22話 何だおまえかよ
「はぁ……」
疲れのせいか溜息が出てしまった。そんな溜息ですらも過剰に反応し、ルナは俯いたまま震え出した
どうしたんだコイツ…
「何だおまえかよ、乗れよ」
「…えっ、いいの?」
「いいから、ほら」
「うん!乗る!」
突然元気になって自転車の荷台に乗りだしてくる
何だコイツ…
そして俺が自転車を漕ぎ出したと同時に、群衆から批判の声が上がった
「チッ レイパーがよ…」
「聖華の子にも手出してんのかよ…」
よく喋るなあのオカッパ眼鏡とデブ
明日の生徒総会で居眠りでもしてみろ。分からせたるからな
「アイツらぶん殴って来てもいい?」
なんでおまえが怒ってんねん…
「………もうだいぶ離れてるからムリ。んなことよりおまえバイトは?」
「やめたー」
「へぇ〜やめたのかー……って何でだよ」
「ん〜…………愛梨ちゃんとお話ししたいから〜」
いや、それにしても間がありすぎるだろ
「そうか。ところで家どこ?送るから案内してくれ」
「えぇ〜ルナ今日泊まりたい〜!泊まりたい〜!」
「ダメだっつの。今日親帰ってくんの」
「なら別の日ならいいってこと?」
「別の日もダメだな、金輪際ダメ」
「じゃ愛梨ちゃんに聞こ〜。もうRINE知ってるし〜」
仲良くなるスピードヤバすぎだろ。どんだけおまえら意気投合してんだよ…
「あ、愛梨ちゃんも今日はダメって言ってるや。ならしょうがないかぁ」
まぁそうだろうな…
「あと、昨日は囲まれてなかったろ。なんで今日は囲まれてたん?」
「なんかオカッパの人と、おデブの人が立ち止まったら集まって来た。そんだけ」
まぁ人間そんなもんか、でも女学院育ちのコイツがそんなの慣れてる訳ないしなー
「もうこっち来るの辞めとけ…」
「ならこれからはれんれんの家で待っとくわー」
「意味が分からん、何でそうなる?」
「そこ右」
そう言われて右に曲がる
「ねぇれんれん〜、こっちもちょっと聞いていい?」
「なんだよ」
俺の疑問を完全に無視して話続けるやん。ウチに居座る気まんまんだな
「さっき振り返った時〜、めっちゃ疲れた顔してたよ〜?大丈夫ぅ?おっぱい揉むぅ?」
あー…やっぱりまだ疲れた顔してんのか…もう夕刻時なのに
「気にすんな。朝からだから…」
ハンドル握ってなかったらめちゃくちゃ揉みしだいてたぞ
「そっかぁ………ぷぷ…」
「ん?なんか言ったか?」
「着いた!ルナの家ココ!」
気付いたら郊外手前の住宅街にまで来てたのか
白い壁に、屋根の色は見えないが洋風の一軒家だ
小さなバルコニーが特徴的で、玄関前には小さな花壇がある。手入れはルナがしてんのか?
「そーいえば、おまえ親は?」
既に自転車から降りたルナは、俺の言葉で脚を止めた
「海外赴任中で今はルナひとりー」
夕日の中、振り返って笑ってはいるが俺からみたら少しだけ寂しそうに見えた
「送ってくれてありがとれんれん〜。あっ!なにぃ〜?家に親が居るか確認するなんてぇ〜?ようやくしたくなったのぉ〜?」
俺は自転車を置いて、無言でルナの前まで歩いた
「…な、なに?」
「何キョドッてんだよ」
「は?キョドッてないし。ルナに完全敗北した奴にキョドッたりしないし〜」
「それおまえじゃん」
「ぷぷぅ……無様にビクビクしてた癖に〜」
何言ってんだコイツ…顔が赤くなってはいたが、震えては居ないだろ。記憶飛んでんのか
「んな事より、明日学校終わったら休みだろ。泊まりにでも来い」
そう言って、ルナの頭を優しく撫でた。俺にしては初めて妹以外を優しく撫でたかもしれん
「さ、触んな!さっきまで金輪際来るなとか言ってたの急になんだよおまえ!」
「……………」
コイツ…こんな怒ってても撫でる手をどけようとしないな。やっぱ寂しいのか、なんか余裕出て来たな
「…………」
無視して撫でるか
「オイ無視すんな」
「いや?いつ俺の手をどけるのかなって思ってな」
「ッ!…」
すると無言のまま俺の手を払いのけてくる
「次触ったら殺す!」
「ん?頭撫でさせてくれたら抱いてやるけど?」
「……い、言ったな?嘘じゃないもんね?…」
「あぁ、ホントだって」
それだけ言ってもう一度ルナの頭を優しく撫でた
「「…………」」
30秒程撫でた辺りでようやく無言の時間が終わる
「……ねぇ、もういいから。早く家上がってえっちしよ?」
すっかりふやけやがって、誰が抱くか。おまえやっぱり何も変わってねーじゃねえか。家帰ってルナニーしてろ
「じゃ、帰るわ」
サクッとルナから離れて自転車に跨った
「へっ?!なっ!抱いてくれるんじゃ!?」
「お疲れ〜、じゃあなマヌケな完全敗北ちゃん」
分からせるの最高すぎるだろ!おまえは1人で復讐心燃やしときな!
「お、おまえぇ!復讐してやるからなぁ!覚えとけよ!明日また完全敗北させてやる!」
怒りで体を震わせ、下を向いて負け惜しみを言い放つルナを無視して、俺は自転車を漕いだ
「無視しないでよ!今謝れば"3発"で許してあげる!」
離れすぎて何言ってるか分からんが、無視だな




