10話 復讐
玄関の扉を開けると、夕飯の匂いが漂ってきた。靴を脱ぎかけたところで奥の居間から声がする。
「おかえりーざこにぃ!遅いよー!」
そりゃ遅いわ。バイト雇ってもらってその日でクビになった上にバックドロップしまくったしな
『もうさっさと抱けよおぉー!うえぇん』
最後らへんは泣きながら懇願してたが無視してバックドロップ決めまくったわ。
もうアイツの女としてのプライドはズタズタだし2度と会うこともないし、メスガキを分からせるの最高だわ。完全勝利の勝ち逃げだな。ざまぁねえわ
無言で靴を揃えて上がる。
まっすぐ進んで居間に直行だ
リビングの扉を開けてここで初めて口を開く。妹のおかえりを無視する訳ないしな
「ただいま」
「もう晩御飯できてるか…………え?……えっ!?」
煮物の匂いと味噌汁の匂い。今日も作ってくれている事に感謝だな。
「なんだ?…」
「お兄ちゃん……めっちゃ顔ツヤツヤしてんじゃん!女の子にジャーマン・スープレックスとバックドロップ決めて来たでしょ!」
「………おお、おいしそ「ちょっと聞いてんの!?愛梨ならまだしも人様にプロレス技はヤバいって!」
テレビの音が耳元で聞こえると思ったら愛梨だった。いやちけーよおまえ……
「なにおまえ嫉妬してんの?」
「してないわボケナス!ばかばか!ばーかばーか!ホントにばーかぁ!」
「ヨシヨシ、落ち着けよ。な?いい子だから」
今の俺はすこぶる機嫌がよく、こんな弱っちい攻撃ではダメージ0だ。落ち着いて愛梨の頭を撫でてやる
「はぁ……ん?ちょっと待って。お兄ちゃんソファとか、ベッドとかでしか決めないよね?女の子とそーゆう場所に居たの?」
「…まぁ?」
なんで駄菓子屋に居たのかを話すと長くてダルいしな。テキトーな相槌でいいか…
「………ばかじゃん……」
俺が煮物を食べ、ご飯を貪っていると目をまんまるにして暴言を言い放ってくる。"まぁ?" で何故ばかと言われるのか……
「なにが?」
てかメシウマ…
「男女が2人きりでやる事がプロレス技?……その子が自分に自信持ってたら……復讐しにくるよ?」
復讐というめっちゃ怖いワードに思わず吹き出しそうになった
「え、俺殺されるのか?」
「…もう知らなーい。にぶちんは放っておいて愛梨お風呂はいってくるねぇ」
「てらー」
♢♢♢
本名は一ノ瀬瑠奈…自分で自分のことをルナって言うようになったのはいつ頃だったかは覚えてない…
可愛いらしい感じが出てこの一人称がルナは好き。気に入ってるし
中学2年の時から胸が突然大きくなって、その時くらいから視線に敏感になったと思う。町をお母さんと歩いてても、大人とかがお構いなしにルナの胸を見てた…
それと同時に自分という存在がめちゃくちゃ女として魅力的だという事にも気づいて、自信がついた。
「でも………気持ち悪い…」
そう、気持ち悪かった。高校生になってそれは更に悪化していって、男を見る分にはいいけど2人きりになるといやらしい下心が透けてイヤだった。
駄菓子屋のバイトを始めた時、最初はルナともう1人……大人しそうな男の子が居た。
でも実際は大人しくはなくって、ガンガンるなに迫って来た。中学の時に男子なんて居なかったし、今通ってる高校にも居ない。だから同学年がどんなのかは知らない。
「怖くて辞めさせてもらった…でも。そう…それでも快感だった…」
それでも快感でしかなかった。女としての価値が凄い高いんだなって町を歩いてても思った。鏡を見ても可愛い、胸だって高校1年でGカップもある
バイトに来たのは不思議と5人とも男だった。
キッショい視線でルナのおっぱいをガン見しては舐め回すような視線にうんざりして、パワハラとも取れるイジメを行った。
そしたらだっさい事にみんな初日で辞めた。マジクソ雑魚メンタルじゃん。マジ草なんだけど
でもいつかは男に慣れなきゃならない…6人目が来るって聞いた時は今度こそ!って思った。
でも来たのは細マッチョのまぁまぁいい顔した男だった。
けど明らかに格闘技をやってて流石に怖い。態度も冷めてて、大人びている感じで何考えてるか分かんないし…
視線も胸というより、全体を見てた。まるでそれが癖であるみたいに……しかも歴然の戦士かよって感じのサポーターが左手にあって怖すぎる
力で抑え付けられたら抵抗は無意味だと直感したからこの人もパワハラで辞めてもらおーとした。結果的には辞めさせることには成功した。
ーーーでも
『おまえのえっろい体なんて使ってやんねーよ!女
としてのプライドごと死んどけおらぁぁ!』
「うわぁぁぁあ!ムカつく!ムカつく!ムカつくぅ!」
シャンプーボトルを手に取って勢いよく壁に投げ付ける。もう何度も思い出しては壁に投げ付けてる。
「使え使え使え使え使え使え使え使え使え使え…」
もちろん初めてがレ◯プはイヤだ。でも使えって許可まで出したのに。後ろ向いてアイツが入れやすい様にお尻まで突き出したのに。使われなかったのが凄いショックだった…
ルナのこんなえろい体を前にしてやる事が…バックドロップとジャーマン・スープレックス?…は?……
終わる…ルナの女としての価値が…誇りが…プライドが…音を立てて崩れていく
あっ…やば。涙がでてきた…
浴室の鏡に映る自分の体を見るけど…うん、やっぱりえっろいぞコレ…ルナが見て思うくらいなのに…
「ゔうっ…ひぐぅ…うえぇぇん…」
ダメだ…もう完全にズタボロだ。完全に分からされてる。何か目的がないと…なにかルナに…
ーーーあっ…そうだ。いいこと思いついた
ルナの顔はこの時、たぶんすっごい邪悪な笑みをしてたのかもしんない
「ぜってぇルナを抱かせてやる…このまま終われるか屑が」
「ルナを使うまで毎日アイツの高校行ってやる…おまえの童貞むしりとってルナにハマらせてやる」
「…それからルナの事好きになったら捨ててやる」
ーーー復讐してやるーーー




