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戦場のローレライ  作者: ゆうき
五章 初の戦場
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27話 決戦の時

「さて、どうすっか?」


 始まったはいいけれど、今回から団体行動で攻めていかなくちゃならない。あまり自分勝手な行動は出来ないな。


『うっし、全員位置に着いたな。まだ敵とは交戦にならないだろうから、辺りに警戒しながら敵陣に攻めてけ』


 通信機からおっさんの声が響く。


 まあ確かにそれが妥当だろうな。とにかく辺りに気を付けないとな。


「………」


 辺りに注意を払いながら、オレ達は前進していく。なんか、戦場特有って感じの緊張感が流れている。


『レグルス! そろそろ敵にぶつかりそうよ!』


「マジで? 早くねぇかおっさん!」



『わかってる! 思ったより早く動いてきたな……中央部隊! こっちから先制攻撃を仕掛ける! 敵さんの度肝を抜いてやれ!』


「了解!」


 先手必勝ってか! よし、一気に攻めこんでやる! そう思ったんだけど……。


「うらうらうらー!!」


「え……!?」


「うぉい!」


 思わずオレとシュノは目を点にしてしまった。他の隊員もポカーンとしてしまってる。


 それもそのはず、バカの代名詞と呼べるバカが、銃を手にしながら一人で特攻していったのだ。


『お、おいどうした?』


「あー……なんかバカが行っちゃいまして……」


『あっっっんのバカ野郎!! 勝手に突っ込みやがって!!』


 シュノの通信機から、おっさんの怒号が聞こえてくる。なんか……握りこぶしを作りながら吠えてるのが目に見える。


『とにかく気付かれちまっただろうし、仕方ないから攻めてけ!』


「お、おう!」


 なんかおっさんの指示が少しおざなりになってるような気がするけど、まあいいだろう。


「あのバカ、ホントにバカだよな全く」


「……ん?」


 シュノの方を見てみると、少し上の方を向いていた。オレもつられて上を向いてみると……。


「――ぁぁぁあああ!!? ぐへっ!」


 ……なんかやたらと真っ黒こげになったバカが、空から降ってきやがった。突然のことに、みんなその場に立ち尽くしていた。


 一体こいつになにがあったんだろうな……?


「おい、大丈夫か?」


「おっおう……それよりレグ! あいつら銃を弾きやがるぞ!」


「なに訳分からんこといってんだお前?」


「全く、只でさえ存在が冗談みたいなのに、更に冗談みたいなこと言わないでよね」


「あんたら鬼か!?」


 ……どうやら戦場でもこのやり取りは変わらないみたいだ。ちなみにバイスの話を要約すると、相手は鎧みたいなものを装備していて、それが銃弾を弾くそうだ。


 ……そんなことありえっかね?


「おっさん、どうするよ?」


『相手がコーティング会社ってことを考えると無くはないな。各員、敵にぶつかっても、無理に攻撃するな』


「……どうやら遅かったみたいだよ」


 シュノの目線の先、そこには、中規模な部隊が銃を構えていた。バイスの言っていた通り、全身に鎧みたいなものを装備している。


『しゃーないな。中央部隊! 余り無理しないで、まずは様子見から入れ! レグルスはまだ本気でやるなよ!』


「オーケー!」


「うっしゃー!」


「了解!」


 オレ達を含めた各小隊は、相手に向かって銃弾を放つ。普通の銃弾とは違って殺傷能力は低いが、それでも生身の体に当たればそれなりのケガはする。


 そんな銃弾を放ったんだが……。


「っ!?」


 弾は確実に当たっている。それなのに、弾は鎧に弾かれて地面に転がっていた。


「マジでか……」


「これはかなり厄介だね」


「なっなっ? 俺様の言った通りじゃねーか!」


 まあバカは放っておいて……こりゃ厄介だな。銃弾が効かないとなると、殴ったりしないとダメか?


「おっさん! オレが行って倒した方が……」


『ダメだ。まだお前の能力は見せるには早すぎる』


「けど!」


『ダメよ! レグルスがダメになったら勝つ術が無くなるのよ!』


 オレの前で、他の隊員達が成す術なく倒されていく。くそ……こんなの黙って見てられるか!


『ちっ、各員負傷者を後衛に下げろ! 前衛! 負傷者を最小限に押さえろ! 反撃の機会は必ず来る!!』


 反撃の機会っつっても……あの鎧がある限りオレ達に勝機はねぇ。どうにかならないのか……?


「ぐあっ!」


 一人、また一人と倒されていく。まだ大怪我を負う前に前線から下がって貰ってるから死者こそ出ていないが、このままだとじり貧なのは明白だ。


「コーティングなのか……それとも別の技術……?」


 オレ達が必死に戦ってるなか、シュノは下がってなにかブツブツと言っていた。


 本来なら、何してるんだと怒るとこだが、ああなると、周りの声が聞こえなくなるんだよなぁシュノの奴。


「……銃弾を防ぐだけのコーティングだ、それなりのエネルギーが必要なはず。そんなエネルギーを、あんな小さな鎧に果たして入れられるのか……? ……!! レグルス! ティルになにか特殊な物が無いか探知してもらえるかい?」


「なるほど……頼んでみる!」


『ティル! なにか変わったエネルギーを感知出来ないか?』


『んー……大雑把に見ても分からないわ。集中して探してみるからしばらくリンク出来ないわよ』


『仕方ないさ。それまでこっちでなんとかする!』


『無理しないでよ!』


『おーまかせってね!』


 そこでティルの声は聞こえなくなってしまった。さて、しばらくはリンク無しで耐えなくちゃならないわけだ。


 ……キツくねぇか!? 普通の相手ならともかく、この相手には厳しいわ!!


「まっ……泣き言言っても仕方ないか!」


 そう言いながら、オレは一つの球体型兵器を取り出す。まあ相手さんの頭にも装備はしてあるから、効くかどうかは疑問だけどな。


「おっさん! あれ使うからみんなに注意しといてくれ!」


『ったく、あまり俺様の指示無しに動くなよ? 各員、レグルスがあれを使う! 注意を払っとけ!』


 おっさんの言葉を合図にするように、オレは兵器を投げ込む。刹那、凄い爆発音と、眩い光が辺りを包み込んだ。


 今のは、閃光弾に爆発音がするような作った特別な閃光弾。殺傷能力は皆無だけど、相手を怯ませるのに都合がいい武器だ。


「ぬおぉぉぉお!? 目がぁぁ!! 耳がぁぁぁあ!?」


「だからなんでお前が喰らってんだよ!」


 バイスのバカが閃光弾をモロに喰らったのか、目と耳を押さえながら、辺りをゴロゴロ転がっていた。


 お前はどんだけ学習能力がないんじゃあ!


「……ん?」


 バカは放っといて相手を確認してみると、特に怯んでいたりしている様子は無く、平然と銃撃を放ってきていた。


「ちっ効いてないのか? うわっと!」


 オレの方にも銃撃が襲いかかってくる。まあ咄嗟に物影にダイブしたから、なんとか回避することは出来た。


 あっバイスもちゃんと物影に投げ込んどいたから無事だぜ?


 けれど、攻撃を避けたせいで、前線から離れてしまった。


「こりゃじり貧だな……」


『レグ、無事かい?』


「おう」


 ちょっと距離が離れてしまったから、仕方なく通信機でシュノと連絡を取る。どうやら今のところは無事みたいだな。


 どうでもいいけど、バイスはオレの近くでまだ転げ回っている。


『ティルから連絡は来たかい?』


「いや、まだだな。とにかく合流しよう。離れ離れになるのは危険だ」


『了解』


「おらバイス行くぞ!」


「ぐほっ! 一々蹴るとか鬼か!」


「はよせい!」


 オレはバイスを引き連れて、シュノのいる前線へと戻った。


「やあ、戦況だけど、かなり不利だね」


「まあ見りゃわかるわ」


 さっきと比べて、確実に隊員の数が減っている。しかも向こうはほぼ無傷。戦況は最悪と言っても過言じゃないだろう。


 この調子だと、他の部隊もかなりやばい状況だろうな。


『レグルス!』


「おっ! 待ってたぜ!」


 遂にというか、ティルの連絡が頭に響く。いやーやっぱティルの声があるのと無いのじゃ天と地の差があるな! 女の子の力ってスゲー!


『調べたけど、微弱だけど、特殊なエネルギーを四つ感じたわ』


「エネルギー?」


『ええ。今隊長にも言ったから、連絡が来るはずよ』


『各員! 相手陣地の近くに特殊なエネルギーを探知した! 恐らく敵のコーティングに関連するものと判断し、破壊に移る!』


 ティルの言う通り、おっさんから連絡が入った。やっぱあの防御にはタネがあったっつーことか!


『これを破壊すれば活路が開ける可能性がある。だが大勢でいくよりも小数の狙撃で破壊したほうがいいと判断した』


「狙撃……」


 咄嗟にシュノの方を向く。こいつの射撃の能力はかなりのものだし、もしかしたら……。


『今から言う奴は一度本部に戻れ。では呼ぶぞ!』


 おっさんは一人一人名前を呼んでいく。だが、その中にシュノの名前は無かった。


『あと……最後にシュノンバート! この十二名で作戦を決行する!』


 ……シュノの奴選ばれやがった! 思わずシュノの方を見ると、本人も少し目を見開いて驚いていた。


「これは予想外だったね……」


『前衛部隊は被害を最小限に押さえろ! 今は我慢の時だ!』


 おっさんの言うことにも一理ある。けれど、持ちこたえるのにも限度っつーものがあるし、なにより目の前で仲間が傷つくのは見ていられない。


「なあおっさん! オレの力が無いと不味くねーか!」


『何度も言うがダメだ。まだ早い!』


「くっ……シュノ! 何か良い手はないのか!? このままだと全滅もあるぞ!」


「……無い訳じゃないかな。隊長が許可を出すならだけどね」


「マジで!?」


「まあね。どうかな隊長?」


『おう、とりあえず聞かせてくれ』


 オレとシュノは一時前線を離れると、物影に隠れた。


「まず最初に、レグの能力は武器具現。これを知られると不味い」


『ああ、そうだ』


「けれど、レグには武器具現の他にも秀でてるものがある」


 オレの秀でてるもの……? 一般の兵隊よりもってことか……? なにかあったか……あっ!


「リンクした時のスピード!」


「そういうことさ。レグには武器具現はしないでスピードだけで戦ってもらう。しかも今は劣勢状態、相手がランカーを投入してきたと勘違いしても不思議はない」


『なるほど、情報アドバンテージを与えた、と見せかけて相手を撹乱させるのが目的というわけか……面白そうじゃねえか! よし、それでいくぞ!』


 シュノの作戦に、オレとおっさんの満場一致で作戦を決行することが決まった。


 しっかしまあシュノは頭が働くよなぁ……オレとかバイスとは大違いだわ。


『各員! レグルスのランカー能力を一部使っていく! 作戦は追って説明していくが、さっきも言った通りまだ防御に徹することを忘れるな!!』


 おっさんの言葉を合図にするように、オレは目を閉じてリンクをする準備を始めていく。


『ティル、いけるか?』


『いつでもいいわ!』


『うっしゃ!!』


 オレはティルと『心の波長』を合わせていく。それに呼応するように、オレの体から、淡い光が発生し始めた。


「よし、いつでもいける!」


「じゃあ僕は一度本部に戻るよ。あまり無理はしないようにね」


「任せとけってな」


 オレはシュノと反対方向、前線に走り出すと、部隊の一番前に立った。


「あの光! ランカーか!!」


「やーやー我こそは天下無双のランカー様だー!!」


『調子乗ってるとケガするわよ!』


『はい……』


 いきなりティルに起こられてしまい、思わずしょんぼりしてしまった。


 い、いいじゃないか! ちょっとやってみたかったんだから!


 まあ事実、油断大敵って言うしな。シュノ達がやってくれるまで頑張るとしますか!!

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