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戦場のローレライ  作者: ゆうき
五章 初の戦場
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28話 重圧

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 レグと別れて数分後、僕は戦争の拠点でもある南の陣地に戻ってきていた。


 さっきレグ達に作戦を伝えたからだろうか、それともただ単に周りが早かったのか、それは定かではないが、他のスナイパー達は戻ってきていた。


「おっシュノンバート! 遅かったな!」


「すいません先輩」


 結構遠慮無しに、僕の肩をバンバン叩くこの細身の男は、僕が銃の訓練をしている時に世話をしてくれている人だ。


 世話になっているせいで、僕が頭が上がらない数少ない人物でもある。


「そういや、ランカー君を使った作戦を考えたのお前なんだって? さっきジェクトさんが鼻高々に言ってたぜ!」


「ええ、まあ――」


 思わず曖昧な返事をしてしまった。というより、隊長がそんな風に言いふらすせいで、周りの視線が……正直僕には鬱陶しかった。


「お前ホントに頭良いよな! そうそう、今度女の子とデートがあってさ、何か喜ばせるアイディア無いか?」


「そんなこと聞かれてもお答え出来ませんし、そもそもそういうことを聞くときは時と場合を選んでくださいよ」


「まあそれもそうか!」


 ハハハッと笑いながら肩に腕を回してくる。こういうスキンシップが無かったら良い先輩なんだけれどね……。


「よし、全員揃ったな。これから作戦を説明する」


 隊長がスッと僕達の前に出ると、一瞬で全員の目線が隊長に集中する。もちろん僕や先輩も例外無くね。


「ここには十二名の精鋭を集めた。これから三名ずつ、四つの班に別れて作戦を遂行してもらう」


 やはりというか、一回で各個撃破をしていくということか……一個ずつやってたら確実に破壊は出来るだろうけど、それこそ敵に気づかれるのが関の山だろう。


「んじゃ班員を決めていくぞ」


 隊長は一枚の紙を見ながら、それぞれ何班かを指示していく。どうやら僕は三班に配属されるようだ。


「おっ一緒だなシュノンバート。よろしくな」


「はい、こちらこそ」


 どうやらさっき一緒だった先輩も、僕と同じ班に所属されるようだ。相変わらずニコニコしながら、僕の肩を叩いてくる。


 まあ……班に知り合いがいるのは良いけど……このスキンシップは止めてもらいたい。


「あと、作戦前に一度医療班の所に行って、治療してもらってこい。小さいケガでも、狙撃に影響したりするからな」


 腕を組ながら、堂々と言い放つ。それには僕も同感かな。


「よし、行くとするか」


「はい」


 僕達は銃の入ってる荷物を担ぐと、素直に隊長の指示した医療班の施設へと足を運んだ。










「……これは……」


 医療班のところに来てみると、そこは戦場並みに、いや……下手したら戦場より酷い光景だった。


 ケガの痛みに呻く声、忙しなく行き来する医療班、ケガ人は減ることは無く、寧ろ増えていっていた。


 正直なところ、これが企業戦争じゃなく、本当の戦争だったらと思うと……今の光景も相まって、僕は言葉にならなかった。


「……これが戦争だ。よく覚えておけよ」


「はい」


 先輩が、僕の肩をポンと優しく叩きながら、諭すように言う。


 先輩がどういう意図でそう言ったのかは、僕には理解出来ない。


 けれど、先輩が何が言いたかったのかぐらいなら、僕にだって理解出来た。


「さて、俺も腕痛めちまったし、ちょっくら行ってくるか。お前も時間が無いんだから、気になるとこがあったら治してもらえよ」


 そう言うと、先輩は近くにあるテントのうちの一つに入っていった。


 と言ってもな……これといって痛いところは無いし、邪魔にならないようにしてればいいかな。


「あっシュノ君」


「ん?」


 聞き覚えのある声に、僕は振り返る。そこには段ボールを持ったフィリィの姿があった。かなり忙しいのか、頬を赤くし、発汗も激しかった。


「どうしたの? ケガでもした!?」


「いや? 別に大丈夫だよ」


「………」


 なぜかジーっと僕の体を隅々と見始める。……僕はどうすればいいんだ?


「ちょっとごめんね」


「えっ? 痛っ……」


 フィリィはしゃがんで僕の右足を触る。軽く触れられてるだけなのに、足首に鋭い痛みが走った。


「ほら、無理しないの」


「いつの間にケガしたのかな……?」


「自分では気づかなくても病状は悪化したりするから気を付けてね?」


 ため息をつきながらも、手際よく足首に包帯を巻いていく。流石手慣れてるな……。


「はい、いいよ! もう痛いとこない?」


「多分大丈夫だよ。悪いね、忙しいのに」


「ケガした人の治療が仕事の一個だから問題無し、だよ? フフっ」


「……そういえば何か運んでる最中じゃなかったかい?」


「あっ! ごっごめんねシュノ君、わたしいかなくちゃ!」


 段ボールを持ち直すと、フィリィはパタパタと走り去っていった。


 ……なんか転びそうで見ていてヒヤヒヤする。


「なんだ、彼女か?」


 突然背後から声が聞こえ、思わずビクッとなりそうになる。振り向くと、そこには悪戯小僧のような顔をする先輩の姿があった。


「先輩も人が悪いですね。気づいたら声をかけてくれてもいいでしょうに」


「いやーなんか面白そうだからな。コレか?」


 ピシッと小指を立てる。どうしたらそんな解釈になるのだろうか。


「そんなんじゃないですし、それより治療が終わったなら出発しますよ」


「ちぇっシュノンバートノリが悪りーぞ」


「時と場合を考えてるだけですよ」


 ため息一つ残すと、僕は先輩を置いてもう一人の班員と合流し、指定地へと歩き出した。










『全員着いたな。これより作戦を開始する』


 指定地に着くとほぼ同時に、通信機からジェクト隊長の声が響く。


 やはりというか、いつもの軽いノリは無しだ。


『この作戦は、この戦争に大きく関わる可能性がある。全員、気を引き締めろ!』


 隊長からの叱咤激励を受けると、僕達は事前に指示された道を通りながら、ターゲットへと近づいていく。


「先輩、狙撃といってもどういう感じでするんですか?」


 この班の仮の隊長でもある先輩に問いかける。


「狙撃が出来る範囲に近づいて、廃墟のビルから狙撃する予定さ」


 あれ、言ってなかったかな。この戦場は、この前の演習みたいに、廃墟の町が戦場になっているんだ。


「なるほど」


「ま、お前達がミスっても俺の一発でやってやるからよ。心配なさんな!」


 ケラケラと、無垢な子供みたいに笑いながら、僕ともう一人の班員の肩を叩く。本番でもこのテンションなんだね……。


「おっと、敵さんだぜ?」


 敵兵に気づいた先輩が、右手を上げて合図を出す。それに反射的に僕達は足を止める。


 先輩の視線の先を確認すると、確かにそこには敵の隊員が五人ほどいた。恐らくこの辺りを、偵察しに来た部隊だろう。


「んー動く気配ねぇな」


「どうします?」


 この辺りを警戒してるのか、全く動く気配はない。本来なら、狙撃で気絶させるのがセオリーだけど、鎧のせいでそれが出来ないのが厄介かな。


「ニヒヒーこれを使うんだ!」


 先輩は、小さな機械を荷物から取り出した。機械……いや、これを僕は知ってる。


「……ラジコン?」


 そう、ラジコンだった。手頃なサイズの車のラジコンを三つ。これを一体どうするっていうんだろうか。


「まあそんな呆れ顔する前に、よく見ておけってな」


 口笛を吹きながら機嫌良くラジコンを操作を始める。これがまた、器用に敵の近くまでやるんだから驚きだ。


「ここで、こいつだ!」


 何故か腕を振り上げて、豪快にコントローラーのボタンを押す。刹那、ラジコンの一つから、大きな爆音が鳴り響いてた。


「っ!? なんだ!」


「確認してきます!」


 敵隊員は、思ってもみなかった事態に、半ば慌てながら音のする方に確認しに行ってしまった。


 けれど、まだ三人残っている。これじゃまだ身動きを取ることはできない。


「よし、次だ!」


 先輩は、更にボタンを押して爆発音を響かせる。多分だけど、バラバラに配置させたラジコンで爆音を出して、注意を向けさせる作戦なんだろう。


「またか! お前確認してこい!」


「はっ!」


 リーダーと思われる隊員が、一人の隊員に指示を出す。これで残りは二人か。


「うっし、いっけ!」


 残りのラジコンで、最後の爆音を奏でる。これで動かなかったら、少しまずいかな。


「隊長! かなり近くで聞こえますが!」


「仕方ない、確認に行くぞ!」


 敵隊員は、最後のラジコンの音を確認しに行ってしまった。よし、これで誰もいなくなった。


「んじゃ行きますか!」


 ちょっと時間を喰ってしまったけど、まあ支障はないと思う。そう判断した僕達は、辺りを警戒しながら、ゆっくりとターゲットへと向かっていった。













「どうですか?」


「おう、確認出来るぜ。多分あれっしょ」


 あれからしばらくして、僕達は指定された、廃墟の建物に無事に着いていた。


 まだ時間があったので、とりあえずターゲットの状態を確認しているっていうのが現状だ。


「あれか……」


 双眼鏡でターゲットを確認してみる。赤い球体がフワフワと浮かんでいるのが確認出来た。恐らくあれだろう。


「もうちょいゴツいのを考えてたけど、案外スマートだな」


 ……そういう問題だろうか?


『全員着いたか?』


「おう、着いたっすよ」


『よし、これで全員揃ったな。これから狙撃を始める!』


 隊長の一言で、ある意味で僕にとっての、本番が始まった。そんなような気がしていた。


「よし、始めるぞ」


 先輩を皮切りに、僕は銃の準備を始める。威力と命中の良さを重視した銃だ。その代わりに、銃自体が大きいから、動きながらの使用は無理というわけだ。


 まあ、狙撃用だから機動性なんかは関係ないんだけどね。


「用意出来たか?」


「はい」


 微調整を済ませると、僕は先輩に報告する。もう一人の隊員も同様に終わったみたいだ。


「よし、俺達はこの建物にある、このバカデカイ窓から狙撃する!」


 親指でクイッと大きい窓を指しながら言う。ちょうど三人が離れずに狙撃出来るし、ベストポジションだ。


「よし、いくぜ」


 隊長の合図で、僕達は狙撃をする態勢に移る。スコープを覗きながら、更に微調整に移る。これだけでも、狙撃は繊細な作業だということが分かるだろう。


「いけるか?」


「は、はい」


 トリガーに指をかけて、いつでもいけるように準備をする。


「……?」


 ふと違和感を感じた僕は、トリガーにかけている指を見てみる。


「……くっ」


 僕の指は、小刻みに震えていた。いや、指だけじゃない。僕の体は小刻みに震えていた。


「………」


 初めての大仕事に、体の震えは止まらなかった。これをしくじったら、僕達の勝利は無い。その責任の重さが、僕にはとてつもない重圧になっていた。


「くそっ……くそっ……」


 震える体を何とか止めようと試みるけど、どうやっても止まらない。僕としたことが……プレッシャーなんかに押し潰されるなんて……!


「うーっす♪」


「……っ!?」


 僕が覗いているスコープの先、そこにはどアップになっている先輩の顔が見えた。


 ……正直少しビックリした。


「あんま一人で抱え込むなよ? なんのためにチームで来たんだ?」


 いつも見馴れないような、真面目な顔で言う。チーム……そうだ。僕達はチームだったんだ。足りないものは補えばいい。ミスをしたら助け合えばいい。その為のチームじゃないか。


 ここにはチームの二人もいるし、戦場には、僕の信頼出来る仲間もいるじゃないか。


 そう、僕は独りじゃない。


 そう思うと、いつの間にか肩の力は抜け、震えも止まっていた。


「いけそうか?」


「はい」


 もう一度スコープを覗き、狙いを定める。その日の風等のことも考慮して、銃身を整えていく。


『全員、いけるか?』


「うっす」


『よし……狙撃しろ!』


 隊長の言葉を合図にするように――


 ――僕は引き金を引いた。

んー最近出来が悪い……

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