67話 ホテルに連れ込む勢い
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俺と九条は今、桜坂駅に向かって歩いている。二人乗りはNGらしいので、自転車は学校に置いてきた
「なるほどな。俺のクリンチを避けれるって言ったのは剣道をやっているからだったのか」
「えぇ、剣道は足捌きが重要な競技よ。アレくらいはおちゃのこさいさいで避けれるわね」
なん…だと?…
九条は煽ったつもりはないだろう。だが俺に火をつけるには十分だ
2人並んで歩いているが、俺は少しずつ歩調を下げて九条の四角に入った
九条は全く気付いてない。おちゃのこさいさいは訂正して貰おう。背後からズルいとかは知らん
「よいしょ」
背後からそっとクリンチを仕掛けるが、一歩踏み出すだけで難なく躱された
なんかクリンチ避けるの慣れてないか?気のせい?…
「…あら、蓮くんってば可愛いところもあるのね」
……俺の非常識な行動にもこの余裕の笑み。ガチおこかと思ったが相変わらずの甘々だ
「そこは怒るところじゃないのか?」
「蓮くんだから怒らないの。覚えておいてね」
「……俺に甘すぎないか」
だいぶ前から気になっていた事を恐らくだが、この時初めて聞いた
「普通よ。このくらいが普通……」
「…そうか?…」
「…そう、そうよ…ほら歩いて。ね?」
それともうひとつ。初めて会った時からの蓮くん呼びも気になっている。何故佐藤と呼ばないのかと…
俺達はこの高校で初対面のはずだ。……でもこの人めっちゃ綺麗だからなんでもいいか
「お、おう。…なぁ話を戻すようでアレだが…剣道の戦績はどんなか聞いてもいいか?」
クリンチなんてしようとするから話が途切れるんだよな。もうやめとこう…
「ええ。1年も2年もインターハイで…………2位……だったわ…」
誇らしい成績を、何故か九条は下を向いて語っていた
「めちゃくちゃ凄いな!おまえ大物だったのかよ」
1年の時に3年をボコれるとか凄いとしか言いようがないんだよなー
「蓮くんに比べたら大した事ないわ」
「俺を比較対象にすんなって………お?」
他愛のない話をしていたら、すぐに桜坂駅近くの商店が並ぶ通りに出た
この辺りになると人が増えてくる。同じ学校の人間もチラホラ居るが大丈夫なのかコレ…
「人多いな」
「蓮くん。…はい、お手をどうぞ」
俺の前に九条の綺麗なおててが差し出された…
「…手がどうした?」
「蓮くんってば迷子になっちゃうでしょ?おててが必要かなって私は思うの」
少しだけニヤけた笑みが新鮮だ。九条はこんな表情もするのか
「いや迷いそうだから言った訳じゃなくてな。同じ学校の生徒もチラホラ居るなって意味な」
「へ…?………そ、そう…」
空回りして恥ずかしくなったのか、生徒会長様は俯いて手を降ろしてしまった
ここじゃなかったら俺はおててに飛びついてたかもしれない…
♢♢♢
「もう駅が見えてきたなー」
それから二人で歩いていると、駅まであっという間だった
「ところで駅で何をするのかしら?」
「ここの駅にはモールが併設されてるだろ。つまりはゲーセンだな」
バイトで貯めた金をこんな事に使っていいのかと思ったが大丈夫だ。少しだけなら
「ゲーセン……行ったことないわね…」
「え?今の今まで一度もか?」
「えっと…中々行く暇が無かったのよ…」
俺もボクシングに夢中だったとはいえ、ゲーセンくらいは行ったぞ?
どんだけ九条は剣道にのめり込んでいたんだ?…
「じゃあ俺がゲーセンのなんたるかを教えてやる」
「え、えぇ。ありがとう」
先輩ヅラしたくなって、気付いたら手を取って駅に直行していた
「あっ…蓮くん…」
後ろから何か聞こえたが、久々のゲーセンに俺は心躍っている。気にする余裕なんてナシ!
「初めてのゲーセンが俺でラッキーだったな」
「ふふ。蓮くん楽しそうね」
完全に付き合ってあげてるお姉さん感が出ている…いや実際そうなんだが
モールの自動ドアが開くと、俺はすぐにエレベーターに直行した
そして九条をエレベーターの中まで連れてくると、狭い密室に2人きりな事に今更気付いた…
「なんだか無理やりホテルに連れ込む勢いね」
「…ッ…」
俺の耳元で、色っぽく艶のある声でそう囁いてきて、危うく"ホテルいこ"とか言うとこだった…
「なんだか無理やり「ゲーセンな。ゲーセン」
「あら、聞こえていたのね」
「聞こえてるって。あと近い」
このやりとりも結構久々だな…
「忘れた頃にまた同じことを言うわね…」
いつかそんな機会が訪れるみたいな空気を出さないで欲しい。そんな日はたぶん来ないからな
「なら忘れないようにしときやす…」
適当に受け流してはいるが、九条は俺の横顔を見つめていた。まるで目の前の獲物を刈り取るかの様に




