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戦場のローレライ  作者: ゆうき
五章 初の戦場
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29話 レム

 シュノが前線から離脱してからあまり時間は経っていないのに、戦況はかなり不利になっていた。


 守りに入り、オレが陽動として動いてはいるが、それでも犠牲者が出ない訳ではない。一人、また一人と仲間はやられていった。


 くそっ! まだ怪我人だけで済んでるけど、このままだとマジで死人が出るぞ!


「おっさん! マジでマズイぞ!」


『分かってる! だが奴等のコーティングをどうにかしない限り、こっちに正気はねぇ!!』


「くそっ……うぉっ!」


 敵の銃撃を、持ち前のスピードを活かしたサイドステップで回避する。このままだと、オレまでガス欠になりかねない。どうすりゃいいんだ畜生!


『……!! 全員へ通達! 狙撃班がターゲットの破壊に成功! コーティングの消滅を確認しろ!』


「っ!! よっしゃ任せろ!」


 我先にと、バカが銃を乱射しながら特攻していく。あぁ、あんな特攻したら格好の的じゃねえか!


「うらうらうらー!!」


 ……なんで攻撃くらわないんだろう。


「おっ!」


 バイスがアホっぽい声を出す。視線の先、敵の鎧には、幾つものヒビが入っていた。


『レグルス! チャンスよ!』


『おうよ!』


 これは好機だ! オレは出始めに近くにいた敵の懐に潜り込むと、腹目掛けて拳を振るう。その一撃で、鎧を砕くどころか、悶絶して倒れこんだ。


『これならいけるわね!』


『だな! シュノ達上手くやったんだな!』


 予想外のことだったのか、敵さんはあたふたと忙しなくしていた。こりゃかなり大打撃みたいだな!


『よし! ティルの観測でやつらの防御が手薄なのが判明してる。ここはレグルスに一気に攻めてもらう!』


 おっさんの勇ましい声が響く。ついに真打ち登場ってか!


「まっかせとけ!」


 拳を胸の前で合わせて気合いを入れる。つっても、まずはこの陣形を突破することからだな。


「ランカーを止めろ! 奴に仕事はさせるな!」


 この陣形の隊長と思われる男が、オレを指差しながら指示する。やれやれ、人を指差すなって教わらなかったんかね?


 つっても、敵さんの銃口は一気にオレに向いているし、いつ攻撃が来てもいいようにしないと――


「くらえこの野郎!」


「ぐあっ!?」


 ……えっと、なにが起こったかというと、敵がオレに気がいってる隙を突いたのか、バイスが敵の人をぶん投げて、他の敵にぶつけて一網打尽にしてしまった。


 パワーだけはすげぇよなあいつ……脳まで筋肉なのかって思うぐらいだ。


「ほらレグ、こいつらは俺様がボコボコにしてやっから! お前はさっさと行きな!!」


 親指で鼻をかきながら、超絶どや顔をかます。いつもなら貶す所だが、ここは甘えるとしよう。


「しゃーない、任せるぜ」


「へっへっ、この俺様にかかりゃ余裕だぜぇ!」


 ……凄まじい小物臭だった。













「ふぅ、みんな大丈夫か……?」


 バイス達に任せて敵陣に接近してるのはいいものの、やっぱり不安は残っていた。オレのいないとこで何もなけりゃいいけど……。


『ねえレグルス、なんか変じゃない?』


『うん? なにがだ?』


『それぐらい判断しなさいよね!』


 何故か理不尽に怒られてしまった。一体なんなんや……。


『敵陣に近づいているのに、明らかに敵がいないじゃない』


『……確かにそうだな』


 そういや、バイス達と別れてから、敵に全く会っていない。接近しやすいと言えばそうだけど、ここまでいないというのは、流石に怪しいかもな。


『……! なにかくるわよ!』


「うおっ!」


 突然前方から、水色の球体が飛んできやがった。それを咄嗟にしゃがんで回避する。


 危うく直撃するとこだったぜ……ティルに感謝だな。


「なんだ?」


 球体が飛んできた先、そこには一人の女の子が立っていた。


 その女の子は、茶色のセミロングの髪を下ろし、どこか大人しそうな印象の女の子だった。俺達の軍とは違う服を着ている所を見ると、敵の軍人だろう。


 ……あと、身長は150程度しかないだろう。そのわりには……やたら一部分がデカイ。フィリィもデカイと思ってたけど、この娘もかなりあるな。


 ……おっと、流石に不謹慎だったな。けど仕方ないじゃない男の子なんだから!


「あなたがランカーですね? 陣地には近づかせません!」


 ビシッ、とオレを指差しながら言う女の子。なんか……凄い頑張ってる感があって和む。癒し系って感じだ。


『女の子だからってデレデレしてんじゃないわよ!』


『しっしてねーよ!』


『ふんっ!』


 なんかティルの機嫌を損ねてしまったようだ。離れてても、膨れっ面でそっぽ向いてるのが、容易に想像出来るから不思議だ。


「そういや……ランカーの写真で見た顔だ。君、ランカーのレムさん?」


「そ、そうです! あなたこそレグルスさんですね?」


 なんかお見合いみたいにお互いの自己紹介をしているオレ達……端からみたら滑稽だな。


「あなたに攻めさせる訳にはい、いかないんです!」


「あんまレディとは戦いたくないんだけどな……」


 視線を反らしながら、ポリポリと頭をかく。レディと戦うなんて勘弁願いたいんだけどな。


「ふ、ふざけないでください! いきますよ!」


 えいっ、と言わんばかりに、胸の前で握りこぶしを作ると、体から強い光を発生させ、方目の色が水色に染まった。


 ……レディとは戦いたくないなぁ。


『ちょっと! 甘えた考えしてるとケガするわよ!』


『まあそうだけどさ……しゃーない、ティルにケガさせたくないし、やりますか!』


『バッバカじゃないの!? さっさとやりなさいよ!』


 まあ言われなくても分かってるってな!


「い、いきますよ! えいっ!」


 両手を前に出すと、そこにはさっきの水色の球体が産み出されていた。というより……あれは……?


「……水か?」


 そう、ただの球体じゃなくて水だった。つーことは、水を生み出す特殊能力タイプってことか?


「えいっ!」


「ほいっと」


 可愛らしい声を出すと、その水の球体をオレに向かってぶっぱなす。まあ直線的だったから、ジャンプするだけで、簡単に回避できた。


「えいっ! えいっ!」


「ほいっと! よっと」


 バンバン水の球体を放ってくるレムちゃん。けど、やっぱ直線的だからか、回避するのは容易かった。


 ……まだ戦い馴れてないのだろうか? 攻撃がかなり直線的だった。


『相手が女の子だからって手抜いてないでしょうね?』


『んなわけねーだろ?』


 ま、このままだと防戦になっちまうし、攻めていかないとなぁ。


「いくぜっ」


「こ、来ないでください!」


 迎撃として、またさっきの水を放ってくるけど、やっぱり直線的だからか、体を反らしたり屈んだりしながら接近していく。


「えいっ!」


「うおっ!」


 地面に手をつけたと思ったら、突然レムちゃんの周りを囲うように、地面から水の壁みたいのが現れやがった。


 なんとか突っ込まないで止まれたけど、あのまま突っ込んだら不味かったな。


「このままじゃじり貧だな……」


 思わずちっ、と舌打ちをする。攻撃は単調だけど、遠距離が得意そうだし、あの水の壁の守りもある。


 ……気乗りしないけど、ガチでいくとするか!


『よし、一気にいくぜ!』


『遅いわよ!』


 一気にいこうと、オレは精神を集中させる。けど、その判断がいけなかった。


「サナ、準備良い……? うん、分かった。とっておき、いきます!」


「へっ?」


 今までレムちゃんが放った水が、なんか綺麗な光を放ち始めた。刹那、全ての水がふわふわと浮かび始めた。


 ……いい予感はしねぇなぁ。


「ご、ごめんなさい!」


「マジか!?」


 さっきふわふわしていた水が、オレに向かって物凄い勢いで飛んできやがった。


 まさか、水を生み出す能力じゃなくて、水を操作することも出来るのか? こりゃマズイぞ!


(いや……ここは一か八かだ!)


 いつもなら、スピードをいかして回避するけど、そんなの、この四方八方から飛んでくる弾幕には無意味だ。


 そう判断したオレは、精神を集中することに努めた。


「ぐっ!」


 棒立ちなんだから、当たり前のように水達はオレへと襲いかかる。かなりの勢いだからか、当たるとかなり痛ぇ。


『レグルス!』


 ティルの悲痛な叫びが頭に響く。へっそんな心配なさんなって!


「効いてる……? 私だって……!」


 緊張してるのか、汗を流しながらなにか呟くレムちゃん。まあそんなこと気にしてる余裕なんかないけどな。


「これで……終わりです!」


 残っていた水に、更に自分で作り出した水を足して大きくしていく。こりゃでけぇなあ……アドバルーンの何倍もあるだろこりゃ!


「えーい!!」


 可愛らしく気合いを入れながら、どでかい水の球体をぶっぱなしてくる。こりゃいけるか……?


「やった!」


 勝利を確信したのか、女の子らしく嬉しそうに喜ぶレムちゃん。けど……そうは問屋が卸さないぜ?


 そう、こっちの準備は出来たぜ!!


「うらぁぁぁああ!!」


「えっ……」


 オレは自慢の双刃剣を作り出し、それをクロスに重ねて水に向かって切り抜ける。その一撃で、水の球体は、細かい水へとなって地面へと落ちた。


「うそっ……能力は肉体強化じゃない……?」


 ワナワナと後ずさりするレムちゃん。なんかオレが悪役みたいだなおい……。


「へへっ悪いな騙してさ。さあ、こっからが本番だぜ!」

やっとこのキャラが出せた!

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