9話 ホログラム
後書きにちょっとしたお知らせを載せておきました
ホログラムとの戦闘、仕掛けたのはオレだ。先手必勝っていうしな。
ホログラムの顔面目掛けて右手を振り抜こうと接近した。
「っ!」
「うおっ!?」
だが相手は戦闘用のホログラムだ。そう甘くはない。
ホログラムは体制を低くすると、オレの右腕を掴むと、そのままオレは背負い投げされてしまった。
「ぐっ」
痛って〜……上手く受け身取れなかったぜ……投げ技なんかやってくるなんて想像もしてなかった。
油断していたわけじゃないけど、こりゃ開幕スタートミスっちまったな。
「レグルス! そんな単調なのはホログラムには効かねえぜ!」
半分笑い声が混じったおっさんの声が、部屋に設置してあるスピーカーから聞こえてきた。
ぬおぉぉぉなんかおっさんに言われると腹立つわ〜!!
「っ!」
「あぶね!」
おっさんの声につられてる場合じゃなかったな。
気づいたらホログラムが目の前に接近し、顔面目掛けてハイキックを放ってきた。
へっ甘い甘い♪ それぐらい避けるの造作もないってね。
オレはハイキックを、紙一重でしゃがんで回避した。
そして! ハイキックをしたのは迂闊だったな! その軸足もらったぜ!
「おらっ!」
「っ!?」
ホログラムの軸足となっている左足目掛けて足払いを仕掛ける。
それは上手く決まり、ホログラムの男はその場に倒れた。
「まだまだ!」
「っ!」
「マジかよ!?」
倒れてる隙に追撃しようと右手を降り下ろしたが、ホログラムは右に転がることで回避した。
くっそれは予想外だったぜ……。
「っ!」
「うおぉっ!!」
ホログラムは倒れたまま両足をオレの足に絡め、オレのバランスを崩した。そのままオレは転倒してしまった。
よっ予想外すぎるっての!
「ぐはっ!」
オレが倒れたところを、ホログラムの男はオレの上を取った。
上に完全に乗られ、両腕を押さえられてしまった。
やられる。
そう直感し、目を閉じた。だが、いくら待っても、ホログラムの攻撃はこなかった。
恐る恐る目を開けると、ホログラムの右手はオレの顔面すれすれで止まっていた。
「ここまでだな」
おっさんの声が聞こえると、それを合図にするかのようにホログラムは消えていった。
「おいおい、まだいけるぜ!」
「バカ野郎、組み手なんだからケガしちゃ意味ねーだろうが」
いつもへらへらしているおっさんらしからぬ、険しい顔つきで言われてしまった。
まあ確かにそうだよな……頭に血が上ってたわ。
はぁ、オレもまだまだだな。そんな暗い気持ちを抱えながら部屋を出ると、おっさんとティルが迎えてくれた。
……あれ、シュノがいなくなってるな。
「シュノはどうした?」
「自分の訓練があるからってさっき違う部屋に行ったわよ。あとバイスはもうすぐ戻ってくるんじゃないかしら」
とティル。まあそりゃそうだよな、あいつにはあいつの訓練があるだろうし。
バイスは……うん、どうでもいい。
「とりあえず、お前はランカーなんだからリンクしないと意味ねーぞ」
リンク……まあ確かにおっさんの言う通りなんだけど、イマイチリンクの仕方がよくわからないんだよな。
「なあおっさん」
「隊長だ! もしくは偉大なるジェクト様だ!」
「最後のは意味わからんわ! まあそんなのは置いといて……」
「リンクの仕方がわからねえんだろ?」
突然核心を突かれて、オレは少し驚いてしまった。
まさかおっさんが分かっていたとはな……まあ伊達に隊長じゃないということか。
「そうなんだよな〜どうすりゃいいんだ?」
「自分で考えろ!」
「分かるかぁ!」
そりゃ確かにこの前はリンク出来ましたよ!? でもあん時は無我夢中だったからよく覚えてねぇっての!
「まあ言っちまえば『心の波長』を合わせるんだ」
『心の波長』ねえ……イマイチピンとこないな。
「もっと具体的にはないのか?」
「無いな。コツは自分で掴むしかない。習うより慣れろだ! はっはっは!」
笑いながら次の組み手の準備だと言い残して、おっさんはどこかにいってしまった。
……勝手に訓練するわけにはいかないし、戻るまで休憩してるか……。
だけど……『心の波長』……んーよくわからないな。
考えながら、なんとなしにティルの方を見ると、ティルもオレの方を見ていたみたいで、視線がぶつかった。
「っ!?」
「?」
オレがティルの方を見ると、反射的みたいな感じに、ティルは視線をオレから外した。
心なしか顔が赤い気がするのはオレの気のせいだろう。
「なあ」
「な、なによ」
なんか機嫌悪いのか? 返事がぶっきらぼうなような気がする。
「『心の波長』を合わせるってどんな意味だと思う?」
「さっきから私も考えてるけど、具体的なことはなにも浮かばないのよね……」
だよなぁ……てか『魔女』のティルでわからないんじゃオレなんかには一生わからないんじゃないか!?
「…………」
「レグルス?」
「…………」
「難しい顔しても似合わないわよ?」
「お前も言うようになったな!?」
くっそ〜人が考え事してるのになんて言い様だちくしょ〜……。まあウダウダ考えてもしゃーねえか!
「とにかく戦闘の中で掴むしかねー!」
そうだぜ! ウダウダ考えるのはオレには似合わねえ! とにかく訓練して強くなってコツを掴むしかないな!!
「全く……ケガしない程度にしなさいよ?」
「心配してくれるのか? ありがとな」
「べっ別にそんなんじゃないわよ! アンタがケガしたらサポートする私が大変になるのが面倒なだけよ!」
と言いながら、ぷいっとそっぽ向いてしまった。
なんか怒らせちまったか……うーん、今まで色んな女の子と知り合いになってきたけど、ティルはよくわからないわ。
「おーし、次いくぞレグルス」
「おう」
「んで、なにかヒントは浮かんだか?」
おっさんは顎に手をあてながらニヤニヤしている。
……なんかうぜぇ……。
「さあな。訓練のなかで掴むさ!」
そう意気込むと、オレは再び部屋の中へと入っていった。
「ぐぬぬ……」
あれから何度も組み手をしたが、得られるものはなにも無く、ただただ敗北と、時間だけが過ぎていった。
「今日はここまでだな」
とおっさんに止められてしまった。
無理するなと言いたいんだろうけど……まあわかってんだけどよ……くそ〜悔しい。
「がむしゃらにやっても駄目だ。お前はお前のリンクのコツを考えて掴むしかないぞ」
具体的なのか大雑把なのかよくわからないアドバイスを貰いながら、オレ達は部屋へと戻っていった。
というわけで部屋に戻ってこようとしたが、疲れでフラフラになってしまい、ティルに仕方ないと言われながら付き添ってもらっている。
「わりぃな」
「別にあんたのためじゃないわよ! 目の前で倒れられたら私が困るだけよ!」
なにが困るのかはわからないけど、今はその好意に甘えておくことにしておこう。
「あっあんたご飯どうすんの? そんな疲れてたら作れなくない?」
と心配そうに声をかけられた。まあ自分で用意することもあまりないし、今はさっさと寝たい。
「仕方ないから私がなにか買ってきてあげるわよ」
「そうか? わりぃけど頼む」
「全くしょうがないわね! 先に戻ってなさいよ」
そう言うと、ティルは走って買い物に行ってしまった。
心なしか、ティルの足取りが軽いような気がするなぁ。よっぽど疲れてるのかオレ?
「とにかく戻るか」
一人だと不安だったが、幸いもう近くまで来ていたので自力で部屋まで戻ってこれた。
「ヤバイな……」
昨日も疲れたけど、今日は一段と疲れた……ティルが戻ってくるまで起きてられるか……?
「あっダメだなこりゃ……」
このままだと床で寝ちまいそうだな……とりあえずベッドに横になるか……。
どれくらい寝ていただろうか? オレは部屋の中に漂う良い匂いにつられて目を覚ました。
「っ!!?」
目を覚ますと、そこにはティルの顔があった。
ただ、起こしに来たからかやたら顔が近いことと、やたら驚いていることがやや気にかかった。
「あぁ、悪い。寝ちまってた」
「びっ……ビックリしたぁ……起きるなら起きるって言いなさいよ!」
と、ティル汗を飛ばしながらあたふたしていた。
いやいや、それ起きるのを宣言してる時点で起きてるし。
「んで、これなんの匂い?」
「え? ナポリタンよ」
ナポリタン? なんかオレの好みをピンポイントで突いてきてるけど……あれ、教えたっけか?
「オレ、ナポリタン好きなの教えたっけ?」
「そっそうなの? ふっ、ふーんそうなんだ。多分たまたまよ!」
ふーん……まあいっか。好きなものを用意されて怒るやつなんていないだろうし、むしろドンとウェルカム!
「ほら食べないの?」
「食べるよ」
ベッドから起きてテーブルに行くと、そこにはナポリタンとコンソメスープがあった。
うん、両方とも好物だ。なんでこうもピンポイントなんだろな? 不思議だぜ。
「これティルが用意したのか?」
「え? その……」
なんかしどろもどろになってる。なんか言いづらいことでもあるのか?
「お、お店で売ってたから買ってきたの!」
と顔を赤くしながら力説していた。
いやぁそんな顔を赤くして〜かわいいわ~! まあそんなこと言ったら更に怒られそうだから言わないけどさ。
「ほら、食べないの?」
「いや、食べるよ」
ティルが用意してくれた飯なんだ。しっかり食べて明日に備えないとな。
『いただきます』
二人で仲良く合掌すると、食事を始めた。
あれから数週間後、未だにオレはリンクすることすらままならない状態に陥っていた。
組み手の方は勝てるようになってきたから、少しずつレベルを上げていってるから、少し厳しい。
「今回も駄目か……」
はぁと無意識にため息が出た。
「やれやれ……レグルス、こっちの部屋に入れ」
おっさんはオレを強引に違う部屋に入れると、自分もその部屋に入った。てか一体なんのつもりなんだ?
「なんなんだよ?」
「喜べ! 俺様が自ら組み手してやるぜ!」
はぁ? ぼきぼきと指を鳴らして気合い入れてるのはいいけど、どうしてそうなるのかよくわからないわ。
「とにかく来い!」
「ちっわかったよ!」
なんか釈然としなかったけど、まあやるしかないみたいだな!
オレはおっさんの顔面目掛けてハイキックを放ったが、片腕だけでガードされてしまった。
「軽いぞレグルス!」
「マジかよ!?」
「ほらお返しだ!」
おっさんはガードに使っていない左の拳をフルスイングしてくる。
オレはそれを両腕をクロスしてガードした。
ガードしたのは良い。ここまでは訓練の成果が出てる。だが、ガードした両腕が、想像以上に痛んでいた。
スゲーパワーだな……あのガタイのよさは伊達じゃないか。
「ほらまだまだいくぞ!」
そう言うと、また拳をフルスイングしてきた。オレはそれを体を屈めることで回避した。
前までならここまでで止まってただろうけど、訓練を積んだオレは、そのままおっさんにタックルするという選択を咄嗟に考え、行動に移った。
「おっと! 面白い行動に出るな」
「ぐっ」
奇策に出たつもりだったんだが、おっさんはびくともしなかった。
しかも片手でオレの腕を掴むと、そのまま壁に向かってオレを叩きつけた。
「まあ手加減したから、すぐに立てるだろ」
ぐっ……傷みで一瞬意識が飛んだけど……こんなんで負けてたまるかよ!!
「おいおい! 勝手に勝ち誇るなよ!」
「おっ立てるか。まあここまで訓練してるんだから当たり前か」
「まだまだいくぜ!」
オレはダッシュでおっさんに接近すると、顔面目掛けてパンチを入れようとしたが、その拳はおっさんの顔に衝突する前に止まっていた。
いつの間にか、おっさんはオレの腹に拳をめり込ませていた。
全く見えなかった……その傷みでオレはその場にうずくまってしまった。
「お前はまだガキなんだよ。仲間を守るなんてほざくなんてまだまだ十年早いってことだ」
煙草に火をつけて余裕ぶりやがって……ちくしょうが……。
「がんばってよ!」
!?
「がんばって!!」
ティルの声が聞こえた。
目線だけ部屋の外を見れる窓を見ると、不安そうに胸に手を当てているティルが視界に入った。
そんな不安そうな顔をするなって……そうだよ。オレは強くなりたい……! みんなを……ティルを守りたい!!
「もう立てないか? なら医療班のとこに連れてくか……」
「……なる」
「あん?」
「オレは強くなるって決めたんだぁ!!」
刹那、突然オレの体から赤い光が溢れ始め、オレを優しく包みこんだ。
これは……あのときと同じ!? ティルの方を見ると、ティルも同じように光に包まれていた。
「そうだ! それでいいレグルス! お前の全力を俺にぶつけてこい!!」
「ああ! いくぜジェクト隊長!!」
次の話をすでに予約投稿しておきました。これからは基本的に後書きで次回の更新日を書いておきます
次は14日の木曜日、22時に予約投稿しました




