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戦場のローレライ  作者: ゆうき
四章 決意
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18話 迷い

ずいぶんと間が空いて申し訳ない……今回はティル視点からです~

 レグルスの意識が、私に流れてこなくなった。きっとなにかあったんだろう。そう思うと、私はいてもたってもいられなくなった。


「お、おいティル!」


 強引にカプセルを抜け出すと、隊長が慌てて私を止めようと腕を掴んだ。


「放して!」


「『魔女』が戦場に出るのは許されてねえんだよ!」


「そんなの関係ないわよ! いいから放して!」


「どっどうしたの?」


 なんとか腕を振りほどこうと試みるけど、そこは男女の差のせいで、どうやっても振りほどけなかった。


 レグルスになにかあったのかもしれないのに……!


 そんなバタバタしていると、近くにいたフィリアが、血相を変えて走ってきた。


 うぅ、また私を止めそうな人が増えちゃったわよ。


「おい、フィリアもなんか言ってやってくれ」


「っ!?」


 フィリアに注意が向いた瞬間、腕を握る力が緩まったのを感じた。


 チャンス! そう思った私は、もう一度暴れてみた。


「あっ待てティル!」


 なんとか振りほどくと、戦場に向かって全速力で走り出した。


 いけないことをしているのは分かっている。けどそうしないわけにはいかなかった。


 レグルスになにかあったってことは、シュノンバートとバイスにもなにかあったのかもしれない。初めての知り合いが……レグルスがケガでもしていたら……私の背中に悪寒が走った。


 三人がどこにいるか分からない。だからとにかく辺りを探して走り回る。


 走り出してからものの数分で、私は息が切れかけていた。自分の貧弱さが恨めしかった。


「待ってティル!」


「っ!?」


 私の走ってきた方向から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。フィリアだ。


「ハァ……ハァ……ど、どうしたの急に?」


 怒られると思い身構えていたけれど、フィリアは辛そうなのに、私に優しく問いかけてきた。


 ああ、やっぱりフィリアって優しいんだ。普通なら、ルールを破ったことを怒るのに、フィリアはしなかった。そう思うと、なんだか胸が暖かくなっていた。


「えっ、えっと……」


「大丈夫、慌てないでゆっくりね」


 私も息が切れているせいで、上手く話すことが出来なかった。でも、フィリアは優しく私にそう言ってくれた。


 なんとか私は息を整えると、レグルス達になにかあったのかもしれない、ということをフィリアに伝えた。


「そうだったのね……」


「だから早く無事か確かめないと……」


 また走り出そうとするけど、まだ体力が回復しているわけもない。数歩走ると、私は足をもつれさせて転んでしまった。


「だっ大丈夫ティル?」


「え、ええ」


 うぅ、フィリアに恥ずかしいとこ見られちゃったわね……。


 それより、なぜか足が痛む。痛みがする足を見てみると、膝に擦り傷が出来ていた。


「ダメだよティル、あんまり無理しちゃ……」


「分かってるわ。でも早くしないと……」


 ちょっと痛かったけど、また私は走り出した。けれど、レグルスの居場所はまだ掴めなかった。


「なにか手がかりがあれば……」


「ティル、レグ君とコンタクトを取れないの?」


 私を心配してついてきてくれたフィリアが私に問いかけてきた。


 そうしたいのはやまやまなんだけどね……。


「もう一回やってみたら? 闇雲に探しても仕方ないよ」


「……そうね」


 フィリアの言うことも一理ある。まあダメでもともと。とりあえずやってみましょ。


(レグルス……返事して……レグルス……)


 目を閉じて、いつものリンクをするときのように、レグルスに呼び掛ける。


 けれど、レグルスからは、なにも反応が無かった。


(やっぱりダメね……)


(……ル)


(っ!?)


(ティル……)


 今の……レグルスの声!? 微かにだけど、確かにレグルスの声が聞こえてきた。ってことはレグルスは無事ってことね!


「聞こえたわ!」


「場所分かる?」


「ちょっと待って……」


 もう少しリンクが強くなれば分かると思うんだけど……レグルスの『心の波長』が伝わってこない。


 多分それだけ弱っているんだと思う。そう思うと、気ばかりが焦ってしまう。


「もう! どこにいるのレグルス!」


「落ち着いてティル……深呼吸だよ」


 フィリアに優しく促されると、私は数回深呼吸をした。


 スーハー……スーハー……。よし、もう一回やってみよう。


(レグルス……)


 意識を集中すると、またレグルスの声が聞こえてきた。


 といっても、小さくて何を言ってるからわからない。


 けど、場所はだいたいわかった。後はそこに向かうだけね。


「こっちよ!」


 フィリアに方向を指差すと、一緒に走り出した。


 少し体力も回復したから、多少は走れたけど、やっぱりすぐに息切れしてきてしまった。


 けれど、私は立ち止まらなかった。


 お願いだから、無事でいなさいよねレグルス……。


「ハァ……ハァ……」


 少し走っていると、見知った姿が見えてきた。あれって……。


「バイス! シュノンバート!」


 二人の後ろ姿が見えてきて、今出るだけの大声で声をかけると、二人が振り向いてくれた。


「ティル! お前どうやってここがわかったんだ?」


「そんなことよりレグルスは!?」


 二人のとこに着くと、仰向けで倒れているレグルスの姿があった。


「レグルス! しっかりして!!」


 私は咄嗟にレグルスを抱き抱えて呼び掛けた。


 けれど、レグルスはなんの反応もなく、ぐったりしていた。


 こんなに傷だらけになって……なんでレグルスが……。


「……ティ……ル……?」


「っ!?」


 今までぐったりしていたのに、何かに反応するかのように、レグルスは目を開けて私の名前を呼んだ。


「わりぃな……負けたわ……」


「そんなのいいから! フィリア、なんとかならないの!?」


「う、うん! 医療道具はあるよ!」


 フィリアは持ってきていたバッグから、薬とか何かの機械とか、多分医療用の道具と思われる道具を取り出すと、レグルスの治療を始めてくれた。


「あっシュノ君、通信機あるから、隊長に連絡してくれない?」


「うん、任せてよ」


 シュノンバートはフィリアから通信機を受けとると、隊長に連絡を取り出した。


 その間、フィリアはレグルスの治療をし、なにも出来ない私とバイスは、レグルスのことを見守っていた。


「とりあえず応急処置はしたよ。後は隊長が迎えに来てくれるのを待ちましょう」


「ええ……」


 治療が終わったレグルスを、さっきみたいに抱き抱えた。


 身体中に包帯が巻かれていて、見ていてすごく痛々しい。


 こんなになるまで……戦ってたんだ……。


「連絡したよ。直ぐに救護班が来るって」


「そう……」


 シュノンバートの言う通り、間もなく救護班の人達が車で迎えに来た。


 私達はそれに乗ると、宿舎へと戻っていった――










「てめぇ、どういうつもりだ?」


 俺は戦闘から帰ってきたヴィランを捕まえて問い出していた。


 こいつにはどうしても聞かなきゃならねぇこてがあるからな。


「なに、現実の厳しさを教えたまで……」


「んだと!? なにが厳しさだ! 前々から気に入らなかったが、今度という今度は許さねえぞヴィラン!」


 殴りかかる勢いで、ヴィランの胸ぐらを掴んだ。だが、こいつは澄まし顔を保ったままだった。


「くくっ……お前のような欠点だらけの男が私より上とは……滑稽な話だ……」


「あぁ!?」


「私はお前と話すことは無い。この汚い手を離せ」


「――っ!? この野郎――!」


「その辺で止めねえかバカ野郎が」


 俺は思わず拳を振り上げると、その手を誰かにがっちりと止められてしまった。振り向くと、そこにはバルディアが立っていた。


「バルディア……」


「ったく……すぐに頭に血が上るのはお前の悪い癖だぞ」


「ふっ、バルディアにまで指摘されては格好がつかないなジェクト」


「てめえは黙ってろヴィラン」


 口元に指を近づけて不気味に笑っているのを、バルディアは即座に止めていた。


 その顔は、さっきみたいに呆れ顔ではなく、険しい表情になっていた。


「訓練とはいえ、俺の息子達が世話になったんだ。今度飯でも食いながら、詳しい話を聞かせてもらおうか」


「それは楽しみだな……では私はこれで」


 微笑を浮かべながら去っていった。


 ちっ……気に入らねえ。


「いいのかバルディア?」


「ああ……これはあいつらがなんとかする問題でもある。大人はどうにもならなかったらちょっと手を貸すぐらいがちょうどいいんだよ」


「やれやれ、んなもんなんかね……」


「ガハハッ! てめぇもガキが出来たら分かるぜ」


「へっあのバルディアも丸くなったもんだな」


「ああ。人は変われる……それを教えてくれたのは、紛れもなくあのガキ達だ」


 そう言うと、バルディアはどこか遠い目をしていた。


 まあ、多くは語らないけど、こいつにもいろいろあったんだろうからな……。


「ま、とりあえずは医療班に任せるか」


「だな」












 ピコン、ピコンと無機質な機械音が部屋に鳴り響く。私は無機質な音と、無機質な色合いの部屋にいた。


 目の前には、治療が終わって眠っているレグルスがいる。


 さっきまでの苦しそうな顔はもう無く、今は静かに眠っている。


 本来ならば私はいる必要はないのだけれど、フィリアに頼んでここにいさせてもらっている。


「レグルス……」


 そっとレグルスの手を握ってみる。


 その行動に、どんな意味があるのか、そんなのわからなかったけど、私は無意識にそうしていた。


「私って……ホントに無力よね……」


 レグルスの顔を見ていると、言い様のない悲しみと怒りが襲ってくる。


 レグルスは必至に戦っていた。バイスも、シュノンバートも、フィリアも頑張っていた。


 けれど私は……。


 気づくと、握っている手にぎゅっと力が入っていた。


「……ティル?」


「レグルス!?」


 まだぼんやりしていたけど、レグルスは目を覚ました。


 急なこととはいえ、思わず大声だしちゃったわ……。


「ここは……?」


「宿舎の医務室よ」


「そっか……オレは……」


「いいから……今は休みなさいよ……」


「……わりぃな」


 ゆっくりと目を閉じると、直ぐに寝息をたて始めていた。


 もう……疲れてるんだからちゃんと寝てなさいよね。


「………」


 ベッドの近くに椅子を置くと、それに腰を掛けた。


 ……ここからだと、レグルスの顔がよく見えるわね。


「私に……できることって……なんなのかしら……」


 その日、私はレグルスの顔を見ながら、自分の出来ることを考えながら、眠れぬ夜を過ごしていった――

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