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19話 やっぱり小悪魔だった



俺は甘ったるい声に反応して振り向こうとしたーーだが…


先輩って俺か?…勘違いだったらめっちゃ恥ずかしくないか?


距離が近い訳じゃない、だから俺じゃない可能性が高い…


だが、前みたいに西城が怒ってしまうのは嫌だし失礼でもある


……ゆっくりと振り向くか…


「ぷぷ…な、何ですかその振り向き方!」


俺は想像以上にスローになっていたらしい


後ろを振り向いたら既に真後ろまで来ていて、すぐ後ろには西城の笑顔があった


ツボにハマったのか、笑いすぎて目元の涙腺が緩み涙が出ている


それを人差し指で拭う姿が俺には別の誰かに見えた…


そして窓から差し込む昼下がりの日差しも相まって…そうアレだ。一言で表すなら


ーー綺麗だーー


それだけじゃなかった。瞳の奥にある、誰に向けているのかも分からない怒りが全くなかった


「…………………今…な…なんて?」


「え、なにが?」


「今、…私の事見て綺麗ってい、言いました?…」


「………」


初めて西城が顔を赤らめているのを目にした気がする。それもそうか、普段関わってないし見ないのも当たり前だな


てか口に出てたのか…1番タチ悪いぞ俺。人を勘違いさせる言動は良くない


俺はただ、卒業までに気付いた範囲で危うい奴らを分からせて更生させるだけ


「あ、あの…先輩?…」


「あ〜…うん。日差しが綺麗だなぁ!そうそう見ないぞこんなの」


「えぇー!ホントに日差しなんですか〜?」


そう言って俺の肩をチョンチョン摘んでニッコリ笑顔だ。かわーーー


「…ッ…」


だが俺は戦慄した。既に瞳の奥に怒りが見え隠れしていたからだ…どうなってんだ…?なにが起きてる


ルナが1番ヤバいかと思ったが西城が1番かもしん


俺の歪み度ランキングが一瞬で更新されたぞ…


まさか裏の顔とかある?…いや、それは…


少しだけ覗くように視線を合わせると、俺の袖を摘み、ウィンクして見上げてくる。うんないな


怒りも見えなくなった。普通の瞳だな…ただ可愛いだけの後輩にグレードダウンした


いや、…ルナ見たいに丸出しな訳ないか。アイツが分かりやすかったんだよなぁ…そんな事よりも…


「あーアレだ……その、この前の屋上の踊り場で…俺が叫んだ事なんだが本当申し訳なかった!」


俺は"綺麗"と言ったのか、言ってないのか。

という話題から逃げつつも頭を下げて謝罪した。


本当に申し訳ないと思っていたからで、突然あんな事を言われたら確かに怖いだろうしな…


「こちらこそ申し訳ありません…先輩の居場所を奪うような事をしてしまって…」


「「…………」」


そうしてお互い頭を下げて無言の時間が続く


だが気まずくはない、俺と目の前の西城は今、ようやく一歩距離が近づいたのかもしれない


だが一歩どころではなかったらしい


「せぇーんぱぁ〜い!さっきの綺麗って言うのなんですけど?ホントに日差しですぅ?」


そう、めっちゃ近い。俺の横に並んで、上目遣いを意識して見上げてくる。袖を掴んでぷらぷら揺らしながらだ…


ビジュアルの良い顔が近いのがこんなにも照れ臭いとは……


「あぁ…そうそう、日差し…日差しだな」


「またまたぁ〜、照れちゃって可愛いですね!」


たぶんかなり機嫌いいわ。でも謎だ


「ちょっとしゃがんでください」


「ん?……なんでだ?」


何か黒い考えがあるのか、ルナみたいにひっつき虫されそうで怖すぎる


「むぅー!せんっぱい!はやくぅ!」


「はいはい」


俺の発言は無視か…人権なさすぎる


「もーちょっとですよ?身長差考えてくださいね?」


「あ、ハイ…」


俺が腰を屈めてすぐだった


 ふぅーっと艶のある吐息と、西城の甘ったるい声音が俺の耳の奥にまで浸透していった


「ッ…」



あまりに突然の不意打ちに肩が跳ねる。一瞬怪しい店のオーナーでもやってるんかと思ったくらいだ。帰ったら愛梨にもやってみよ


「あ、今ビクッてしました。おかわりとかします?」


「お、おまえ…死んだらどうすんねん…」


「ぷぷ、先輩ってば顔真っ赤じゃないですかぁ〜」


「うるせ」


「ではでは失礼しましたぁ〜!」


そう言って手を小さくフリフリして、西城はるんるん気分でどこかに行ってしまった


アイツには調子狂わされるなホント


「楽しそうね、私も同じ事ができるけどどうする?」


「「…………」」


いつの間にか扉開いてた件


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