30話 助ける理由
決着編! 今回はちょっと自身ないです……(泣)
「ふぇぇ……どういうことなの……? 確か能力はスピードとかだったはず……!」
「へっわりぃなレムちゃん! 一気にいかせてもらうぜ!」
オレは双刃剣を一つにして右手に持ち直すと、レムちゃんに向かって、一気に接近していく。接近すりゃこっちの土俵ってな。
「こ、こないで!」
また水の球体を放ってくるけど、一つ一つを丁寧に回避したり、切り裂きながら接近していく。
「ふぇぇ……えっえい!」
咄嗟の防衛ラインと言わんばかりに、さっきオレを阻んだ水の壁を、何層も作り出し、己を守る盾として利用する。
まあさっきまでのオレだと厳しいだろうけど、こいつがありゃ余裕ってな!
「うらうらぁ!」
出始めに一つ壁を切り裂き、破壊する。うん、これなら全部破壊するのは容易いな。
「ま、まだです!」
「くっ!」
壁だけじゃなく、さっきみたいに、周りにある水を使って攻撃してくる。おいおい、壁だけでお腹一杯だっての!
「いてっ! くそっ負けるか!」
「えぇ!?」
気合いを入れ直して、周りの水の攻撃を無視して、壁を破壊していくことに専念していく。流石のレムちゃんも、驚きを隠せないみたいだな!
……まあ、壁を作るのに集中力がいるからか、周りの水があまり強力じゃないから出来るんだけどな。
「最後の一枚!」
「キャア!」
なんとか最後の一枚を破壊して、レムちゃんに接近する。だいぶ近づいたけど、まだ攻撃範囲内じゃないな。
「一気にいく!」
『っ!? 待ってレグルス!』
「かかりました!」
「うおっ!?」
懐に入った。そう思った刹那、足元から突然水柱が吹き出し、オレは空中へと放り投げられてしまった。
くそっ、壁じゃなくて、こっちに手が回ってたから威力が弱まってたのか!! オレとしたことがしてやられた!
「これで決めます!」
「ぐっ!」
空中にいるせいで、ほぼ無防備状態のオレに、上下左右といった全方向から、水の球体を飛ばしてくる。
あんな可愛い顔して、戦術が思ったよりえげつねぇなおい!?
「くそったれが!」
「ふぇっ!?」
オレは双刃剣を分離させると、風のように素早く、手当たり次第に球体を切りつけていく。
といっても、空中にいる状態、しかも四方八方からだからか、全ての水を破壊するのは不可能だった。
「ぐっ!」
『レグルス!』
全てを破壊することは不可能。それはやはり的中し、破壊しきれなかった球体が、バシバシとオレへと襲いかかる。
くっ、落ちようとすると下からの攻撃で落下出来ないし、こりゃ本格的にマズイ!
「トドメです!」
『レグルス! 上から来る!』
「……マジか」
地面に落下も出来ずに攻撃を受けてるなか、上からは、特大の水の球体が落ちてきやがった。
……万事休すじゃねえかこれ? 避ける術が見当たらねえぞ。
『諦めんじゃないわよレグルス! そんなの私が認めないわよ!!』
ティルの怒声にも近い叫びが聞こえてくる。……へっ、弱気になるなんか、このレグルスさんには似合わねえってか!?
それに……なんか知らないけど、頭にあるイメージが浮かんできてやがる。こいつがなんなんかは知らないけど、やってみる価値はあるか!
「この、くらいやがれ!」
イメージ通りに、まず右手の剣を振ってみる。すると、球体目掛けて衝撃波みたいなのが発生し、激突した。
もしかして……斬撃を飛ばせるってのか? こりゃスゲーや! でもなんで急に出来るようになったんだろな? さっきティルに励まされて、負けたくないって思ったからだろうか?
「そ、それぐらいじゃやられないもん!」
少し勢いが弱まっただけで、球体の威力は弱まってはなさそうだった。なら質より量ってな!
「うらうらうらー!!」
「負けないもん!」
両手の剣を使って、どんどん斬撃を飛ばして水の球体にぶつける。すると、徐々にだけど、球体の水が減っていった。
だが、削れてはいるものの、球体は確実にオレへと迫ってきていた。
「マズイ!」
「トドメです!」
「ぐあっ!」
なんとか半分ぐらいには削ったけど、無慈悲にも球体はオレに直撃し、その勢いで地面に叩きつけられてしまった。
『レグルス! しっかりしなさいよ!』
………。
『レグルス! 起きてよレグルス!』
……くっ。
『……ティル』
『レグルス!』
なにがあったんだオレ……気づいたら大の字に伸びていて、ティルの声で意識が戻っていた。
……そうか、あの水で地面に叩きつけられて、意識が軽く飛んでたのか。ちっ、オレとしたことが情けねぇ。
「ま、まだ倒れないの……?」
「へっわりぃな、やられるわけにはいかないんだよ!」
「わ、私だって負けられないんです!」
そう言うと、球体を飛ばしてくる。けど、なにか違和感があった。
「……もしかしたら。うらっ!」
とりあえず斬撃を飛ばして球体を破壊する。そしてオレは、前におっさんが言っていたことを思い出していた。
『レグルス、もしかしたら……』
『おう。多分だけどな……一気にいこう!』
これは好機だ。そう判断したオレは、またレムちゃんへと接近していく。
今までのことを考えたら無謀だと思うだろう。けど、前におっさんが言っていたことがあるんだ。
“能力は無限じゃない。なんにでも限りがある”
そう、さっきからレムちゃんはかなりの能力を使っている。現にさっきの水にあまり威力がなく、息も結構上がっている。
一方オレは、そこそこ能力を使っているとはいえ、まだ余力は残している。ケガしてるとはいえ、どっちが有利かは明白だろう。
「ハァ……ハァ……え? ダッダメだよ!」
「? なんかよくわからないけど、戦場で隙を見せちゃダメだぜ!」
「キャア!」
怯ませるために、斬撃をレムちゃんのすぐ横を通過させる。それが上手くいったか、レムちゃんはその場でしりもちをついていた。
「チェックメイトだな」
座り込んでいるレムちゃんに、刃を向ける。だがまあ傷つけるのが目的――
「やめなさい!」
「っ!?」
「え?」
突然オレとレムちゃんの間に、違う女の子が割って入ってきた。
近くに小さいバギーが転がってる所をみると、あれで来たのだろう。
その娘は、ショートヘアーが似合う活発そうな娘だ。レムちゃんと同じ軍服を着ているから、相手の軍人か。あとぺたんこだ。
てか、この娘も見たことがある……そうだ、レムちゃんと一緒に見た、もう一人の娘じゃねぇか!
「サナ! なんで来たの!?」
「レムが苦しんでるのを黙ってなんか見てられないよ!」
「っ!?」
なんの偽りのない、真っ直ぐな瞳で言う、サナという女の子。ここまで真っ直ぐになれるのは、ある意味羨ましいな。
「知ってると思うけど、アタシは『魔女』よ! やるならアタシをやりなさい!」
「えっ!? ダッダメ! やるなら私にしてください!」
「やれやれ……」
「キャッ!」
「イタッ」
軽く溜め息をしながら、オレは二人の頭を、剣の柄で軽く小突いた。
「???」
「勘違いすんなって、オレは傷つけるつもりは毛頭ねーよ」
「なっなんでよ? 今逃がしたら反撃するかもしれないよ?」
「助けるのに理由なんか必要ねーだろ? おいおっさん、ランカーは投降したってさ」
『おう、ティルから会話の内容を聞いた。流石に相手も投降するだろ』
おっさんに連絡すると、どうやら投降を促すようにするようだ。これでこの戦いは終わりだな。
「……アンタ、変わってるね」
「誉め言葉として受け取っとくよ。まあ、投降ってことでいいかい?」
「……はい。わかりました」
「うん……しゃーないかな」
ハァ、と二人は項垂れていた。まあ負けたんだからガッカリするのも分かるけど、ここまで嫌がるのには、なにか意味があるのか?
「私達……どうなるのかな……?」
「わかんないよ……」
「………」
「レグルス! また無茶して!」
「ぐほっ!」
陣地に戻ってきた矢先に、ティルに平手打ちされてしまった。おいおい、疲れてんだから勘弁してくれよな……。
「あまり心配かけさせないでよ……」
「……ああ」
ぽんぽん、と笑顔で頭を撫でると、ニコッと笑顔になった……と思ったら直ぐに膨れっ面になった。
「べっ別にレグルスが心配だったわけじゃなくて……そう! 私にまで被害が来るのが嫌なだけだったの! 勘違いしないでよ!」
戦闘が終わってもティルは平常運転だった。
「レグ!」
「レグ君!」
「ヒェフ!」
ティルと話をしてると、みんなが駆け寄ってかた。当たり前だけど、かなり疲労の色が見える。
……あと、何故かバイスはボロボロで、顔の至るところが腫れていた。そのせいで上手く喋れていなかった。
……滑稽で笑える。
「やれやれ、なんとかなったね」
「シュノ、お前やるじゃないか!」
「まあ何だかんだで上手くいったよ」
いつもみたいに澄まし顔をするシュノ。ま、口には出さないけどこいつも大変だったんだろうな。
「……なあフィリィ、ちょっといいか?」
「なあに?」
「負けた会社の人間ってどうなるんだ?」
そう、さっきのあの二人の雰囲気はちょっと異常だった。ってことは、なにかあるってことだよな。そう思ったオレは、とりあえずフィリィに聞いてみることにした。
「あまり良い事は聞かないかな……間接的に上下関係みたいなのが生まれて、かなり差別が激しくなるみたいだよ……」
「………」
なるほど、そういうことか。それを二人は知ってたわけか。そんなの、オレがほっとくわけないだろ。
そう思ったオレは、隅で小さくなっている二人に近づいた。
「よっ」
「レグルスさん……」
「なっなによ、勝ったのを自慢しにきたの?」
「おいおい、そりゃないぜ……」
サナからは、見事な嫌われっぷりでした。ショボーン。
「あっこの娘達……ランカーの娘?」
オレのことが気になったのか、みんながオレ達の所へと歩み寄ってきた。すると、レムちゃんはそそくさとサナの後ろに隠れてしまった。やっぱ、かなり気弱な感じな娘なんだな。
「わたしフィリアっていうの。良かったら仲良くしてね?」
スッとフィリィは右手を差し出す。けど、サナはそれに応じなかった。
「……なんなのよ。負けた企業のことは分かってるんでしょ?」
「うん。けどそんなの関係ないよ。これも縁だし、友達になりたいなって。ダメかな?」
「………」
思いもしなかった発言だったのか、二人は目を点にしていた。
「僕も仲良くしてもらえると嬉しいかな。あっ僕はシュノンバートだよ。長いからシュノでいいよ」
「私はティルよ」
「ふぉれひゃまふぁふぁいひゅら!」
「いや、なに言ってるかわからねーし。こいつはバイスな」
「……えと」
「その……なんでそんな優しくするの」
「なんでって……なぁ?」
オレらはみんなして、不思議そうに目を合わせる。せっかく縁があったんだし、オレも仲良くなりたいしな。
「……みんなこうなると聞かないわよ」
「そうなの……でも」
「……うん、なんか……暖かいね」
えへへ、とやっとレムちゃんが笑ってくれた。それに釣られてサナも、そしてオレ達も笑顔になった。
こうして、オレ達の初めての戦いは、無事に幕を下ろしたのだった――
先に行っておきます。次の章はかなりフリーダムになりますwww




