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5. 合流

ゼミの終了後、教室の片隅で、陽子と清香は珍しくふたりきりで話していた。

数日前に新一と会話をした清香の態度は、明らかに変化していた――ただし、それは表面には出ない。


「ねえ、清香ちゃん。……彼と話して、どうだった?」


「……興味深かったです。たぶん、誰よりも“純粋”な人ですね」


「純粋、か。そうね。あの子は、混じり気がないの」


陽子は静かに微笑んだ。


「それに……何が“最優先”か、迷いがない。私はそこに、一種の美しさを感じます」


「わかるわ。たとえば、私たちのような人間にとって――選択肢が多いって、むしろ厄介でしょう?常に最善を考え、誤らないように慎重になる」


「でも、“彼に仕える”が最優先にあるなら、選択は自然に収束する。……迷わなくていい」


ふたりの目が合う。

そのまなざしに、誤解も敵意も、優越感もなかった。ただ、()()()()()()()()があった。


陽子は、言葉を慎重に選びながら続ける。


「ねえ、清香ちゃん。これって、依存でも支配でもないと思わない?」


「ええ。……“最上位”があるだけです。他の価値観は、そのままに」


その発言を、ふたりとも“正義”として疑っていなかった。


誤解してはならない。彼女たちは、倫理も理性も持ち続けている。

陽子は今でも学問に献身しているし、清香も客観的な視点を捨てていない。


だが――


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それにより、すべての行動が、新一にとって有益かどうかという基準で再計算されるようになった。


◇◇◇


その数日後、陽子と清香は、新一のもとを訪れていた。


校舎裏の静かなベンチ。新一は、急に呼び出されて少し戸惑った顔をしていた。


「えっと……何かあった?」


「ううん、特別なことじゃないの。ただ、私たち――あなたのことを、少しお手伝いできるんじゃないかと思って」


「“研究”という意味ではなく、“実行”の段階に入ったのよ、新一くん」


清香も静かに頷く。


「私たち、それぞれで動いてたけど、協力すればもっと効果的に、あなたの周囲を整えられる」


新一は困ったように笑う。


「そんな大袈裟なことしなくても、僕は別に……」


そのとき、陽子は少し首を振って言った。


「あなたが望まなくても、最上位だからよ」


その言葉に、新一は反論できなかった。

否定することはできても、止めることはできない。

それは“仕える側の決定”であり、“行為の倫理的正当性”は彼女たちの中で既に完結している。


彼女たちは理性的に考えた末に、()()()()()()()()()()()()()のだ。


◇◇◇


その夜、陽子の部屋ではふたりで計画の共有が進んでいた。

学内で新一に敵意を抱いている者の存在――

彼の研究参加を拒んだ教授のこと――

人間関係の整理と、今後の接触者候補の抽出。


それらは全て、「彼の最上位にふさわしい環境をつくる」ための合理的判断だった。


清香が、ふと口を開く。


「私たち、正しいですよね?」


「もちろんよ。だって、正しさは保ったまま。

それでも、()()()()()()()()()()()()()()それが、今の“選択結果”なの」


そしてふたりは目を合わせ、小さく微笑み合った。


友情でも恋情でもない、ただ同じ頂点を共有する者同士の、連帯だった。

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