22話 願いを乗せて
レグルスの部屋をでてから、私たちはいつも利用している市場に来ていた。
市場に来てからフィリアはずっと食材とにらめっこしながら、ウンウンと唸っていた。
「何悩んでるのよ?」
「うーん、こっちの野菜は安いけど……けど栄養的にはこっちのほうが良いし……っけどお値段も張るんだよね……」
「………」
終始こんな感じにブツブツとにらめっこしてる。
料理が出来る人には食材選びから始まっているってことなのかしら。
何を作るかはわからないけど、私も何か探そうかしら。
そう思って、私は辺りを散策し始めた。
「いつも思うけど、ここって本当にいろいろあるわよね……」
この街の一番の市場というだけあって、お肉や野菜といった食料だけではなく、惣菜や日用品、雑貨屋などがあった。
そんな中、とある雑貨屋の前で足を止めた。
「これなんなのかしら」
そこには、紐みたいなもので作られているリング……みたいなものだった。見たことがないせいで上手く表現出来ないけど。
「お嬢さん、これが気になりますか?」
え? と声の方を見てみると、店の中から女の店員さんが営業スマイルを浮かべながら出てきていた。
「これ、なんですか?」
「これはミサンガというお守りですよ」
これがミサンガ……前にこれをつけると願いが叶うって聞いたことがある。
「紐の色が違うけど、なにか意味があるの?」
「はい♪ 赤は情熱や運動、オレンジには健康などといったものが込められてます」
店員さんは笑顔のまま丁寧に説明してくれた。
これ……レグルスは貰ったら喜ぶかしら……? お値段もお手頃だし、買ってあげようかしら……?
「ねえ、健康とかに関係がある色ってなに?」
「健康でしたら緑ですね! 癒しや優しさ、和みなどが含まれてますよ」
癒しかぁ……最近レグルスは疲れてるみたいだし、あいつにはピッタリかもしれないわね。
「彼氏さんにですか?」
「そっそそそんなんじゃないです!」
クスクスと笑いながら、店員さんが問いかけてくる。
別にレグルスのことを思って買おうとしてる訳じゃないし! その……そう! あいつがまた倒れたら私が大変になるのが嫌なだけだから!
「でしたら緑と……あとは黄色などはいかがでしょうか?」
「黄色?」
「はい。黄色には明るさや笑顔といった意味がありますので」
明るさや笑顔か……レグルスにはいつもそんな感じでいてほしいし、ピッタリね。
「じゃあそれでお願いします」
「かしこまりました。貴女はいかがいたしましょうか?」
「私?」
「はい。彼氏さんとペアルックで♪」
フフッ、とちょっとイタズラっこみたいな笑顔を浮かべている。
ペッペアルック!? なっなんで私がレグルスなんかと?
……最初はそう思ったけど、なんか私も欲しくなってきちゃったのよね……。
って! 別にレグルスとお揃いが良い訳じゃないんだから!
「なっならお願いします」
「かしこまりました♪ でしたら……オレンジとピンクはいかがでしょうか」
「意味はなんなの?」
「オレンジには希望や笑顔などの意味があります。ピンクは……」
「ピンクは?」
「貴女にピッタリの意味ですよ♪」
なっなによピッタリの意味って?? 凄い気になるんだけど!
けど、何回か意味を聞いたんだけど、店員さんに上手くはぐらかされてしまった。
「ま、まあいいかな。じゃあそれでお願いします」
「ありがとうございます♪ 少々お待ちください」
店員さんは店の奥に戻ると、数分もしないうちに戻ってきた。
「お待たせしました。こちらの紙袋が彼氏さんの。こちらが貴女のです♪」
二つの紙袋を交互に差し出しながら、店員さんは説明してくれた。
「だから彼氏じゃないです!」
「フフッ失礼しました。後つける場所にも意味があるので気をつけてくださいね」
「つける場所?」
「はい。利き手は恋愛、反対は勉強、利き足は友情、反対は金運の意味があります」
へ〜場所によっても変わるんだ。ミサンガって奥が深いのね。
「後、ミサンガが切れると願いが叶うといわれるので、肌身離さず付けてくださいね」
「わかったわ。どうもありがとう」
「ありがとうございました〜♪」
店員さんに見送られながら、私は雑貨屋を後にした。
さてと、フィリアはもう買い物が済んだのかしら? とりあえず戻ってみましょ。
「えっとフィリアは……?」
さっきの所に戻ってきてみたけれど、フィリアの姿は無かった。まだ探しているのかしら。
でもどっかに探しにいって迷子になるのも大変だし、とりあえずここで待ってようかな?
「………」
暇。
「やっぱもう少し辺りのお店見に行こうっと」
というわけで、また辺りのお店を見て回り出した。
「……?」
とある店の前で足を止めた。目線の先には、あまり見たことのない色をした亀さんがいた。
「……食べられるのかしら?」
食材を扱っているお店だから、食材なんだろうけど……どこを食べるのかしら?
「あっいたいた! おーいティルー!!」
亀さんの方をジーっと見ていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには両手に買い物袋をぶら下げたフィリアの姿があった。
心なしか、顔がニコニコしているように見えるのは、私の気のせいかしら?
「フィリア、結構買ったわね」
「うん、今日はクリームシチューにしようかなって思って♪ で、ティルはなに見てるの?」
「そうそう、この亀さんって食べれるの?」
亀さんを指差しながら聞いてみると、フィリアは少し複雑そうな表情を浮かべていた。
「あースッポン? これは……美味しくないよ! うん、美味しくない!」
「……フィリア?」
「もう! とにかくティルはダメ! もう帰るよ!」
なんか半分焦ったように、頬を赤くしながらスタスタと歩いていってしまった。
なんだったのかしら……スッポンとかいう亀さん、食べてみたかったな……。
「そうだ、ねえフィリア」
「スッポンはダメなんだからね!」
いやいや、どこまで亀さん引っ張るのよ……でもやっぱりあの亀さん食べたかったな。
って、今はそんなこと関係ないの!
「お願いがあるの」
ギュッと紙袋を抱えながら私はフィリアにお願いする。
もう何も出来ないのは嫌だから。今度こそしっかりレグルスのことをサポートするんだから……紙袋の中にあるミサンガにお願いしながら、そう決意した。




