18話 めっちゃ寝た
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「おい、いつまで寝ている!そろそろ起きろ!生徒指導の時間だぞ」
そんな声が聞こえて意識が徐々にハッキリとしてくる。毛梨先生の声だ……
横になってる間に寝てたのか…
瞼を擦って勝手に使っていたベッドから起きると、毛梨先生のスキンヘッドが光輝いていた
寝起きでおっさんのスキンヘッドみるのしんど…
美少女が俺に覆い被さってるとかだったらいいんだが
「おはようございます。今何時ですか?…」
「12時30分。昼休みだ。よく寝たな」
案外優しいな。ニッコリ笑顔だ…俺がこんな長い間寝ててもそれだけって…
「おまえだけ特別扱いという訳にもいかん」
ことはなかったか
♢♢♢
場所は変わって、またまた生徒指導室の硬い椅子に座っていた
「なぁ佐藤…自分だけ気持ちよくなって終わりって言うのも、先生は悲しいと思うがな。ちゃんと女の子の事も考えないと…な?」
「…はい」
なんの指導だコレ。俺童貞なんだが…くっそぅルナのヤツ……帰ったらホントに抱いてやろうか?
いや、アイツはいつでもwelcomeだから仕返しになってないんだよな…
しかも確実にルナにハマって、好意を持ったら捨てられる未来しか見えない。アイツは絶対そうする
次会ったらジャーマン スープレックス確定だな
「あ〜…あとな。駄菓子屋のバイトの子にプロレス技決めてクビになったろ。オーナーからあんな子寄越すなって言われたぞ?…」
「あ〜…アレは……」
アイツの為にやった。と言いたかったがアレは失敗に終わったんだ
しかもクビにもなったんだから誰が見ても俺が100%悪いし素直に謝るべきだな
「すいませんでした!」
俺は立ち上がり、頭を下げ、誠意を込めて謝罪した。先生の顔に泥を塗ったんだからな、当然だ
てか両方ルナ関連で言われてるな…アイッツゥ…!
くっそ悔しいよ!僕!
「いいさ、ははは。気にするな!」
先生は豪快に笑って許してくれた。なんだ、やっぱりいいひ「その代わりひとつ頼まれてくれないか?」
「お断りします」
俺は精一杯柔らかい笑顔を顔に貼り付けて、お断りした
「そう言うなって!先生からの頼みって言うより生徒会長からの頼みだ!」
「…なんで俺なんですか?俺である必要が……」
そもそも生徒会にはアレがいるだろ……あのカリスマモデルみたいなのが…
「ご指名だ。たまにでいいから手伝いに来て欲しいとのことだ」
「俺である理由の説明になってないです…」
そもそもご指名って職権乱用じゃないか?
「なんでも態度が悪かったから、だそうだぞ?」
「ソッスカ…」
俺の態度が悪かった? 生徒会長って朝のアイツか。もっと上手くやり過ごすんだった
「では、行ってこい」
そう言って先生は椅子から立ち上がって生徒指導室のドアを開けた
もう用はない。はよ行けって感じだ……
♢♢♢
特別棟の廊下に足を踏み入れる
こっちの棟は本当に静かだ…それも当然か、教室がひとつもないしな
一歩、また一歩と踏み出すたびにーー
はぁ…まじ萎えるな…
なんで俺が女優の相手をしなきゃいけないんだよ
「はぁ…いつか分からせたる」
昼休みの生徒達の笑い声が遠のいていく。なんなら俺の昼飯も遠のいて行く。いや、もう購買は売り切れか
家庭科室の前を通り、美術室の前を通る
そっと窓越しに室内を覗き込むと、イチャコラしまくって俺が通っている事にも気付かないカップルがいる
「…うらやまし…」
俺に縁は無さそうだな
そのまま足早に資料室の横を通り過ぎる
そしてその隣、生徒会室のドアの前に到着
このままドアなんて開けたら生徒会長様の思うツボだ。なんか分からせる方法はないのか?…
「よし、昼休み終わるギリギリになったら開けよ。話す隙も与えずうやむやにしてやろ…」
俺を待ち続けて机に頬杖しながらイライラしとけ
ぷっ…それでい「せぇ〜んぱぁーい!」
この甘ったるく甘えるような声は……




