Side Story 〜おいしいごはん〜
今回の話は、レグルスの代わりにご飯を買いに行ったティルの話です。今回みたいに、時々サイドを織り交ぜていきます。まあ基本的にサイドにシリアスは皆無ですが(笑)
レグルス達と会ってしばらくしたある日、私はとあることで悩んでいた。
「……聞くの忘れたわ……」
今日はレグルスが訓練で疲れたって言ってたから、私が代わりにごはんを買いに来た。
企業を出るときに、色々説明するのが面倒だったけど、まあ今は関係ない。
それでとりあえず商店街や市場が集まってる場所に来た。
それはよかったんだけど、重大なことを忘れていた。
レグルスが何が好きなのかわからない。
それに食べられないものもわからない。もしかしたらなにかアレルギーとかもあるかもわからない。
でも……私にはそんなの関係ないし! ただ私は自分のごはんのついでに、レグルスのも買いに来ただけなんだから! うん!
……そう考えたのはもう30分も前の話。
私なにやってるのかしら……。
「あれ? ティル?」
突然声をかけられて思わずビクッとしてしまった。
声のするほうを見ると、そこにはフィリアの姿があった。
「なんだフィリアかぁ……ビックリしたぁ……」
「あっゴメンね。ティルがなんか困ってそうだったから」
「べっ別に困ってないわよ!」
「ふふっそう?」
何故かクスクスと、口元に手をあてながら笑っているフィリア。
もう、なんなのよ全く……。
「なっなによ?」
「ううん、ティルってほんと可愛いなって思って♪」
可愛いって……もうなんなのよ全くもう! なんだか顔が熱くなっていくような感じがした。
「それで、一人でどうしたの? レグ君はどうしたの?」
あっ、そっか。フィリアならレグルスがなにが好きかわかるわよね。フィリアに聞いてみましょ。
「――ってことがあってね」
「うんうん」
「それで、レグルスってなにが好きなのかなって」
「別になんでもいいんじゃない?」
思ってもみない回答に、私は目を丸くしてしまった。
「え?」
「だってレグ君ならなんでもいいと思うわよ」
「だっ駄目よ! 疲れてるから栄養つけてもらいたいし、折角だから美味しいものを食べてもらいたいし……!」
「ふふっ、やっぱりティルは優しいね」
またクスクス笑われちゃったわ……なんなのよ……。
「ゴメンね、ちょっとイジワルしちゃった」
「なんなのよもう……」
「ゴメンね。レグ君はナポリタンが好きよ」
ナポリタンかぁ……私はあまり食べたことないけど、美味しいのかしら?
「材料なら市場にあるし、一緒に行く?」
「え、えっと……その……」
材料、と言われて私は少し困ってしまった。
実は料理なんて一度もしたことがないから、どうやったらいいかわからないのよね……。
「え、えっと、作ってる時間ないからなるべく出来てあるやつがいいんだけど!」
「そっか。なら商店街にあるかな」
そう言うと、フィリアは私を商店街に連れてきてくれた。
「ここなら揃いそうね」
「そういうこと♪ ちょっと待っててね」
フィリアは笑顔を一つ残すと、何件かのお店を回って戻ってきた。
「はい、こっちがナポリタンで、こっちがコンソメスープのもとだよ。スープの作り方は箱に書いてあるから多分大丈夫だよ」
フィリアが持ってきた袋の中身を見ると、そこにはパックに詰められたナポリタンと、即席で作れるコンソメスープのもとが入っていた。
「えっと、ありがと……」
「ふふっどういたしまして」
なぜかまたクスクス笑われてしまった。
うーんなんで微笑ましそうに笑われるのかしら……?
「じゃあ私、急いで戻るわ」
「え? 残念、お茶でも一緒にしたかったのに……」
お茶もいいんだけどね……でもレグルスおなか空かしてるだろうし、残念そうな顔をしているフィリアには悪いけど、早く戻ってあげないと……。
「レグルス、おなか空かしてると思うから……」
「えへへ、冗談だよ。早く戻ってあげて」
笑顔で手を振りながら、フィリアはどこかに歩いていってしまった。
今度機会があったらお茶するのもいいかも……。
「あっ早く戻らないと」
私は買い物袋を落とさないように握りしめると、レグルスの待っている寮へと走り出した。
寮のレグルスの部屋に戻ると、中に入って私は少し呆れてしまった。
「全く……やっぱ寝ちゃってるわね」
まあ起きてる可能性の方が少ないわよね。
あんなに頑張ってたんだもんね。
「用意出来たら起こしてあげようかな」
私はそっとレグルスに毛布をかけると、お皿を食器棚から二枚取りだし、ナポリタンを盛り付けた。
買ったばかりだからまだ温かい。
後はコンソメスープのもとをお椀に入れて、ポットに入ってたお湯を注いだ。
これでコンソメスープが出来るんだからほんと便利よね。
「あとはお箸とスプーンっと……あっナポリタンならフォークかな」
フォークとスプーンも食器棚の引き出し部分から出して設置する。
これで準備完了!
「さて、起こさないと……」
ベッドで寝ているレグルスの方にいくと、レグルスは幸せそうに眠っていた。
なんか……起こすのを躊躇うわね。
「ほら、起きてよ」
「ん〜……」
試しに揺さぶってみるけど、少し反応しただけだった。
もっと強くしたほうがいいかしら?
「起きなさいよ!」
「ん〜……」
さっきよりも強く揺さぶってみたけれど、やっぱり少し反応するだけだった。全く気持ちよさそうに寝ちゃって……。
……そういえば、レグルスって私を初めて一人の女の子って見てくれたのよね……『魔女』って呪われた肩書きなんか無かったように。
「ほんと変なやつよね……」
でも優しいっていうのは分かる。今までこんな人には会ったことない。ほんと変なやつよ……。
そんなこと考えながら、レグルスの顔をボーッと見ていると、いつの間にかレグルスの顔がかなり間近になっていた。
いっいいっいつの間にこんなに近くにいたの私!?
「っ!!?」
気づくと、レグルスはいつの間にか目を覚ましていた。
それに驚いた私は、反射的に飛び退いてしまった。
「あぁ、悪い。寝ちまってた」
「びっ……ビックリしたぁ……起きるなら起きるって言いなさいよ!」
ほんとビックリした……まあそんなのは無理なのは分かってるけど、反射的にそう言っていた。
「んで、これなんの匂い?」
「え? ナポリタンよ」
あっそうだった。レグルスを起こしに来たのよね。平常心平常心……ってなんで私こんなにドキドキしてるのよ!?
「オレナポリタン好きなの教えたっけ?」
ギクッ。
「そっそうなの? ふっ、ふーんそうなんだ。多分たまたまよ!」
フィリアに聞いたなんて今さら言えないし……なんとか話を反らさないと!
「ほら食べないの?」
「食べるよ」
レグルスをベッドからテーブルに移動させると、私はレグルスの対面に座った。
「これティルが用意したのか?」
「え? その……」
思わずしどろもどろになってしまった。
うぅ、やっぱり手作りの方が嬉しいのかしら……。
「お、お店で売ってたから買ってきたの!」
仕方がないから本当のことを話した。
うぅ、なんか悔しい……やっぱり女の子は料理出来ないといけないのかな……?
「ほら、食べないの?」
「いや、食べるよ」
『いただきます』
私達は仲良く合掌すると、食事を始めた。
即席のものと市販のものだけだったのに、レグルスは終始ウマイって言いながら食べてくれた。
……やっぱりレグルスって優しいって改めて思った。
……ときどき顔が熱くなったような気がするんだけど、気のせいかしら……。
次は……二十日の水曜日の二十時に更新予定です




