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異土を求めて

作者: 鷺宮トオル
掲載日:2025/11/10

異土イド

夢によって表れる現実、イドでの物語を展開する。

周りの目が怖くてアイスが食べれなくなった若者、デイサービスに赤い靴を履いて来る婆さんに嫉妬して靴を食べてしまう婆さん・・、井戸の水が空になった社会で苦しみをじっと見つめ、水が湧き上がるのを妄想する人々を描く。

異土とは

異土とは、先の仮説で述べた夢の中で人間の本質的な欲望や執着が表れる世界であり、異土は日常の制約を超越し、抑圧された無意識が自在に表現される超現実の空間である。異土の世界では、現実で抑圧された欲望や葛藤が象徴や幻想の形で現れるため、個人は無意識の深層にある真の欲望と対峙しなければならない。異土は自己理解や心理的解放の場でもあり、抑圧された感情が具体化されることで、現実世界との心的な統合は図られるが、全ての欲望や執着から無条件に解放されものではない。なぜならそれらの根源は現実の世界に存在するからである。


苦しみからの解放

叶えられない欲望や執着を苦しみと捉えた場合、それはどのように解決すれば良いのか。この苦しみは一種の情動であり、捉え方次第で変容しうるものである。それらは「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念でまとめられるかもしれない。本書では苦しみに対する解決のヒントを下記の概念を基として提示していく。


能楽

夢幻能における苦しみからの解決方法は、霊的存在が現世の人間との対話や供養を通じて、未練や執着から解放されるプロセスにある。物語の中で、霊は過去の悲劇や未完の願望を語り、共感や慰めを受けることで救済を得る。この供養的行為は霊に心理的な解放をもたらし、最終的に成仏という形で苦しみからの救いが示される。このように夢幻能は、現世と異界の交わりによって魂の安寧を図る構造を持つといえる。


仏教

仏教における苦しみからの解決方法は、「四諦」に基づき、苦しみの根源である煩悩を取り除くことにあると推察する。それは、まず苦しみの存在(苦諦)とその原因である執着(集諦)を認識し、苦しみの終わり(滅諦)を目指すための修行(道諦)を実践する。この修行には、八正道を含む道徳的・精神的な修練が含まれ、煩悩を浄化し、悟りへ至ることで解脱が達成されるとされている。


夢とは

夢とは、これまでの経験や記憶に基づく情動や欲動によって映し出されるイメージであり、妄想として現実を再構築リビルドしたものである。夢は現実であって現実ではないといえる。この仮説は、シュールレアリスムの概念を前提としている。シュールレアリスムとは、アンドレ・ブルトンによって提唱された『超現実』の考え方に基づくものである。超現実とは、現実を超越した想像的な世界や無意識の領域を探求し、現実の枠を超えて潜在的な心理を表現する概念であり、理性と非理性の融合によって生み出される新たな現実を指す。


無意識とは

無意識とは、意図しないものである。夢には、この意図しない無意識の要素がしばしば現れ、無意識の層として浮かび上がる。これこそが、人間の本質的な要素であり、現実からの乖離を生じさせ、超現実という不思議な空間を作り出している根源ではないかと思う。


この無意識の概念は、心理学者カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)の理論を前提とする。ユングは無意識を「個人的無意識」と「集合的無意識」の二層に分け、前者は個人の経験から生じるが、後者は人類共通の普遍的な無意識であるとした。ユングはこの集合的無意識が、神話や宗教の象徴として現れる「アーキタイプ」を内包し、自己の成長や発達において不可欠な要素であると考えたのである。


ユングは、無意識におけるアーキタイプが、人間が社会的存在としてのアイデンティティを形成する上で重要であると考えた。たとえば、英雄や母といったアーキタイプは、社会において道徳や価値観の指標となり、また個人の行動や心理に影響を与えることで、社会の統合や文化の継承にも寄与している。ユングの無意識論は、個々の無意識が社会全体と共鳴し合い、文化を支える基盤の一部となっていることを示唆しているといえる。


社会による影響

教育や社会的規範は、個人が良く生きるための価値観や行動基準を提供し、民族や集団の存続に必要な要素を育む。これにより、個人は「超自我」と呼ばれる内面的な規範を形成し、社会に適応することが求められる。


超自我が強化されると、無意識に抑圧された欲望や感情が生じることがある。夢はこの無意識の表現として現れ、抑圧された欲望や問題を解決し、解放を求めるメッセージを持つことが多い。ユングによれば、夢は個人の内面を探求する手段であり、無意識の側面を理解することで、個人の成長や自己実現が促進される。


超現実という概念は、この欲望を叶えるための空間として機能する。シュールレアリスムにおいて、超現実は理性を超えた無意識の欲望や幻想を表現する手段であり、抑圧された感情や想念が自由に現れる場所である。したがって、超現実は個人が無意識の中で抱える欲望や願望を満たすことができる場となり、自己理解や解放のプロセスを促進する重要な要素となっている。


まとめ

人間の本質は、社会によって抑圧された欲望や感情の中に潜んでいるといえる。教育や文化的規範は、個人に適応を強いる一方で、無意識の側面を隠してしまう。しかし、夢はこの抑圧を解放する手段として機能し、無意識の深層に存在する本質を表出する機会を提供する。


夢の中では、社会的な制約が解かれ、抑圧されていた欲望や感情が自由に表現されることがある。たとえば、夢の中で自分が本当に望むことや、恐れていることに直面することで、自己の本質を認識し、解放される経験が得られる。このようなイメージを描くことは、夢を通じて人間の内面を探求し、個人が持つ本質的な願望や執着を明らかにする方法となる。


また、夢の表現は、個人の内面的な葛藤や成長を示す重要な要素であり、観客にとっても共感や理解を生む機会となる。したがって、夢を通じて人間の本質を表出することは、心理的な解放や自己理解を促進し、他者とのつながりを強化する手段ともなる。社会によってふさぎ込まれた欲望が、夢の中でどのように解放されるかを描くことは、深い心理的洞察をもたらし、人間存在の本質を探求する重要なアプローチとなるであろう。



~じっと見つめること~

じっと見つめること。それは、嫌なことから目をそむけたり逃げ続けたりするのではなく、どんなに残酷であっても相手を理解しようとする行為である。大島渚氏や土本典昭氏がドキュメンタリーの視点で現実を捉え続けたように、見続けることで本質が見えてくる。この姿勢で夢の世界にカメラを向け、人間の本質に迫りたい。本質を見極めるには、自分自身の眼で見るしかなく、その過程から人間の本質が浮かび上がるものだと考える。

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