20話 やるわ
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生徒会室の中は狭く、長テーブルを組み合わせて1つの机になっていた
椅子は4つあり、壁際の書棚にはなんか色々詰め込んである……が見ても分からない
ホワイトボードには行事予定が赤いマーカーで書き込まれていて、生徒会長様の机の上にはプリントが積まれている。学生の範疇越してる気がするな
「で、俺はなんで呼ばれたんだ?」
「まぁまぁ、まずは自己紹介からしましょ。私は九条鈴音って言うの。よろしくねギネスくん?」
九条………どこかで聞いた事がある気がする。どこだっけ
「ご丁寧にどうも。れんれんです…」
コイツ俺の事知ってるしもうふざけ倒したろ
仕事任せるの難しすぎるくらい非常識アピールしよ
「それじゃ蓮くん、まずはここにいる2人から紹介するわね?」
クッソゥだめだ!効いてない!
「こちら、書記の鎌田くんと会計の鎌田くんよ。あまり喋らない2人だけど、仲良くしてあげてね」
人物紹介するように、長テーブルに隣りあって座る2人の男子生徒に手を向ける。丸メガネに角刈りだ
「「ウッス」」
そう言って頭を下げる2人の動きはシンクロしていて、しかしそれでも目の前の書類から目を離そうとはしなかった…
「双子…か?」
「そうよ。双子だと会話が最低限でラクだし、なにより"鎌田君"って呼ぶたび2人とも振り向くのよ。仕事の分担も2人で勝手に決めてくれるしコレ以上ないくらいに適任なの」
「…へぇ」
「って言うのは建前ね」
「じゃ本音は?」
「生徒会の最低人数が4人なのに、4人もキャラデザ考えるのめんどくさいって言ってたわ」
「………」
聞かなかったことにしよ
「生徒会の最低人数が「聞こえてる聞こえてる!」
「そ?…じゃあもう無視は辞めてね?」
「……はい」
朝に俺が無視したことまだ気にしてるのか…だがこの人は歪んでいないと信じたい
それに朝に出会った時よりも明らかに態度が柔らかい
俺は視線だけで鎌田くん達を見る。別に怯えている訳では無さそうだ……よかった
「副会長はお休みよ。さて、仕事の話なんだけどね?」
「失礼しました」
お願いを無視してからの非常識退室。決まったな
流石にコイツダメだわって思ったろ
すぐに鎌田君達の前から立ち去って入り口に歩みを進めた
「手帳…」
「…………手帳がどうした?」
かなり焦ったが、平静を装って返事ができた。コイツ見てたのかよ
「隣の席の子の手帳よね?君が床に落としたのって」
コレ完全に脅しだ。お願い聞いてくれないと俺が手帳を盗み見した事バラすぞってか…
「…はぁ、話聞いてから決めるわ」
完敗だな。鎌田君に癒してもらお。もう隣座ろ
俺は鎌田君の隣に席を密着させて、肩がぶつかってもお構いなしに席に座った
「ありがとう。話を聞いてくれる気になってくれて」
「はいはい」
俺が適当に返事をしても、生徒会長さんは全く気にも留めていない
朝のあの威圧感とイラつきはどこにいった?……
「明日には生徒総会があるわね?それは知ってた?」
「へぇ、知らんかった」
「生徒総会は体育館で行われるんだけど、最近は多くの高校が最初からプロジェクター進行の時代なの」
「へぇ、知らんかった」
明後日の方向を向いて適当に返事をする。視線を生徒会長さんに向けても、イラついた様子はない
鎌田君達を横目で見ると、目をまんまるにして尋常ではないくらい驚いている
ーーー何かあったなコイツ
ーーーまるで憑き物が取れたかの様に別人だ
まあ俺には関係ないが
「だから体育館は最初から薄暗いのよ。でもみんなが投射した画面を見る中で、スマホを弄ったり私語をしたり、更には居眠りする人達まで…」
「ん?………つまり俺の役目って…」
「そう!会場整備役をやって欲しいのよ」
あー…この学校に風紀委員とかないんだっけ…
「俺の仇名レイパーだぞ?そんな奴の言うことに従う奴いんの?」
俺がそう言っても首を傾げるだけだった。うん可愛いし綺麗、好き
「そんな奴だからこそ従うんじゃないかしら?…」
「…………」
あー…スマホ仕舞わないと孕ませるぞって言えばいいのか。天才かこの生徒会長
やっべクソ楽しそう!
「やるわ」




