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11話 抱かれにきた


翌日


今日も無言でぼちぼちと授業を受けて帰りのホームルームが終わる。


部活に行くであろう生徒達の波が通り過ぎるのを待ちながらボケーっとしていた。


「レイパーがよ…」


小声だが、確かにそんな声が聞こえて来たが、沢山の人間が後ろを通り過ぎるから誰だか分からないし、気にはしない。


何かやられても多少は我慢出来るが今のところはない


隣の席を見ると、黒髪ボブの子もとっくに帰っていた。


今日は一度もウィスパーがなかった…こころなしか沈んだ顔で帰って行ったな……大丈夫かアイツ


「ん?…」


机の下には手帳が落ちていた。凄いな、高校生で手帳って…


手帳と言えば社会人御用達なんだがな…普通に尊敬できる


「……………」


俺は腰を屈めて手帳を拾い上げ、自分のバッグに放り投げた。家帰って見たろ、暇だし…


んで明日の朝は早く来て、机の中にでも入れよ


「やっべ。楽しみだわ」


少しだけコイツの秘密が知れると思うとワクワクするわ。子犬ちゃんにリードは必要だからな


自分の性格の悪さを再認識した俺は、そのまま立ち上がって教室を後にした。


西城が1人で居たら謝る事を忘れていない。


時間が経つにつれ、謝る事は難しくなる。それでも絶対1人の時だ。


そもそもアイツは俺に謝って欲しいのか?もう関わりたくないんじゃないか?…


「しょうもな……」


何1人で悩んでるんだ。くだらない。乙女かよ…


そのまま駐輪場に向かって自転車を押し、校門に差し掛かる。


どっかで見た事のある綺麗なプロポーションをした巨乳の金髪美少女を無視して、そのまま自転車を押す。


「ねぇねぇ〜」


「…………」


「ねぇってば〜………名前分かんないだけど〜?」


多分俺じゃなさそうだな…無視無視 


「無視すんなおい」


…こっわ……言葉の節々からすげー怒りが伝わってくる。


「…………」


まぁでも俺じゃないな。しかも幻聴だろ。

 

「疲れてんな、はよ帰ろ」


俺が自転車を漕ぎ出そうとした時、いきなり荷台から誰かの気配を感じた


てゆーかめっちゃ後輪が沈んだ。


流石にこれはホラーすぎて振り返ってしまう。

一瞬俺が2人乗ってんのかって思ったが…違った


「おまえ何してんの…」


「………」


俺がそう言って腰を捻って上半身だけで振り返っても無視だ。


「おい…」


「疲れてんでしょ〜?はやく漕いだら?」


「いや、駄菓子屋行きじゃないぞこの電車は…」


「そんなの知ってるぅ〜!いいからはよ漕げざぁ〜こ!なにぃ〜?緊張してんの〜?こんな美少女乗せるの初めてぇ〜?童貞くっさぁ!ざぁこざぁ〜こ」


ムカつくコイツ!急にメスガキモードになりやがって、しかも何でいんだよ。


「童貞舐めんなボケ。おまえ俺に完全敗北したろ?何しに来たんだよ…」


もう俺がコイツにしてやれることはない。後腐れなく俺達の関係は終わったし、コイツも男とかしょーもなアホじゃんって思えた事だしな。


さっさと恋でもしてきな


まあ俺は最高に気持ち良く終われたけどな。


ルナさんは敗北感味わいながら前を見て歩いてね


「抱かれにきた」


「……………………ん?もっかい」


「抱かれに「降りろ」


コイツ完全に俺を分からせに来てやがる。俺を骨抜きにして自信を取り戻す気だ。


俺の思いが伝わってないし、いい方向に進んでない


全くペダルを漕ぐ気が起きなかった。校門を出た真横に鎮座してるから迷惑にはならんけど……


「すぅ……はぁ…」


「ん?」


何深呼吸してんだよルナ。…俺が過呼吸になりそうで深呼吸したいわ


「……おまえだけぇ!気持ち良くなって終わりとかふっざけんなぁああ!ルナも気持ちよくなりたいってのお!!」


超クソデカボイスが学校と近隣に響き渡った。明日は朝イチから生徒指導室行きだなこりゃ…そんな事より


「やっべえ!」


俺は急いでペダルを漕ぎ、制服のブレザーをコイツの顔面に投げつけた。


「それ羽織ってろ」


「ぶはっ!なにすんだバカ!」


「いいから黙って羽織れ。あと誤解を産むような発言をするな」


聖華女学院の生徒に手出したとかそんな噂が立ったらアレだ……


コイツみたいな着崩した子は女学院では確実に浮いてるはずだ。すぐにおまえだってバレんぞ。


しかも…一人称がルナってのが致命的だ。


聖華の制服でルナって子がめっちゃやり◯んって噂が立つんだぞ分かってんのか…はぁ…最近大声で爆弾発言する奴が多くてしんどい…


「ちゃんと羽織ったか?」


「……………」


「おい、聞いてんのか」


「……うん…」


「いきなりテンションガン萎えしてんなよな…」

 

「………」


制服を羽織り終えて暇になったのか、暫く自転車を漕いでいたら、背後から手が伸びてきて左手は腰に巻き付き、右手は俺の胸板に巻きついてくる。


「おい…」


「…安全のために」


小声でそんな事をいうコイツの息は少しだけ荒く、しかもマーキングでもするみたいに胸を強く押し付けてくる。


反応しないように俺は無心で漕いだ。反応したら絶対コイツに後でバカにされるからだ


その後のルナは終始、話しかけても一言も喋らないまま、ずっと息を荒くして俺の背中に張り付いていた


すぐに察した。


あー……コイツ…匂い嗅いでるわ


ここは気付かないフリが大人の対応ってやつか…


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