35話 似た者同士
「落ち着けって顔破裂するぞ」
「破裂なんてしませんってば……先輩が無視するからじゃないですか…」
ソファに脚を乗せて、体操座りで蹲っちゃった。てか靴脱げよ
ん?……今がチャンスじゃないか?頭撫でれるじゃん
バレないようにゆっくり腕を動かして頭まで持っていく。撫でてふにゃふにゃにしてやる
パシッ
だがそんな音と共に俺の夢は砕かれた
「なぁ、離してくれよ。痛いって……」
「せぇんぱぁ〜い?ダメですよ?女の子の体に勝手に触ろうとするなんてぇ。ねぇ〜?」
ニッコリ笑顔でキレ散らかした西城の顔が近い…
うん、これが普通。最近この反応と真逆のヤツが居るから感覚がおかしくなってたわ……
ちゃんとした手順を知っているマトモな人間が側に居て俺も安心だ…
「分かったよすまん。またチャンス見つけて頑張るから許してくれ…」
絶対撫でてやるから覚悟しろ
「全然分かってないじゃないですかぁー!いいですか!私はそんなチョロくないですし…………ってそもそも先輩はなんでココにいるんですか?」
「ん?あぁ。応募したら受かった」
てか面接の時、店長が無言すぎて『なんか喋れよ』って言ったのによく受かったな俺……
「先輩もなんですねぇ〜。でもどうしてココにしたんですか?やりがいある場所なんてこの辺りにはもっとありますよ?」
遠回しにここの喫茶店やりがいないよって言ってるのはこの際置いておこう
てか改めて見るとコイツの私服可愛いな
白のロングTシャツの袖が萌え袖になっていて、腕の形が隠れている。ガッチリガードってヤツだ
でも下は打って変わって短めのプリーツスカートで……….うん。めっちゃ太もも柔らかそう
「あ、あの…脚ばっかり見てないで私の質問にそろそろ……」
足元はピンクの厚底スニーカーか。ほう、コレまたいいセンスしてん「あの〜…」
「あぁ、聞いてるよ。私服似合ってるかどうかだろ?安心しろよ似合ってるから」
「ッ……も、もういいです。……人の話を聞かない先輩なんて知りません。先に行ってます…」
あーやば。怒らせちまった
普通に人が来なさそうでラクだからって言えば良かったのに、先に私服の感想が出ちゃったな。テヘッ
「てかもう開店時間か。俺も行こ」
手に持っているエプロンをぎこちなく結びながら厨房まで戻る
「もうやってんのか…」
厨房で野菜を洗っている姿を見て思う。普段から家でご飯を作ってんだろうな…なんか突然愛梨に申し訳なく思えてきた。……あと頭巾似合ってる
「なぁ、頭巾似合ってる」
あ、ミスった
「……早く行ってください…」
「おう」
俺の方を見ずにはよ準備しろと言ってくる
んー…相当怒ってんなこれ
ん?でも今両手が塞がってるから頭撫でれるんじゃないか?…いや、ガチおこタイムだしやめとこ
気持ちを切り替え、そのまま厨房を通り抜けて店長が居るカウンターまで行く
「店長」
俺がそう言うと、開店準備の手順をざっくりと記したホワイトボードを指差す
俺もやる気ないがこのおっさんもやる気ねえな
佐藤 接客・会計・客席の整理
西城 仕込み・盛り付け補助・ドリンク補助
このくらいなら多分余裕だな。西城が厨房に居るのは料理スキルがあるからか。納得だ
♢♢♢
うん。9時半になっても誰も来ない
うん。つまりめっちゃ暇
暇すぎて店長に会計教えて貰ったけど時間余った
暇だし西城と話にでも行くか
そのまま厨房前のカウンター越しにもたれ掛かって話しかける
「なぁ西城。俺がここを受けた理由言ってなかったよな…」
ここは敢えて普段通りに接する。アレから30分経っても不機嫌なのか、それとも元通りなのか…
「えっとぉ……」
…ゆっくりと顔をあげた西城は目をパチクリして俺を見つめている
「どうした?」
「……あんな態度を2回も取ったのに、先輩は気にしないんですか?」
今ウチにもっとヤバいのが居るから気にならんな
「あぁ。…さっきのは明らかに俺が悪かったし、気にしても仕方ないだろ?」
「そ、そうですか。もしかしたらもう話しかけて貰えないとばかり思っていました…」
少しだけ沈んだ表情を見せてくる。つまり嫌われたんじゃないかと思った訳か
「え、何?おまえ俺のこと好きなの?」
「いえ全然」
「お、おう」
まぁそうだよな。何も起きてないのに好きだったら困るわ。だがコレでちょっとはやりやすくなったろ
「んで、俺がここを受けた理由は客が来なくてラク出来ると思ったからだ」
まさしくダメ男発言。どうだ、おまえがいつも話しかけてんのはこんな奴だ
もたれ掛かりながら視線だけで西城を見ると、目が輝いていた。………なんでなん?
「へぇー!実は私もなんですせんぱい!」
……おまえもかよ
カランカラン
だが扉が開くと同時にベルの音が鳴った
……くるのかよ




