24話 まず最初に
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ジリリリリ――
「んー……」
頭に突き刺さるような甲高い音で目を覚ました私は、腕を伸ばしてその音の発信元を探した。
「うるさいなぁ……」
半ば叩くように音の発信元である目覚まし時計を止める。
自分でセットしておきながらこんな扱いをするんだもの、人間てつくづく勝手だと思う。
まあ……そんなの誰よりも分かっているつもりなんだけど。
「眠い……」
今は朝の五時を少し過ぎたぐらい。外もまだ太陽は少ししか昇っていないし、聞こえるのは、スズメの楽しそうなさえずりぐらいだった。
ちなみに、いつもの起きる時間より二時間早くの起床だった。
「顔洗おっと」
寝ぼけ眼を擦りながら洗面所に向かう。
鏡には、やはりというか眠そうな私の顔があった。少し髪も乱れていたから、顔を洗ってからサッとブラシでといた。
密かにこの黒髪は自慢でもある。
「さてと……」
目が覚めた私は、キッチンにいくと簡単な朝食を用意した。まあ朝食と言っても、軍から支給されているパンと、この前買ってきたサラダだけ。
もともと少食だから、これぐらいで充分なのよね。
「もくもく……」
パンにかじりつきながら、テレビの電源をつけた。時間が時間だからか、やっているのはニュース番組ばかりだった。
「まあ、なにもやってないよりはマシね」
さっさと食事を済ませると、私はとある事を始めようと立ち上がった。
上手くいくとは限らないし、むしろ失敗の可能性の方が大きいのは事実。
けど、やるって決めたんだから、最初はこれから始めるのが一番……よね?
「とっとにかくやるわよ!」
胸の前で握りこぶしを作って気合いを入れると、私は作業を始めるのだった――
「……眠いわ」
午前八時、オレは目覚ましの音で半ば叩き起こされたような起床をしていた。
「まだ疲れが抜けきってねえな」
ま、そんなに簡単に疲れが取れれば苦労はしないんですけどねぇ。
「飯食わねえとな……だりぃ」
眠いのもあるけど、体がまだ鉛みたいに重い。朝って苦手なんだよな……。
「いいや、適当に外で済ませれば」
着ていた寝間着をベッドの上に脱ぎ捨てると、いつも訓練の時に来ている軍服に着替えた。
「戸締りよし、ガスもよし、いくか」
準備万端。オレは部屋を出ようとドアに手をかけると、勢いよく開けた。
「キャア!」
「うおっ!」
ドアを空けると、思ってもみなかった人物がいた。流石にオレも驚いてしまった。
「びっびっくりしたぁ……」
「ティル?」
そう、ティルだった。もう行く準備をし終わったのか、オレと同じ軍服を着ていた。
……てかこんな朝早くからどうかしたんだろうか?
「どっどうかしたのか? なにかあったのか!?」
「べっ別になにもないわよ!」
いつも通りの反応だったけど、何故か両手を後ろに隠している。なにか持っているのか?
「ね、ねえ。もうごはん食べた?」
「いや、外で済ませようかと思ってさ」
「そっそうなんだ!」
パーっと太陽みたいに顔が明るくなる。
なんか、いまいちティルの言動が読めないなぁ。
「ならちょっと部屋に戻って」
「えっ? ちょっ!」
グイグイと半ば押し込まれるように、オレは部屋へと戻されてしまった。
「んで、どうかしたのか?」
「えっと、その……」
視線を泳がせながらモジモジしている。やはり手はティルの後ろに隠されたままだ。
「ほっほら!」
「え?」
なにか意を決したように、後ろに隠していたものを差し出してきた。
それは、手頃なサイズをした弁当箱だった。
「オッオレに……?」
「………」
顔をリンゴみたいな色にしながら、無言でコクンと頷く。
……ヤベェ、スゲー嬉しい!!
「食べていいか?」
「す、好きにすれば?」
相変わらず素直じゃないなぁ。まあそれがティルらしいって感じだけどな。
とにかく弁当弁当っと♪ オレとティルは小さめのテーブルに向かい合わせで腰を下ろすと、弁当箱を開けた。
「………」
……えっと、弁当箱の中身だけど、ごはんとおかずで半々に分かれてる。
そこまではいいんだ、そこまでは。けど、そのおかずが結構焦げていたりしてるし、ごはんもやたらと水っぽそうだった。
これは……失敗しちゃったのかな?
「……別に嫌なら食べなくてもいいわよ。私も失敗したと思ってるし」
言葉では強がっているけど、明らかにしょんぼりしているのが見てとれた。
全く、オレがティルの作ってきた弁当を嫌がるわけないだろう?
「な〜に言ってんだよ。食べるに決まってるっての」
「あっ!」
ティルが制止しようとしたこど遅かった。オレは箸を手にとって、まず卵焼きを口に運んだ。
「もくもく……」
「………」
ジーっと期待と不安が入り交じったような視線を送ってくる。
感想としては……やっぱ焦げっぽいとか、形がいびつだったりとか、まあ失敗……かな、って感じはする。
けど、オレのために頑張って作ってくれたんだ。そう思うと凄い嬉しかった。
「………」
なにも言わなかったせいか、ティルは片手を胸に当てながら不安そうにしている。
レディを不安がらせるなんて、このレグルスさんにはありえないぜ。
「ん? なーに不安そうにしてんだよ? 食べられるぜ?」
「え……? 無理してない?」
「無理なんかしてないって」
そう言いながらオレはごはんを口に運ぶ。んーなんか水っぽいし、何故かしょっぱいけど食べられないことはない。
「もぐもぐ……」
「ジーッ……」
終始ティルに見られていたけど、オレは普通に弁当を平らげた。
いやーティルの弁当を食べられるなんてラッキーだったなぁ!
「その……なんともないの?」
「ん? なにがだ?」
「その……初めてだったし、明らかに失敗だったし……」
「初めて? マジで?」
オレはちょっと驚いてしまった。初めてでここまで出来るなんて凄くないか? オレなんか全く出来ないから尊敬しちまうわ。
「初めての弁当がオレなんて最高だな! サンキューティル!」
「そっそう! 仕方ないから気が向いたら……その、また作ってあげるわよ」
空っぽになった弁当箱をさっさとしまいながら言うティル。
また作ってくれるのか……嬉しいけど、無理しちゃわないかが心配だな。
「嬉しいけど、無理はするなよ?」
「えっ!? べっ別に心配なんかいらないわよ!」
なんかワタワタと汗を飛ばしながら、右手をブンブン振っている。
まあ無理してないならいいんだけどさ。
「じゃ、じゃあ私戻って準備するから!」
そう言うと、ダッシュするような勢いで部屋を出ていってしまった。
確か軍服着てたし、用意するようなことはないと思うけどな。まあ、あえて指摘はしないけどさ。
「さて、腹も膨れたし、行くか!」
グーっと一つ伸びをすると、オレは元気よく部屋を飛び出した。
いやー朝からラッキーだったなぁ!
「……さて、これで承認したわけだが……首尾の方はどうだね?」
「まだ未熟な所もありますが、実戦に出しても差し支えないかと」
スーツをしっかりと着こなした、堅苦しそうな上司にそう言う。
けっ、こういう丁寧な言葉は性に合わないっての。
「しかしジェクトよ、いくらお前のお墨付きとはいえ、流石に新人一人は些か心許くないか?」
「そこも大丈夫でしょう。奴の『魔女』はあれですから」
あれ、という単語に、目の前の上司の眉がピクッと動いた。
「ほう……噂に聞いていたが、彼の『魔女』がそれとは」
「ですので大丈夫かと」
「よし、分かった。だがお前も総指揮官として出陣してもらうぞ」
……だりぃな。俺ぁそういう頭脳労働苦手なんだよ全く。
まあ、上司に文句を言えないのは社会人の辛さだな。
「何だ、何か不満でもあるのか?」
思わず無意識に溜め息をしちまった。しかも運悪く目の前のこの男に見られちまうとは運がねぇな全くよ。
「いえ、微力ながら全力を尽くしますよ」
「ふむ、期待してるぞ」
その言葉を切れ目とするように、俺は部屋を出ていった。
……しかしなぁ、ああは言ったものの、あいつらを出して大丈夫か? だいぶ様になったとはいえ、まだまだ不安要素はあるからな……。
ウダウダ考えても仕方ねえってか! とにかくこの後あいつらに特別訓練もあるから、その時に伝えるか。
そう結論付けた俺は、訓練をする約束の場所であるドームの地下へと向かっていった。
……暇だな。
「なんで待たされてるんだろな」
壁に寄りかかりながらふぁーと欠伸を一つ。
それもしょうがないだろ。地下訓練施設に来たら、
「ちょっと待ってろ」
と言い残して、ジェクトのおっさんに待ちぼうけを喰らわされてるんだからよ!
「まあ確かに暇よね」
オレの隣で、これまた暇そうに座っているティル。ちなみに、ティルはさっきオレが来てからすぐにここで合流した。用意とやらはすぐに終わったんだろう
しかし、みんないつ来るんだろうな?
「ゴメン、待たせたね」
一番最初に来たのはシュノだった。右肩には縦長に細いバッグみたいなのを担いでいる。
あれに銃でも入っているんだろうな。
「よう。シュノは今日のこと何かおっさんから聞いてないか?」
「詳しくは知らないかな。僕もさっき連絡を受けて来たからね」
シュノと話をしていると、すぐにバイスとフィリィも集まった。
「一体なんなんだこりゃ?」
「さあ……」
二人も何も聞いていないのか首を傾げている。すると、オレ達が入ってきた入口とは逆の入口からおっさんが来た。
「よし、集まったな」
オレ達が揃っているのを確認すると、いつものような適当な顔ではなく、なにか深刻なことを話すかのような……そんな難しい顔をしていた。
「……ついに……お前たちの初陣だ!!」




