部屋の隅に座り込んでしまった。
流石にこれはいじめすぎだろ……オレとしたことが、さっさと止めてやればよかったな。
「よしよし、ほら泣かないで」
「……グスッ」
涙ぐむティルを、笑顔であやすフィリィ。なんだか仲の良い姉妹のようにも見える。
「さて、ティルの早口言葉も聞けたし、そろそろお開きにしようか」
「……お前、今回の事で性格の悪さが露見したよな」
「なに言ってんだいレグ? 性格が悪いっていうのはもっと酷いことをする人間を言うんだよ?」
しれっと澄まし顔で言うシュノ。ならあの箱の奴の時に持ってたほっそい糸はなんだったんだ? オレは見てた! 決定的瞬間を!
「……まあいっか。この後どうすっか」
「俺様風呂入りてーわ。まだ顔べとつくし、結構汗かいたしな」
バカにしては良い案だな。かくいうオレも結構汗かいて不快だった。
「じゃあ大浴場で汗を流すとしようか」
「さんせー!」
カポーン――
「ふぅ〜……」
湯船に浸かりながら、自然と息が漏れた。やれやれ、なんかオヤジくせーなオレ。
「なんだレグー先に行くんじゃねーよ」
「きたねーもん見せんなアホ」
ったく、湯気でよく見えないとはいえ、タオルで隠せよなバカ野郎が。
「なに言ってんだ! 男は裸がユニフォーム!」
「一生言ってろ」
バイスのことは放っといて、オレは再び湯に体を任せる。ふぅ〜生き返るぜ〜。
あ、この大浴場は宿舎の一回にあって、公衆浴場になっている。まあ部屋にはユニットバスがあるから、面倒だったら部屋で済ませられるんだけどな。
……混浴なら良かったんだけどなぁ。いやぁ、だってそれって男の夢だろう?
「ほらバイス、体洗っちゃいなよ」
「おうよ」
既に体を洗っていたシュノに促されるように、バイスは体を洗いにいった。ちなみにオレももう洗ったからな?
「……そう言えば二人共、覗きは行かないのかい?」
なにかを言いたそうな、そんな嫌な笑みを浮かべながらシュノが聞いてきた。
「……しねぇよ」
「すすすするわけないだろアホ!!」
「君にアホとか言われるのは心外だな……」
オレ達は無意識にガタガタと震えていた。ああああんな思いするのは、もうこっこりごりだ……!
「まあそれが健全だね」
「なら聞くなよな!」
「いや、だって面白いじゃないか」
「うぉい!」
「お前ら、漫才は良いからのんびりしようぜ」
「ジジくせーぞレグ!」
「ほっとけ」
バカみたいにはしゃぐのもいいけど、こういう時はのんびりして英気を養っておきたいもんだぜ。
「……そういやあいつらはなにしてんだろな?」
ふと、女子風呂のあるほうに視線を向ける。まあ……あんだけはしゃいだんだ。風呂ぐらいはのんびり入ってんだろ。
そう結論付けたオレは、湯の温もりを堪能するのだった――
「へーこんな広いんだー!」
「あれ、サナちゃんは入ったことなかったんだ」
「まあね〜」
「あっ私もないです」
レグルスと別れた私達は、ワイワイと会話しながら(私はあまり会話してないけど)大浴場へとやって来た。
時間がそこまで遅くないからか、浴場には誰もいない。貸しきり状態ね。
「アタシ一番乗り〜♪」
「サナ! ちゃんと体洗ってからだよ!」
「はーい。レムってばお母さんみたい!」
「おっお母さんとか言わないでよ〜」
「フフっ……」
体を洗いながら、和気あいあいと過ごす三人。私は……なんかこういう空気に入りづらい。
「ねぇ、ティルもそう思うよね?」
「……えっ? な、なにが?」
ボーッとしながら体を洗っていたせいで、全くサナの話を聞いてなかった……思わずビクってなったわ……。
「だから、レムがお母さんみたいって話!」
「だから〜お母さんじゃないってぇ……」
「……レムがお母さんというより、サナがもう少し大人になればいいんじゃないかしら……?」
「うわーんフィリアーティルがイジメるー!」
「はいはい、よしよし」
さっき私にしたように、フィリアは優しく包み込むように、サナをなぐさめていた。。
「ほ、ほらサナ、とりあえずお湯に入ろうよ」
「お湯……? アタシが一番乗りだー!」
「あっちょっと!」
レムが止めようとしたけど遅かった。サナはさっきとは百八十度態度が変わったと言っても差し支えないぐらいの勢いで、湯船へと走り出した。
「あっ走ったら危ないよサナちゃん!」
「えへへ〜大丈夫だいじょ――うわっ!」
……見事に滑って顔面から転んだわ……もう、フィリアの忠告をちゃんと聞かないからこうなるのよ……。
「ちょっと、大丈夫?」
「うぇ〜ん……」
流石に心配になって様子を見に行くと、子犬みたいに目を潤ませていた。
結構派手に転んだものね。そりゃ痛いはずよ……。
「サナ!? 大丈夫!?」
「なっなんとか……」
目をゴシゴシしながら、サナは気丈に振る舞っていた。まあパッと見た感じ、流血とかは無さそうだし、多分大丈夫だと思う。
「じゃっじゃあ気を取り直して……湯船にダーイブ!」
「もう! サナってば!」
「グェッ」
今度はレムの忠告を聞かずに、湯船へと飛び込もうとする。けれど、いち早く反応したレムが、サナの腕をグイッと引っ張って制止させた。
「お風呂は静かに入らないとダメだよ!」
「も〜分かってるってば〜レムったら心配性だな〜」
分かってるんだか分かってないんだか……サナはよく分からないわ。しかも心配性ってなにか違う気がする……。
「ふ〜気持ちいいね〜」
「フィリア、なんだか年寄り臭いわよ?」
「え? 普通言わないかな?」
「まあ気持ちは分からなくはないわ」
フィリアみたいに、湯船に入って気持ちいいと思うのは分かるし、言ってしまうのも分かる。でも、なんかフィリアの言い方がなんか年寄りみたいだったのよね。
「でも、やっぱり広いお風呂いいよね〜前の企業じゃなかったもん」
「あー確かにー」
「あっそうなんだ」
「………」
三人が会話してるなか、なんとなしに三人の一部分に目が行ってしまう。サナは……私とあまり変わらないけど……バスタオルの上からでもわかる。
「……おっきいなぁ……」
「っ? ティルさん何か言いました?」
「えっ!? なっなんでもないわよ?」
ボーッと見ながら、無意識に呟いてしまった。まさかレムに聞かれてたなんて……いや、多分聞かれてないわ。今の反応なら! きっとそうよ!
そっそれに別におっきいのが羨ましい訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよ!!
それでだけど、フィリアもレムも、服着てても大きいと思ってたけど、脱ぐとさらに凄いわね……絶対レグルスには見せられないわ!
「それじゃあ……早速……♪」
「っ??」
なんか悪魔みたいな笑みを浮かべながら、サナはポワーンとなってるレムの後ろに回り込んだ。
……? 何をするつもりなのかしら?
「とりゃー♪」
「ヒャアァ!?」
「っ!??」
……えっと、今起きたことを話すと……サナってば、いきなりレムの大きなあれを鷲掴みにしていた。
あまりにも予想外なことに、私は声にならない悲鳴をあげてしまっていた。流石のフィリアも口に手を当てて驚いていた。
「サッサナ! やめてよぉ〜!!」
「おっ? おぉっ? レムまたおっきくなった?」
「そんなことないよ〜!」
ままままだ大きくなってるの!? あのサイズで!? 一体なにをすればそんなになるの!!?
「いや〜子供のころから一緒だからレムの成長は感慨深いものがありますな〜」
「うぅ〜……」
どっと疲れたのか、ヘロヘロしながら涙を流していた。
サナって色々と破天荒なとこがあるわよね……レムも苦労してるのね。
「ってあれ? サナちゃんは?」
「……いないわね」
一段落してホッとしたのも束の間、サナの姿が見えなくなっていた。
また良からぬことを企んでるのかしら?
「ていっ!」
「キャア!?」
「っ!!」
いつの間にか後ろに回っていたサナは、さっきレムにみたいに、フィリアを毒牙にかけていた。これまたレムに負けず劣らず、ムニムニ形を変えていた。
……うぅ〜……。
「おおぉ!? レムといい勝負!?」
「サナちゃん! あまり悪ふざけすると、わたし怒るよ!!」
「わ〜♪ 退散退散〜♪」
キッとした表情で睨み付けると、サナはお湯の中へと潜ってしまった。
そっか、さっきはこうやってたから姿が見えなかったのね。ここの湯船、思ったより深さがあるから出来る芸当だわ。
「全く、なにやってるのよ……」
「うりゃ隙あり〜」
「キャア!?」
気づいたら、私の胸には二つの手に覆われていた。突然のことにも関わらず、私の顔は自分のじゃないみたいに、熱くなっていた。
「おお? 小ぶりだけどさわり心地が最高ですな〜♪」
なにか吟味するかのように、目を閉じながら私の体を触るサナ。
もう私の頭は、完全に真っ白になっていた。
「なっななな……」
「な?」
「なにするのよーー!!?」
私の悲鳴にも近い絶叫が、大浴場へと響くのであった――
「ほらもう怒んないでよ〜」
「知らないっ!」
「うぅ〜ティル冗談通じないよ〜」
あれから数分後、やっと落ち着いた私は、サナに背を向けながらプリプリ怒っていた。
……普通あんなことされたら怒るでしょう? 同姓だからって関係ないわ。
「二人は嫌じゃないの?」
「まあ嫌だけど……」
「もう恒例行事みたいなものなんです……」
「なはは〜♪」
「………」
フィリアは悟ったように、レムは半ば諦めたように苦笑していた。
しかもサナには反省らしきものすらないし……なんか自然と溜め息が出た。
「まあまあ、お詫びに……ついてきて!」
「なっなによ」
おもむろにザバッと湯船から立ち上がるサナ。思わず体を隠すように身構えてしまった。
「やっ別にティルに悪いことじゃないから心配しないの♪」
パチッと可愛らしくウインクをする。正直嫌な予感しかしないけど……。
「まあ……いいわよ」
とりあえず……というか、渋々承諾した。この嫌な予感が杞憂ならいいんだけど……。
「レムとフィリアはどうする〜? もう出る?」
「わたしはまだ入ってるよ」
「私も〜……」
「おっけー。じゃあいこっティル♪」
「はいはい……」
サナに腕を引っ張られながら、私は大浴場を後にした。
……次は一人でのんびり来ようかしら……?




