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第2章-1

 2014年10月10日、日本時間で正午を回って間もない12時12分、地球に住む全住人が悪夢を見た。



 人々は恐怖し逃げ惑った。捕まったら即抹殺されるからだ。



 街中にいる全ロボットが暴走を起こした。清掃ロボ、介護ロボ、巡回警護ロボ、人々が親しく付き合い、見慣れていたありとあらゆるロボットが一斉に殺人機械と化したのだ。



 原因は不明。

 MSを製造している各社が関係者をこぞって原因を突き止めようと動いたが、その途中途中でMSの手にかかり、わからずじまいに終わった。



 頼みの綱である警察、自衛隊も、多くのMSを隊員として採用していたために、当時組織に関わっていた人間は極小数。MSが暴走した瞬間、組織関係者の人間は誰も手に負えなくなり、警察も自衛隊も短時間で無力化した。



 また、こういった噂も流れている。

 偶然なのか、または作為的なのか、各組織にあった、MSの暴走等に備えた緊急停止システムが作動しなかったという。

 つまり、警察も自衛隊も緊急停止システムを起動させようとしたが、まったく作動しなかったというのだ。



 そして人為的なことを確信づける要因がもう一つ。



 MSの普及に伴い、世界的にワイヤレス電源が実用化された。

 電波に電力を乗せて飛ばすということが世の中で一般的になったのである。



 これをMSの稼動のみに利用したのだ。

 どういう意味かは、後に述する。



 MSには専用の無線ネットワーク回線が存在する。

 その回線から様々な情報を得るようになっている。

 時事を取り入れて学習したり、MSに使用されているOSやソフトウェアのアップデートが行われたりしているのである。



 そして、このMS専用の無線ネットワーク回線に、MSを機動させる電力を乗せてあるのだ。



 ワイヤレス電源が実用化される以前は、一般家庭にあるコンセントからの受電により、内蔵しているニッケル水素蓄電池等に充電し、外での活動をしていた。

 それゆえ、蓄電池の時間は(MSの活動内容によりばらつきはあるが)最短では1日ももたずに切れてしまう。

 外でMSが停止するということが、頻繁に起こっていたのだ。



 だが、ワイヤレス電源の実用化により、MSの原動力である電気が、エリア内であれば常時送電され、MSが停止することはなくなった。

 エリアは広範囲で、日本の場合は山地までをも含んだほぼ全域に及んでいるといっても過言ではなかった。



 ただ、送電方法は進歩しても、電柱は未だ存在している。

 一般家庭や商業施設の電力は、昔の方法で送電されているのだ。



 街中にいるMSを稼動させるには、多大な電力が必要となる。

 そして、ワイヤレス電源には送れる電力の容量に限界があった。

 それ故、ワイヤレス電源はMSの稼動電力のみという形で使用されることとなった。

 それ以外の電力の送電方法は依然、高圧電線の鉄塔や、電柱の送電網に頼っていたのだ。



 そして、今回のようなMSの暴走などを想定して備えられていた、ワイヤレス電源の緊急停止システムというものがあった。



 MS専用ネットワーク網を提供し、MSの稼動電力であるワイヤレス電源を常時送電している電波塔施設。



 電波塔施設は、ビルの屋上や空き地、草原の中など、至るところに存在していた。



 大きさは国内に遍く存在するキュービクル式受電設備と同程度。

 縦、横、奥行きがだいたい2メートル程の白い立方体の箱をイメージしてもらえればわかりやすいだろう。

 その屋根の上には、民家の屋根の上などでよく見かける魚の骨状のアンテナを倍加した大きさの、送受電用のアンテナがあった。



 電波塔施設には、MSに稼動電力を与える以外にも役割があった。

 電波塔は隣り合う電波塔からワイヤレス電源の電力を受電し、隣り合う電波塔へとワイヤレス電源を送電しているのだ。

 つまり、電波塔の一つ一つが、見えない電線でつながれた電柱のような役割も持っているのだ。

 そして発電所、変電所等は一般電力とワイヤレス電源で区別されていた。

 ワイヤレス電源専用の発電所、変電所があるのだ。



 故に一般電力が切断されたとしても、ワイヤレス電源は生きているため、MSは動き続ける。まさに今がその状態である。



 ワイヤレス電源の緊急停止システム。

 それは、ワイヤレス電源専用の発電所や変電所等の施設、日本国内だけでも数十万と設置された電波塔施設を一挙にして停止するシステムだ。



 MSの唯一の弱点である動力源の完全な停止。

 しかし、それまでもが失敗に終わったのだ。

 ワイヤレス電源の緊急停止システムも働かなかったのである。



 そして驚くことに、この現象は日本国内にとどまらず、世界規模でほぼ同じ状態だったために、どの国もMSを抑えられなかったという。



 そう。どこの国も、施していた同じ対策が効かず、同じような危機に陥ってしまっているのだ



 つまり、何が言いたいか。



 答えは、裏で誰かがMSを操っているのではあるまいか? ということだ。



<以上は、とあるジャーナリストのノートパソコンに入っていたデータより抜粋したものである>

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