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2話 小悪魔後輩



家を出ると朝の空気は少し肌寒い感じだ。まぁ、まだ4月半ばだしな。


スマホの画面に目をやると、時刻は


「7時46分か。まぁ自転車だし余裕だな」


自転車をゆっくりとこぎ出す。住宅街を抜けて大通りへ。


いつも通りなら、8時15分には学校に着く。ホームルームは8時25分だから正直余裕すぎる。


――と思っていたが…


角を曲がると、道の端に立ち尽くすひとりの小柄なおば…女性。白い帽子と薄手のカーディガンを…

いや服装とかどうでもいいか。


無視して側を通り抜けようとすると声を掛けられる


「あの……ちょっとすみません」


うわしまった…困っている人には優しくすると言う信念が俺の足を止めた。何やってんだ俺のあしぃ!


「桜ノ木公園って、この辺にあるはずなんだけどねえぇ……全然わからなくなっちゃって……」


地図アプリを使って調べればすぐなんだが。…おば…女性が持っている紙の地図は逆さまになっている。


うーん。朝からお笑い芸人登場か…


「付いてきてください」


内心焦りつつも、自分の家の近所だし放っておくこともできず、数分かけて公園まで案内することに。


世間話をしながら公園の入口まで送り届けて任務完了


朝から公園に行く活力があるならもっと別のことに……いや、これ以上は野暮だな。考えんくていい


そしてふと時計を見る。


「……え、8時12分!?」


ちょっと待ってくれ。間に合うかコレ?


いや……急げばギリギリ行ける!


おば…もういいや。軽く会釈をして、自転車にまたがる

 

暫く自転車をこぐと信号が見えてくる。


今はまだ青だ!間に合う!早く!もっと早く!!


「待って下さーい!」


そんな声が俺の耳に届いた。声が若過ぎる、メスガキの可能性を考慮してここはシカトだな。


ーーーそう、シカトしたかった…したかったけど声が可愛い過ぎてムリだった。


俺は急ブレーキを踏んで青信号というご褒美を無視して耳の幸せというご褒美を選んだ。


「よ、よかったです!止まってくれてホントに」


「あぁ…桜ノ木公園なら俺がきた道を真っす「違いますよぉ〜!私の制服見て下さい!ほら!ね?…」


俺は甘ったるく可愛いボイスばかりに全神経が集中していて顔面どころか全体像を見るのを忘れていた。


少し短めのスカートに、ダボっとしたピンクのカーディガンに萌え袖を意識している。


ネクタイはゆるく、わざとらしく傾いていて明るめの茶髪は外ハネを意識してふわっとしていてピンクのメッシュが綺麗に入っている…


「……………」


俺は気づいたーーーこれは小悪魔だと。しかも自分の可愛いさを精一杯引き立たせた努力の小悪魔だ


てか見た目の感想欲しいが為に止めるなって


「あれれ〜?どうしましたか?もしか「じゃ!俺は急ぐんで!」


俺は信号が青に変わった瞬間、自転車を漕ぎ出した。


やっぱりメスガキだったやんけ。どんな確率だよ…


しかし俺は忘れていた。自転車の初速があり得ないくらいクソ雑魚だという事に。


「ちょちょ!待ってくださいって!乗せて下さいよ〜!いいじゃないですかぁ〜」


見かけによらず力はありそうだ。自転車の荷台を両手でコレでもかと言うくらいに引き寄せている。


もちろん顔は笑顔だ。よく崩さずやるな。


ーーーうん可愛いぞこの子…だが何故だ?


「なんで乗せるんだ?」


「いやいや、私の制服見たら分かるじゃないですか!目的地一緒ですよ〜……あはは」


今気づいた……コイツ俺と同じ制服着てんじゃん。

可愛いさアピールでこっち見ろって言ってんのかと思ったわ


少しだけジトっとした瞳に呆れが見える。それと同時に怒りも見える……


だが……俺に対する怒りではない…謎だ


てか朝のコイツの髪のセット時間でこうなってんだから俺が呆れるのは分かるが……まぁいいか


「はぁ…はよのれ…」


「わぁ〜!ありがとうございまぁす!」


両手を擦り合わせ、顔を斜めにして自分の顎下に寄せてニッコリ笑顔だ。


実在するとは思わなかったがまさかコイツーーー


小悪魔系あざと後輩か!!


まさか俺が自転車漕いだ瞬間抱きつくんじゃないだろうな?……


そう思って自転車を漕ぎ出すと、くっつくどころか普通に横向きに座ってくつろいでいた。


まあそりゃそうか


それより学校に遅刻したらマジでヤバい。俺は全力で自転車を漕いで信号を渡り、桜が散った木の下を通る。


「私、今日転校初日なんですよね〜…緊張します」


「へぇ」


聞き手がコレではもう何も言うまい。俺ならこんな返事されたらもう会話終了させるわ


「へぇってそれだけですかぁ?もう始業式始まってから2週間近く経ってるんですよ。私普通にぼっちじゃないですかぁ〜?どうしたらいいと思います?」


「いやそれ俺も」


あっーーーしまった


ついこの寂しさを共感できる人間が居て言っちまったわ。


俺も昨日転校してきて女子が一瞬だけ群がって、一瞬で霧散した事しか記憶にないわ。


しかしこの共感というネタは話題を広げるのにもってこいだ。コイツがそれに気付くか?……


ーーーいや気付く訳ないか


「ぷぷぷぅ〜ぼっちなんですかぁ?」


いや気付いたわ

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