40話 帰宅
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「送るから家まで案内してくれ」
「えっ…せ、先輩…いつの間に…」
そうそう。いつの間にか目の前にテレポートしちゃってたよ。テヘッ
…って言うのは置いといて俺が戻ってくるのに気付いてなかったのかよ。放心状態ってやつか?……
「ほらいいから早く歩け…」
「…………」
俺がそう言っても西城は脚を動かさない。せっかく上げた顔をまた下に向けて沈黙した
「……明日もあるだろ。ほらいくぞ」
「…別にいいです。冷たい先輩なんて知りません。1人で帰ります……」
頬をぷっくら膨らましてげきおこだ。相変わらず世話の掛かる子だな……
西城は異性に冷たくされる事に慣れてないと見える。あのアホのメンタルを見習って欲しいわ…
「優しいから戻ってきたんだが…」
「どうせ今だけじゃないですか…このまえだって私の事投げたくせに…」
まだあの時のこと根に持ってんのかよ…
「おまえがどっちかにしろって言ったんだからもう大丈夫だっての」
「ほ、ホントですか?…」
「あぁ…………たぶんな」
「ほらぁ!やっぱ多分じゃないですかぁ!また先輩は私に冷たく当たるんですー!」
めんどくせぇなコイツ…でも体調悪いからって態度悪くする俺も大概だしな……
「冷たかったらその都度言ってくれ…頑張って優男くんになってやるからさ。あといいから歩け」
「それです!」
さっきの放心状態はどこいったんだよってくらい元気に人差し指を俺に突き付けてそう言ってくる
「なんだよ、普通だろ」
「普通じゃないです!いいから歩けじゃなくて、"一緒に歩こう。あと足元には気を付けてね!"です」
俺の声真似のつもりか。こんなくだらん会話をしている最中でも時間は進むって言うのに…
何を楽しそうにしてんだコイツは…つーかもうめんどくなってきたな
「分かったよ。一緒に…お!あれUFOじゃね!?」
俺は指を指してガチトーンでそう言った
「え!?どこですか!?どこどこ!」
「よいしょ」
空を見上げる西城を無視して後ろからムリやりお姫様だっこを決める。はい俺の勝ち
「な、何してるんですか?…」
「何してるってお姫様だっこだろうが。みりゃ分かんだろ」
脚を動かす気がないなら俺が動かす。もう主導権は俺のモノ。だだっ子タイムは終わりだ
「は、離してください!こんな同意もなしに触るなんてダメに決まってるじゃないですか!」
「おまえはいちいち誤解招くような言い方すんな」
「し、してません!いいから降ろして下さい!」
言うと思ったわ。勝ち確発言も、冷めた態度もダメと来た。なら交渉だな
「家教えてくれたら考えるわ」
「ッ…ほ、ホントですね?」
「めっちゃホント」
「な、なんですかめっちゃホントって…」
「いいからはよ」
「……………さ、……桜坂駅の近くです…」
「よし分かった…」
すぐ近くだな。だけど俺の家と反対方向だから帰るの遅くなりそ
「あ、あの…降ろしてくれるんじゃ?…」
「何言ってんのおまえ。考えるとは言ったけど、降ろすとは言ってないだろ?」
「んなっ!せんぱい最低ちょう最低!しかも優しくするって約束したのにありえないです!」
なんか微妙に誤解招きそうな言い方すな……
「うるせえぇ!走るぞオラァァ!」
♢♢♢
「おーい、大丈夫かー?何へたり込んでんだよ。おまえ何もしてないだろ」
「うっぷ。気持ち悪いです…縦揺れが激しくて…吐きそうです…」
駅の近くに到着した。美少女が座り込んでめっちゃグロッキーだが俺には関係ない。サッサと帰りたい
「俺はもう帰るからなー。おまえもいつまでもへたり込んでないでサッサと帰れよ〜」
「せ、せんぱい!?こんな状態の女の子を放置して帰るつもりですか!?ありえないです!」
いやもうおまえの家かなり近いだろ。それにここは人通りも多いし安心だな
「明日から好き放題触らしてくれるならまだココに居るわ」
俺がそう言った途端、光の速さで胸元を隠して睨みつけて来た
「さ、最低です。もういいので帰って下さい。ありがとうございました…」
「おう、また明日な〜」
「はい、また明日です」
ドン引き発言成功だな。いや、敢えて乗ったか。そのくらい俺がしんどく見えたんだろうな……
♢♢♢
ガチャッ
鍵を開けてさっくり中に入る。真っ暗で何も見えんて。…それでもリビングから声が聞こえて来た
「おかえり〜」
そう、愛梨の声だ。俺はとうとう家に帰って来た。
時刻は18時54分。結構急いでこんなに掛かった
ルナの声は聞こえない。ようやく帰ったかアイツ
玄関の明かりをつけ、靴を脱ぎ捨てて段差を上がる
人間って靴を脱ぐ時、多くは下を向くよな。俺は明かりをつける時も、靴を脱ぐ時も下を向いていた
だから明るくなって初めて前をみた
「遅かったねぇ〜?れんれんから女の子の匂いがするぅ〜。べぇったり染み付いてる感じのー…」
「…………ただいま…」
「うん。で、こんな時間まで女の子と何してたの?」
段差を上がってすぐの目の前には、ルナが居た




