46話 餃子
♢♢♢
「先輩ってばちょっと汗掻いてません?走ってきたんですか?」
「ん?あぁ。ちょっと発情期の猫に追われてな」
あの後ルナが追いかけてきて撒くのに大変だった
1回目は抵抗出来ないように四つん這いにさせたし、2回目も愛梨の前だから無抵抗でほじられるしかなかったもんな。そりゃ怒り爆発するわ…
「ふふ。それは災難でしたね。でもよく猫ちゃん撒けましたね〜」
「ん?あぁ。妹が猫を摘み上げて家に持って帰ってくれたんだよ」
今頃は愛梨にお漏らし誤解されたまま慰められてんのちょっとおもしろいな。でも誤解を解こうにもイッたとか言えんし、詰んでるわルナの奴
まぁ性に溺れた罰だな。コレでアイツも懲りたろ
「へぇ〜!先輩ってば妹さん居るんですね〜!どんな子なんですかー?」
「そうだなー。料理がめっちゃ上手くて、俺の事をいつも心配してくれる子……かな?」
うん。休憩室で2人揃ってソファに座って会話とかもうラブコメじゃんこれ
遂にラブコメ始まったか?……いやないか
「へぇ〜。会ってみたいです!今度先輩のおうちにお邪魔してもいいですかねー?」
いやあるなコレ
「ん?あぁ。もちろ………」
ん?…ちょっと待てよ?……直感だが西城とルナを会わせるのはマズイ気がする
「ああーすまん。ゴールデンウィーク中はちょっと誰にも家に上げちゃいけないって言われててな…」
「えぇ〜…残念です……」
「また今度なー」
それにしても妹に会う為とは言え、家に来たいとか言い出すとは。…出会った頃じゃ考えられんな
「分かりましたよー。あっ!そろそろ時間ですね!いきましょー」
「へいへい。よっこらせ」
「もーおっさんですかぁ〜?まだ10代じゃないですかぁ〜」
先にソファから立ち上がって前を歩く西城が笑いかけてくる。コレは素の笑顔だ。たぶん
「すんませんねおっさんで」
♢♢♢
カランカラン
「いらっしゃいませー」
そうやって言うのは毎回俺だけだ。まぁいいが
来たのは白髪のおばあちゃんだ。特徴としては紫色の服を着ていてメガネってところくらいか
「おひとり様ですか?」
「…………」
店内に入った途端、ボケーっと突っ立ってシカトを決め込んでいる…えっ…死んでる?
まぁ棺桶に片足突っ込んでそうだしムリないか
「あの、昇天してらっしゃいますか?お客様」
「んえぇ?なんだって?…」
耳にマンカス詰まってんのかコイツ
「窓際の席にどうぞ。紫外線たっぷりでお肌にいいかと思います」
「えぇ?なに!?聞こえないよ!」
ああー、そーゆう類か。耳が遠いってか。でもそれならそれで気持ちよくなれるな
「おいババア窓際で昇天しとけ。そこだと迷惑だろ」
「誰がババアじゃクソガキ」
聞こえてるんかーい!
でも窓際に行ってくれた。良かったよホントに。めっちゃ遅いけど…
「失礼致しました。こちらメニュー表になります」
とりあえず俺が悪いみたいだし、大人しくしよ
「メニュー表なんて要らないさね……」
なんだ、ババアは昨日のジジイと同じ常連かよ。メニュー表要らない勢多いな……
「ではご注文がお決まりでしたら「ないよ」
ん?注文しないって意味か?ならなんでこのババアは座ってるんだ?……
「注文は無しってことか?」
「ない」
「帰れ」
ココはボケ防止のコミュニティじゃないんだが…それに客じゃないならコイツはもう適当でいいや
「帰る訳ないさね。こっちも商売なんだから」
何言ってんだコイツ。発言がぶっ飛んでやがる。一瞬だけ頭抱えそうになったわ
「ちょっと待て。この喫茶店はババアが商売する場所じゃないぞ?」
「ココならお客さんが入ってくる度に商売ができるからねえ。こんなトコ滅多にないさね…」
人が商売する場所で商売なんてしていいと思ってんのかコイツ……店長はどう思ってるんだ?
視線だけで無口の頼りない店長を見ると、つぶらな瞳で俺の事を見つめてくる。……きっしょ
まぁなんとかするとして、コイツの言う商売ってなんだ?まずそこからだ
「なぁ老害。おまえの商売ってなに?」
「クソガキィ。誰が「老害だろ?おまえの店じゃないんだから」
「…………」
「答えろよ。くだらなかったら追い出してやるから」
「……んえぇ?なんだってえ?」
会話が通じると思ったら急にコレかよ。コイツやってんなー……だるすぎる。もういいか
「よいしょ」
ババアを摘み出す為に、俺はババアの頭を鷲掴みにした。コレが分からせ権限を持ったバイトの力だ
「タロットカード占いさね」
「あぁ。よく見かけるアレか…」
だが俺は鷲掴みにした頭を離さなかった。アホほど興味ないからだ
「ホホホ。その様子だと興味が「ねえよボケナス」
俺がそう言った途端、ババアはしょんぼりしだした
はぁ……しょうがねえな。でも流石にこの歳のしょんぼり顔はもう餃子みたいに見えるな
「おい餃子。……一回だけな…」
「ホホホ。1000円さね」
ねだってくる側が金取るのかよ……




