16話 未知の力
この男……オッドアイ? ひょっとしたらランカーか? でもなんでランカーなんかが、この新人の演習訓練なんかに参加しているんだ?
オレはその男をよく観察してみた。年齢は恐らく三十代ぐらいだろう。オヤジやおっさんよりは若そうだ。
髪をオールバックにしていて、インテリがかけそうな眼鏡をかけている。
体格はバイスよりはでかくはないけど、オレよりはでかい。服は当たり前だけど軍服だ。
あと……どことなくキザったらしい感じがして、オレはあまり好きにはなれなさそうなタイプだ。
「あんた……ランカーか?」
「いかにも。私はヴィラン。我らの企業のランカーを勤めるものだ」
やはりどこかすかしたような雰囲気の、ヴィランと名乗る男。
なんだろう……なんか、こいつキライだ。
「それで、そのランカーがなんの用ですか?」
こちらもこちらでそっけない対応をするシュノ。
先輩ランカーにこの対応……なんだかんだで、こいつが一番度胸があるというか、怖いものしらずというか……。
「ふむ、ジェクトから聞いてないのかね?」
「隊長から? 聞いてませんが」
確かに聞いてないな……お楽しみはあるってのは聞いたけど、他にはなにも聞いてない。
「やれやれ、あの筋肉バカは、肝心なことは伝えてないときた……」
「お楽しみはあるとは聞いてるけどな!」
「お楽しみ……また訳のわからない伝え方だ。説明するが、最後まで残った小隊と模擬戦闘をするということだ」
はぁとため息をし、眼鏡をクイッとあげながら言う。
……? つまり、オレ達は、このヴィランと戦うってことなのか? おいおいおっさん……こりゃスゲェお楽しみだなおい!
「なるほどね、あの罠とかホログラムは前座ってことか」
「理解が早くて助かる。だが、本来ならば小隊だが、今回戦うのはランカー君、君だけだ」
思ってもなかった指示に、オレ達は少し首を傾げていた。
ランカー同士の一対一ってことだろうけど……どういうことだ?
「わからないのか? 一般兵が、超人的なランカー相手に真っ向から戦うのは自殺行為ということが。今回は都合がいいことにランカー君がいるから、限りなく本番に近い動きをするということだ」
またため息をしながら言うヴィラン。
なんだか呆れられているみたいだが……ホントに、動きとか話し方とか、いろいろと勘にさわる。
「あと一撃くらったらといって退場になったりはしないから安心したまえ」
「おいおい、俺達はお払い箱か!?」
「まあ普通に考えてそうなんだけどね。一般兵が戦うなんて無茶だし」
方や納得し、方やは不満げだったけれど、大人しくオレ達から離れた。
これなら、オレ達の戦闘に巻き込まれることはないだろう。
「さて、これは所謂余興だが、私は断じて手を抜くつもりはない」
「へっ! オレだってそのつもりさ!」
(手なんか抜いたら承知しないわよレグルス!)
(まっかせなさーい!)
ティルにも応援されたし、こりゃ頑張るしかないよな!
「さあ、かかってこい」
「いっくぜ!」
オレは全力でヴィランに突撃していく。
このランカーの力はなんだかわからないけど、オレだってランカーだ! なんとかしてみせるさ!
「ふっ……無駄な」
「へっ?」
ヴィランに接近する前に、いきなり地面に魔方陣が展開されていた。
いやいや、なんなんだこれ? わからないけど、オレにとって、良いものでないのは確かだよな。
「爆ぜろ!」
「うおっ!」
ヴィランの声を合図にするように、魔方陣は爆発を起こした。
まあ持ち前のスピードを使って右にダイブしたから、巻き込まれることはなかったけどよ……。
なんなんだこの能力? 肉体強化じゃないし、武器使うのでもないし……なら特殊能力か?
しかし……ランカーと戦うのは初めてだからな……やっぱり緊張する。現に、オレの額から嫌な汗が流れている。
へへっ弱気になるなんて、このレグルスさんには似合わねえっての。こっから挽回していくぜ。
「ほう、なかなかのスピードだな……肉体強化か」
「そんなの知るかよ!」
肉体強化がオレのランカーの力かはわからないけど、ここはガンガン攻めていくしかねえよな!
とりあえず見た感じ、ヴィランは格闘が強そうには見えないし、接近戦に持ち込めればいけそうだな。
「ふふっ……接近できればこっちのもの……そうだろ?」
「なに?」
「無駄だと教えてやろう!」
狙いが見透かされた? そんなことを考えてると、ヴィランがすっと右腕を上げた。刹那、ヴィランの周りには小さい光の球体が、いくつも現れた。
「行け!」
「マジか!」
その光の球体達は、オレ目掛けて一直線に向かってくる。
これも持ち前のスピードで避けた……つもりだったんだが、そうはいかなかった。
「なんかついてくるし!?」
まさかのホーミングタイプだったし!
ついてくるのをジャンプしたり、しゃがんだり、ダイブしたりして回避していくけど、相手もそんなに甘くはなかった。
「ふふっ……かかったな。爆ぜろ!」
「うおっ!」
なんとか物陰に逃げた先、そこにはさっきと同じ魔方陣が展開されていた。
くっ……はめられたか! だが気付いたときにはもう遅い。オレは、爆発と光の球体の攻撃をモロに受けてしまった。
(レグルス! 大丈夫!?)
(お、おう)
言葉では強がってはみたものの、結構痛ぇ。
しかも、ヴィランの能力がよく分からない以上、こちらから攻めることもままならない。
(くっ……ここは一端様子見したほうがいいか……?)
今のところ、ヴィランから積極的に攻撃はしてこない。どちらかというと、カウンターみたいな感じで攻撃することが多い。
ならば一回様子見をして、ヴィランの能力を把握するのが、一番手っ取り早いと考えたオレは、廃墟の建物の中に隠れた。
「ふふっ……計算通りだ」
「なんじゃこりゃ!」
建物の中に入ると、そこには、さっきの光の球体みたいなのが、いくつもフワフワ浮いていた。
なんだこりゃ!? トラップか! とにかくここは危険だ!
「そしてそこからの逃走……甘いな新人君」
「え?」
入ったとこから脱出しようとすると、出口のところには、また地面に魔方陣が展開されていた。
マジかよ、ここまで予想通りに動かされてたのかよ!?
「うわぁ!」
「レグ!」
少し離れたとこにいるバイスの声が、辺りにこだまする。それほど大きい爆発だったからだ。
魔方陣が爆発し、それに反応するように、あの球体達も爆発を起こしたみたいだ。
幸い、球体の方は大丈夫だったけれど、魔方陣の方はまたくらっちまったし、こりゃ本格的にマズイか……?
「どうしたのかね新人君? 避けてもいいのだよ?」
「……くっ」
オレの前に悠然と立つヴィラン。ちっ言ってくれるじゃねえか……。
しかしあんなトラップにはめられるとはな……トラップ? まさか……ヴィランの能力は……。
「さあ、止めといこうか」
ヴィランの右腕が上がると、またあの光の球体が現れ、オレへと向かって一直線。またあのホーミングか!
「来るよレグ!」
今度はシュノの声が辺りに響く。いや、ここはちょっと試してみたいことがある。
とりあえずはこの球体を丁寧に回避していく。腹部に来るのを体を捻って回避し、足元に来るのはジャンプして回避する。
「うおっ!」
っと。今まで二、三個ぐらいしかこなかったのに、一気に向かってきやがった。オレはそれを、バックステップすることで回避した。
「かかったな」
ヴィランが不適な笑みを浮かべる。刹那、またオレの足元に魔方陣が展開されていた。しかも、それを待っていたかのように、光の球体は、四方八方からオレに向かってきた。
だが予想通りだった。オレは光の球体が無いところへ向かって、思いきりジャンプした。オレが離脱したころに、丁度爆発が起こった。
なるほどね、予想通りだ。これでヴィランの能力は大方把握出来たぜ。
(いけそうなの?)
(おうよ。相手の能力も大体把握できたしな)
(そっ、そっか。やるじゃない)
なんか珍しくティルに素直に誉めてもらえた。
……なんか嬉しい。
「ほう、あれを回避したのか」
「へっ! もうあんたのトラップには当たらないぜ!」
そう、ヴィランの能力はトラップ。魔方陣も爆発する光の球体も、オレの行動を事前に考えて設置したもの。そしてあのホーミングする球体は、ヴィランが操作してトラップにはめる布石にしていたものだと、オレは推測をした。
……ま、全部当たってるかは知らないけどな。
しっかし嫌らしい能力だよなぁ……ランカーの能力って、その使用者の性格が反映されたりしたりしてな!
「図に乗るなよ新人君。君はまだ私に触れることも出来てないではないか」
「へっオレの快進撃はここからだぜ!」
さて、ヴィランの能力が分かった以上、ここからの攻めることに関してはプランが組み立てやすくなったな。
トラップだということがわかったから、正に接近戦は苦手と睨んだ。ここは攻める!
「いくぜ!」
「無駄だ」
オレが走り出すと、直ぐに魔方陣が展開されていた。
攻めることを予想してたからだろうけど、この魔方陣、爆発まで少しだけ時間がかかることを、ここまでの戦闘で分かっていた。
普通の兵士なら無理だろうけど、ランカー同士でこのタイムラグは致命的ってね!
「当たらないぜ!」
「ほう」
爆発する前に、オレはダッシュでヴィランに接近する。そのおかげで、爆発に巻き込まれることはなかった。
その勢いを保ったまま、さらにヴィランに接近していく。
「ふんっ!」
「よっと」
今度はオレが避難したときにあった、あの設置型の爆発する光の球体を、オレの前に設置してきた。
ま、関係ないけどな。オレはジャンプすることで簡単に回避した。
「よし、貰った!」
完全に懐に潜り込めた。そう思ったが、ヴィランの不適な笑みが引っ掛かった。
「無駄な……」
「おらぁ! ……?」
確実にヴィランに一発入った。そう思った。
だけど、ヴィランの周りには、なにか見えない壁みたいなものがあり、オレの渾身の拳は、それに阻まれた。
「接近戦への対策ぐらい出来ているに決まっているだろう」
「くっ」
「そして……終わりだ」
「ぬおっ!」
その見えない壁から、衝撃波みたいなものが発生して、オレは吹き飛ばされてしまった。
しかも……その吹き飛ばされた先、そこは、さっきヴィランが仕掛けた、爆発する球体がある場所だった。
「しまっ……!?」
遅かった。なにかしようとした時には、もうオレは爆発に巻き込まれていた。
(レグルス!!!)
「「レグ!!」」
みんなの悲痛な叫びが、ぼんやりと聞こえる。煙が晴れると、オレはその場に倒れこんでいた。
(レグルス! しっかりしなさいよ!)
頭の中でティルの声が響いている。
だけど、意識がはっきりしていないオレは、何を言ってるのかあまり判断出来なかった。
「ここまでか」
「………」
「やれやれ、期待の新人と聞いていたが……所詮この程度か」
「くっ……」
きっと今頃ヴィランは、またあの腹立つような笑みを浮かべているんだろう。きっと今頃、みんなオレのことを呼んでるだろう。
だけど、体が動かない。声が出ない。自分の体が自分のじゃないみたいだ。
「所詮『魔女』が出来損ないだからか……」
「なに……?」
「そうだろう? 今まで誰ともリンク出来ず、やっとリンクしてもなんの能力か分からない。立派な出来損ないだろう?」
……あまり理解出来ないけど……この野郎が言いたいことは分かる……。
「バカに……するな……」
「なんだ?」
「ティルを……バカにするんじゃねぇぇぇぇ!!!」
雄叫びを上げながらオレは気力で立ち上がる。こいつ絶対に許さねえ。たとえ同じ企業の人間だろうが関係ない。
「うおぉぉぉぉ!!」
立ち上がった刹那、オレの体から強い光が発生し、オレの右手に光が集まっていった。
なんだこれは……わからないけど、オレの力になってくれ!
光が収まると、オレの右手には、見たことのない武器が生まれていた――
ちょっとお知らせです。現在大学が始まってしまい、あまり執筆に時間が取れなくなりました
しかもストックもなく、結構厳しい状況です。しばらくは週一更新、ストックが溜まればペースは上がると思います
次はまた日曜の二十時更新です




