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戦場のローレライ  作者: ゆうき
五章 初の戦場
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25話 オレらしさ

お待たせして申し訳ない……

「………」


 想像もしていなかった爆弾発言に、ここにいるやつ全員が、口をポカーンと空けてしまっていた。オレも例外なく口あんぐりだった。


「……なんだ? オレ達もついに企業戦争に出るっていうそういうドッキリか?」


「わざわざなんでそんな手の込んだドッキリしなくちゃならん」


 ハァ、と額に手をあてながら呆れられてしまった。


 しゃーないだろ? いきなりそんなこと言われたって、はいそうですかなんて言えねぇし……。


 なによりも、このおっさんなら、そんなふざけたこともしそうだから侮れないんだよな。


「んでだ、お前らに集まってもらったのは戦場の流れみたいのを伝えるためのミーティングに参加してもらうためだ」


「ミーティングねぇ」


 案の定というかなんというか、バイスは面倒くさそうに欠伸を一つ。かくいうオレも面倒くさい。


「バカやろう、ちゃんと聞いてないと後々後悔すっぞ」


「全く、ただでさえいつも無計画に突っ走って赤っ恥かくんだから、こんなときぐらい話を聞いておきなよ」


「へいへい、わーってますよ」


 やっぱりどこかやる気が無い。こいつには自覚というものがないんだろうか? いや……無いな、うん。


「今回の相手はコーティングを受け持っている会社だ」


「コーティング?」


「おうよレグルス。まあ会社によってやってることは様々だけど、そのやってることによって戦術も変わってくるんだ」


 ………?


「えっと、どういうことなんですか?」


「つまりだフィリア。コーティング業者ってことは、当たり前だがコーティングをすることが得意だ」


「なるほどね、コーティング会社ってことは、武器とかに特殊なコーティングをしてる可能性が大きいってことかな」


 シュノの鋭い推理に、約一名以外はなるほどね、と大きく頷いていた。


「まあおおまかなことは、同日のミーティングで話す。今日は戦場での戦い方だ」


「戦い方? いつもみたいにオレが前線に〜とかはダメなのか?」


「ダメだな」


 真っ向から否定されてしまった。しょぼーん。


「ランカーが落とされたらアウトだろうが」


「まあそりゃそうか」


 自分で言っときならがバカみたいに思ってしまった。バイスみたいにはならないようにしよう……。


「レグルスも小隊として行動してもらう。あと戦場では色んな小隊と合同して攻めていくからな」


「攻め方とかは決まってるんですか?」


「いや、臨機応変に変えていく。その時はすーばらしー指揮官様の言うことを聞くんだぞー」


 何故か素晴らしいを変に強調するおっさん。いろいろと嫌な予感がするのは、きっとオレだけじゃないと思うんだよな。


「んで、これが相手さんの企業のランカーと『魔女』だ」


 おっさんはポケットから二枚の写真を取り出してオレ達に見せてくれた。そこには、少し気弱そうな女の子と、ショートヘアが似合う活発そうな女の子が写っていた。


 ……うひょー! 二人ともレベルたっかいなぁー!


「鼻の下伸ばさないで」


「サーセン……」


 すっっっげぇ冷たい視線をティルから感じ、即座に平謝りしてしまった。


 いや仕方ないだろ? これは男の性ってやつだ!


「隊長、相手のランカーの能力は分からないんですか?」


「まあな。流石にそこまで情報公開しないだろ」


 普通に考えてそうだろうな。企業戦争には多少情報公開は義務付けられてるとはいえ、そこまでは開かずことはないだろう。


「そしてこれは重要なことだ。今回の戦い、ランカーはレグルスだけだ」


 ……はい?


「……えと、ナニソレドッキリ?」


「んなわけあるか。なんで俺様がそんなことせにゃならん」


 はっきり言っておっさんならやりかねないから怖い。


 それよりも、オレだけしかいないだと……? つーことは……オレが落ちたらおしまいってことか……?


「レグ君?」


「レグルス?」


 初の戦場で責任重大過ぎないか……? ヤバい、考えたら少し気分悪くなってきた……。


「レグルス!」


「レグ君!」


「うおっ!?」


 ティルとフィリィに大声で呼ばれたせいで思いきりビクッとなってしまった。


 え、え? なに? オレなんかしたのか?


「もう、なにボーッとしてるのよ」


「顔色悪いよ? 大丈夫?」


「え? お、おう。別に大丈夫だぜ」


 んー完全に思考に浸っていたせいで全く呼ばれていることに気がつかなかったな。


「日時は三日後。それまでは訓練は流す程度だからな。……まあ緊張するなってのが無理な話だな。だがなレグルス。戦争は一人でやるんじゃないんだからな……あんま一人で抱え込むんじゃねーぞ」


 オレを気遣ってくれたのか、その日のミーティングはおっさんのこの一言で締め括られた。


 初の戦場、思ったよりヤバいことになりそうだ……オレはこのミーティングでそう感じていた。













「………」


 ミーティングが終わってからしばらく、オレは部屋のベッドに横になっていた。


「………」


 さっきからだが、どうしても初めての戦争について考えてしまう。


 だって考えてもみろよ? まだ戦場に立つようになってから日が浅いオレしかランカーがいないんだぜ? 不安にならない方が無理だって。


「……ぬおー!!」


 意味もなくベッドの上でジタバタしてみる。無駄にシーツが乱れちまった……。


「散歩でもいくか……」


 気分転換にと、オレは普段着に着替えて外に出た。


 外に出てみると、既に辺りは暗くなりきっていた。ウダウダ悩んでいる間に夜になっちまっていたみたいだ。


「……んー」


 散歩をしながらも、オレは終始腕を組ながら唸っていた。


 オレなんかに大将……みたいのが勤まんのか? はっきり言って……自信は無い。


 相手さんもランカーは一人みたいだし、そういう面では良いかもしれないが、所詮は気休めにしかならねぇ。


「……ハァ」


 無意識に溜め息が出る。こんな姿、レディには見られたくもない。


「……おっ」


 気づくと大きい公園の前にいた。そういやこの町に来てから、この公園のことは知ってたけど、来たことは無かった。


「……頭切り替えるには丁度いいか?」


 そんな淡い希望を抱えながら、オレは公園の中を歩き出した。


 公園の中は、当たり前だが木が多い。昼間に来ていたら、きっと気持ちよかっただろう。


 いつもなら、こういう所はデートに向いているとか思うけど、今のオレにはそんな余裕は無かった。


「………」


 少し歩き疲れたオレは、無言で公園のベンチに横になった。うん、昼間にやってたら結構ドン引きされることだな。


「………」


 ミーティングからここまで、失敗したらとか、いや今まで訓練したんだからとか、考えても仕方ない仮定が頭のなかでグルグルしている。


 いや、分かってはいるんだ。こんな仮定が無意味だってことぐらい。悩んだって全ては当日になれば明らかになるんだって。


 でも頭で思ったことと心は一致しないわけで。やっぱりウダウダと男らしくないオレが生まれちまっている。


「ぬおー!!」


 また意味もなくベンチの上でジタバタともがいてしまった。


「ぐほっ!?」


 暴れていた場所が悪かったせいか、オレは顔面から地面にダイブしてしまった。


 まあ狭いベンチでジタバタすりゃこうもなりますわなぁ……。


「もー……なにやってるのよ?」


「っ!!?」


 突然のレディの声に、首を仰け反らせて姿を確認する。


 その姿は、あまりにも見馴れた姿だった。


「フィリィ?」


「やっほ」


 その娘はフィリィだった。微笑みを浮かべながら、オレに簡単な挨拶をしてきてくれた。


「へへっ……格好悪いとこ見られちまったな」


「こんなとこでどうかしたのレグ君?」


「そういうフィリィはどうしたんだ?」


「わたし? お散歩だよ。よくこの公園に来るんだ」


 笑顔のままで説明する。全く、夜に女の子一人で散歩なんて危ないのにな。


「そっか」


「それで? レグ君はどうしたの?」


「んにゃ、別になんもねーよ。オレも散歩さ」


「もう……ホントにレグ君ってウソが下手だよね」


 ハァと呆れ顔をするフィリィ。オレって本当にウソが下手なんだろうか? よう分からん。


 実際のとこ嘘だから余計にビックリなんだけどな。


「……フィリィおねえちゃんには敵わねぇな全く」


「フフっ……ならこのおねえちゃんに話してみなよ♪」


 少し誇らしそうに腰に手を当てて胸を張るフィリィ。


 ……あんまり女の子に弱音を吐きたくはないけど、フィリィの好意を無下にするのもどうかと思うし、少しぐらいはいっか。


「……そっか」


「まあな」


 初めての戦場のことで、色々と考えているということをザックリと話すと、フィリィは何故かまた少し呆れていた。


「言い方悪いと思うけどね……」


「おう」


「レグ君らしくない!!」


「ぐほっ!?」


 まさかの鋭い言葉の一撃に、オレは思わず少し驚いてしまった。


「わたしの知ってるレグ君はいつも真っ直ぐで、ウジウジしないで、女の子に優しくて、勝手に走っていくような男の子だよ?」


「………」


 真っ直ぐでウジウジしないで突っ走る……確かにいつものオレだ。


「それにそんなしょんぼりした顔してたら、またティルに心配されちゃうよ?」


 クスッと少しいたずらっ子みたいな顔になる。


 ……それは……嫌だな……。


「そうだな……」


「そうだよ」


 まだ不安はあるし、マイナス的な思考は消えない。けれど、ティルの顔を思い浮かべたら、不思議と少し心が軽くなった。


 ……なんでだろうな……不思議な感覚だ。


「悪いなフィリィ。今日は格好悪いとこばっか見しちまった」


「わたしは気にしてないよ。それより……レグ君は大丈夫?」


「まあ……な。不安が無いと言ったらウソになる」


「……うん」


「けどな、やっぱオレに悩むなんて向いてないよな!」


 そう言うと、フィリィは不安そうな顔から一転、ニコッと笑顔を浮かべてくれた。


「そうそう、レグ君はそうじゃなきゃ!」


「任しときな!」


 まだ不安はある。けど言葉にして自分を奮い立たせる為に、そしてフィリィを安心させるためにこうするのがいいよな?


「……そろそろ夜も更けてきたし戻るか」


「うん、そうだねっ」


 オレ達はさっきとはうって変わったような笑顔を浮かべながら、宿舎へと戻っていった。


 決戦の日は近い――

なんだかんだでレグルスにも弱い一面があるってことですね

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