21話 ちょいオラ気質
♢♢♢
生徒会室で時間を浪費して昼休みが終わった。
だが明日は合法分からせタイムがある。その為なら今日の昼休みなんて要らない
教室の扉を開けて、中に入ると既に5限目が始まっている。だが誰も俺を注意しない、いや無視が正確かもしれん
そのまま椅子に座って、尻目で隣の席のボブっ子ちゃんを見つめる
手帳がどうなったかはまず聞けない。だが"朝何時に来たの?"くらいは聞けるハズだ
「なぁ…朝何時にきた?」
今更だがこの子の名前知らないな……なんだったらルナの苗字も知らない
「えっ?…あ〜…7時30分だよ?」
「そうか…早いな」
危ない、ギリギリだった。…俺が到着したのが7時25分過ぎだから入れ違いだったのか
「どうして?」
「ん?あぁ…何となくだ。特に理由はない」
「そう……」
「あのさ、名前なんて言うんだ?」
本来だったらもっと早く聞かなきゃならない事を、俺は今更になって聞いている
どうせ1年という短い関わりだから聞かなくていい。
そう思っていたが、そうではない事に気付いた
「黒瀬…柚葉…よろしくね」
「あぁ…よろしく」
初めて顔を合わせて会話した。そして1つだけ思った事がある
隣の子が可愛かった件 完
いや終わってない、終わっちゃダメだ
俺はこの子に慎重さというものを教えなければなら
ない。それにはまずチョロ度チェックが必要だ
そうーー俺が。このちょいオラ気質の俺が…
『いつも勉強頑張ってて偉いね、よしよし』
と優しく頭を撫でなきゃならん
チッ 俺にナヨナヨ系男子やらすなやクソが。なんか腹立ってきたな
「おい…」
「…え?何?」
「頭撫でさせろ」
「ッ……ど、どうぞ…」
そのまま椅子を寄せて、頭を撫でようとしたが…
遠すぎるなコレ
頭を寄せている黒瀬をそのまま雑に抱き寄せて、頭をわしゃわしゃと撫でる
そう、俺はココでアレを言わなきゃならん
「い、いつもべん……べん…」
「……は、はい…」
「べ、………便通が良くて偉いな!」
「……は……はい?…」
無理だった。俺にはそんな漫画の主人公見たいな歯の浮いた気持ち悪い事は言えない
あの時俺が言ったのは完全なる煽りで、黒瀬をからかっていたからだ……
ムリだな、もうこのまま無言で黒瀬の頭を撫でよう。目を瞑って無心になって
「「…………」」
たぶん20秒が経過した…………が……………
コイツは一切抵抗しない………決まりだな
黒瀬は大学で遊ばれる。確実に、確実にだ
愛情に飢えているんだ。満たして欲しいんだコイツは
そしてそれは誰でもいいんだろう、よく今まで遊ばれなかったなおまえ……
「もう2週間くらいで中間テストだな、頑張れよ。いい成績取れたらまた撫でてやる」
「…ッ…う、うん!…」
耳元でそう囁いた時、黒瀬は体を震わせて返事をした
そして心なしか顔も赤くなっている……
ダメだ。男に耐性がない上にチョロすぎる。分かってんのかおまえ。もうグラついてんぞ…
抱き寄せた黒瀬をゆっくりと離して俺は溜息を吐いた
分からせないといけない奴が多すぎるわ……
♢♢♢
チャイムの音が鳴り響くと、椅子の引く音がシンクロしてまた北朝鮮現象が起きた
訓練されてるなぁっと思いながら、俺も椅子を引いた
「さて…帰るか…」
黒瀬はチャイムと同時に帰った。恐らく帰ったら勉強だろうな。毎日誰にも褒められずに、それでも続けていく姿勢は尊敬に値する
黒瀬は報われるべきだろう
昇降口から出た時、今日の朝の異常な疲れを思い出していた
アレは何だったのか……病気かなんかか?…
考え事をしながら校門に自転車を進めると、人だかりが校門前に出来ていた
「一緒に帰らないかーい!?」
「連絡先教えてくれ!お願いだお!」
よくやるなぁー。まぁどうでもいいか
群がる男共をすり抜けようとした時、群衆の隙間から手が出てきて、俺の左腕を掴み、手繰り寄せてくる
帰ってゆっくりしたいってのに誰だよ。もう今日はしんどいっての……
「おい触んな、離せ」
俺が不機嫌全開でそう言って振り向いた時、悲しそうに俯くルナが居た
「…そ、そんな事…言わないで…よ…」




