23話 図星突かれたから投げるわ
♢♢♢
「おかえりー」
玄関の扉を閉めた音で、いつも通りリビングから愛梨の声が聞こえてくる
すぐにリビングに直行して俺はアレをやる
「ただいま。愛梨ちょっと耳貸して」
「んー?どうぞー」
ソファに座って少女漫画に集中しているな。
俺の方を見ようともしない愛梨の耳にゆっくりと顔を近づけた
フッー
そう、西城のマネだ。俺はコレがしたかった
「ッちょ!ざこにぃやめてよ!」
体をブルッと震わせた後に抗議してくる
俺と同じ反応とかやっぱり妹だった
「ん?おかわりいります?」
「要らないし!し、死んだらどうすんねん!」
「それはイヤだから辞めとくわ」
そこまで一緒かよ
「てゆーかおまえルナと仲良くなりすぎな。RINE交換してるなんて知らなかったぞ?」
「だってルナちゃん話しやすいんだもん。あんまり雑に相手しないでよ?ざこにぃにイラついて帰っちゃったら元も子もないんだからっ!」
「あいよ」
アイツはかなり俺にイラついてる
でもだからこそ分からせ甲斐があるんだよなぁ
「でももしかして〜?ざこにぃってばルナちゃんが可愛すぎて緊張しちゃってるとかなの〜?」
「ないない」
それにしてもソファとかちょうどいいところに居るなコイツ
「えぇ〜ホントに〜?ざこにぃってば学校で友達居なくてルナちゃんに構って貰えるのが実は嬉しいんじゃないのー?」
「よいしょ」
とりあえず図星突かれたから投げ飛ばすか
ソファに座っている愛梨を後ろから持ち上げて立ち上がる
「……お兄ちゃ〜ん。ごめーんね?てへっ?」
精一杯甘えた声で縋り付く愛梨は無視だな
「何か言い残す事は?」
「……………もう晩御飯作らない!ざこにぃのばぁーか!ばぁーか!」
「今日お母さん帰ってくるだろ?だから投げるわ」
「くぅ!しまった!今日は調子乗れない日だった!」
「他に言い残す事は?分からせタイム始まるぞ?」
下を向いたままの愛梨は全てを諦めたのか、本音を口にした
「……図星突かれて投げる事しか出来ないとかお兄ちゃんよっわぁ〜!まぁじでルナちゃんしか繋がりないんだ〜みーじーめーぷぷぷぅ!」
腰に巻き付けた腕に力を込めて持ち上げる。
「西城が居るっつうの!オラァァァァ!」
愛梨の体は弧を描くように宙を舞い、俺ごと後ろに倒れ込む
「ぐはあっ!」
この後めちゃくちゃバックドロップした
そして母さんの料理は美味しかった。でもまた出張らしい 解せぬ
♢♢♢
「お姉ちゃんご飯出来たよー」
「はーい、いつもありがとねー乃愛」
狭いアパートのキッチンからリビングに移動する。ご飯の時間だ
「「いただきます」」
「学校はどう?友達とかできた?」
「うん、ようやく出来たよ」
食卓にはごはん、千切りキャベツにトマトを添えた簡単なサラダ、みそ汁。
それにハンバーグの香りがいい感じに部屋に広がっていて、私はお姉ちゃんとのこの時間が好き
「へぇ、何がきっかけで?」
「…きっかけは……名前も知らない先輩が嫌われ役をやってくれたから?…」
しまった。先輩のおかけで友達が出来ましたって私言えてない……しかも名前未だに分かんないし
あの日、クラスに戻ったら多くの女子生徒達が私を心配してくれた
『パンツ脱げって強要されたんでしょ?大丈夫?』
でも…先輩はパンツとまでは言っていない。パンツと言ったのは私の発言で、でもそれだけじゃ私だけの噂が立つ
だからあの人はよりインパクトのある発言で自分が噂される立場に持って行ったんだ
「へぇ…ちゃんとお礼いった?」
「…………………言ってない…」
「ちゃんとお礼言いなよ〜。おお、ハンバーグうま」
「うん、分かってる」
私が転校してすぐにパンツ脱げって言われて、すぐにパンツ脱ぐやり◯んだと思われてたかもしれないから、感謝しかない
「それと………私土曜も仕事いれたから」
ハンバーグを持ち上げる箸が止まる
「……えっ?な、なんで?」
「何でって修学旅行費の納入日じゃん。だから暫くは土曜も入んなきゃ」
「ごめんねお姉ちゃん……そもそも私が転校したいなんて言わなかったら…」
「いいってことよ〜。…でも、同じような事にはならないようにね?」
「…私…やっぱりバイトする」
転校して、修学旅行費まで……いくらなんでもお姉ちゃんに負担掛けすぎてる
「バイトする度に変なのに絡まれるからダメだって言ったでしょ」
「で、…でも…私…」
「はぁ………どうしてもっていうならゴールデンウィークだけにしときな〜」
「分かった、ありがとうお姉ちゃん」
よし、バイト探してみよ!誰か頼れる人は…
ちょいオラ系の先輩は居るんだけど…ないなぁ…
……そーいえばあの人、私に興味ないフリしといて不意打ちで"綺麗"とか言ってきたっけ
またからかって分からせちゃお
「なにー?悪い顔しちゃって」
「なんでもー」




