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第八章 密談の夜



夕刻、都市の中心部はネオンに包まれ、昼間の乾いた光景とは一変していた。遼は、通信会社本社ビルからほど近い高級ホテルのロビーに身を潜めていた。澪から届いた最新の情報によれば、今夜、このホテルの最上階スイートで、永光会の幹部と政界関係者の会合が行われるという。


スーツ姿の警護員が次々とエントランスを出入りし、奥の専用エレベーターへと人々を案内している。遼は従業員用通路を使い、厨房裏の資材用リフトで中層階まで上がると、そこから非常階段を経由して最上階へと近づいた。薄暗い廊下の先、ガラスの防音扉越しに見えるのは、丸テーブルを囲む十数人の姿。中央には、昼間に通信会社の裏口で目撃した国会議員と、教祖の次男が並んで座っていた。


テーブル上には契約書の束と分厚い封筒が置かれ、議員が何度も頷きながらページを繰っている。その横で、黒服の次男が低い声で何事かを囁くと、議員は笑みを浮かべて封筒を手に取った。遼は小型の集音マイクを窓際に仕掛け、その会話をリアルタイムで澪に送信した。


「法改正案は来月の臨時国会で通る。通信回線の規制緩和と、免許更新の優遇措置…全部お前たちのためだ」議員の声がクリアに拾われる。次男は静かに答える。「そのための献金だ。メディア対策も万全だ。逆風が吹けば、こちらの放送局が火消しをする」


やがて別の人物が入室する。大手テレビ局の編成局長だった。彼は議員や次男と握手を交わし、放送枠の確保や世論誘導の具体的手順を話し始めた。その中で、永光会の慈善事業の美談を特集する番組案が提示され、全員が満足げに頷く。


遼は息を潜めながら、その光景を記録した。情報、金、法律、そして世論までもが一つの円卓で取引されている現実。国家の枠組みそのものが、目の前で書き換えられていくかのようだった。彼の中で、闘う覚悟が確固たるものになっていった。



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