プロローグ
初めての連載物です。
頑張って完結させますので、宜しくお願い致します。
人が踏み入ることの出来ない、静かな森の奥深く。
そこから、更に進んだその先に、一年中枯れる事のない薄紅色の花を満開にさせた大樹が一本、清んだ泉の畔に鎮座している。
その大樹の根元に一頭の白い大きな虎が眼を閉じ、ゆったりと寝そべっていた。
虎の頭上で、はらり、はらりと二枚の花弁が舞った。
「……時は…満ちた、か…」
虎は花弁が目前に迫ると、ゆっくりとその眼を開き、低い声でそっと呟いた。
虎の吐息で花弁は更に舞い、泉に落ちると小さな波紋が二つ広がった。
「さて、今生では…どうなるものかのぅ…」
呟く虎の背後で、一際紅色が濃い大輪の花が一輪、ポタリと花首から落ち、地面に落ちる寸前、虎は大きく尻尾を揺らして、その花を泉とは反対方向に弾いた。
すると、ボッと音を立てて濃い紅の花は燃え上がり、跡形もなく消え去った。
「此度は上手くいくと良いのだがのぅ…」
虎は泉に浮かぶ二枚の花弁を見つめながら、そっと呟いた。それと同時に、泉がぱぁっと白く輝き、辺りを光で埋め尽くした。
「まぁ…こんなものかのぅ」
光が収まると、泉の畔の大樹の下には白髪のがっしりとした体格の若い男が、鏡のような水面を大樹に背を預けながら、じっと眺めていた。
二枚の花弁は、いつの間にか水面から消えていた。