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1話 妹の愛梨



「お兄ちゃーん!愛梨が大きくなったら愛梨と結婚してー!絶対だよ!」


「あぁ…考えとくわ」


「うん!約束!」


昔はそんな風に俺に甘えてきて、何をするにも俺の後ろをくっ付いてまわっていた。


あの時は可愛かった。運動音痴でよくコケていて膝を擦りむいては俺に "舐めて" ではなく

"舐めろ"とか言っていた辺りが。


やっぱり可愛くないわ。この時からメスガキ気質はあったんだろう。アニメを見始めてからは更に悪化し、立派なメスガキマスターになっていったっけ…


ピピピピピピピピピピピピピピーーー


「んあっ…」


アラームの音がうるさ過ぎて起きた。もう朝か…


アラームに鋭い鉄槌を叩きつけて布団からムクリと起き上がる。


「……懐かしい夢みてたな…」


『お兄ちゃーん!愛梨が大きくなったら愛梨と結婚してー!絶対だよ!』 


「……おえっ……今では考えられんな」


いや、昔も考えとくわって言ってたわ……


俺の名前は佐藤蓮。日本で一番多い苗字を冠している。これ以上ない誉れだ。それと同時にこれ以上ないくらいに唯一性がない。


できれば西園寺とかが良かったーーームリか


「あぁ…学校行きたくねえ…」


昨日は転校初日だった。今日は2日めだ。


ダルい体を起こしてベッドから降り、棚から黒い薄手のサポーターを取り出して左手に付ける。


それから部屋の扉を開けて階段をゆっくりと降りていく


洗面所で顔を雑に洗ってから、リビングの扉を開けると焼きたてのパンの匂いと苺ジャムの香りが俺の鼻口を刺激した。


コーンスープもあるのか…流石だ


「おはよ!ざこにぃ。起きるのおっそーい!」


「あぁ…おはよ」


「朝は相変わらずざっこざっこだねぇ〜?」


「朝食ありがとな」


「どーいたしまして」


この朝から当然の様にメスガキムーヴをかましてくるのは妹の愛梨。黒髪で目がくりっとしていて俺が逆立ちしても勝てないくらい可愛いいらしい…


「またお父さんとお母さん出張だってさ〜」


「あぁ…そうか…」


「んん〜?ホントは寂しいんじゃないの?あっ、愛梨がいるからそんなことないかぁ〜」


ニヤニヤと笑みを浮かべながらテーブルを挟んだ先の俺を煽り散らかしてくる。


「……さぁ考えた事ないなぁ。どうだろうな」


メスガキ特有の煽り散らかしムーブは適当に流す。もちろん最初はだ。


「またまたぁ〜照れちゃって」

 

「実はそうだ…照れてる」


「へ?…あぁ…そ…」


俺がそう言うと本当に照れちゃった愛梨はそっぽを向いて、つけっぱなしのテレビに目をやっている。


「「………」」


リビングに沈黙が訪れる。長い沈黙だ……


そう。"突然のガチ返答"。コレが愛梨には効く


だが自分がイラついてしまったら意味がない。イラついた時はやむを得ず分からせるしかない。分からせ方は人によってかわってくるが…


全く使い道のないこの特技。通称分からせハント


俺は長年愛梨の煽りにイライラしていた時期があった、しかしテキトーに受け流す事を意識し、適切なタイミングで突然のガチ返答を行う。


つまり愛梨に変化が産まれなければ俺にはもう効かない。まぁ……愛梨以外に分からせた事はないが


日本は狭い。愛梨とはタイプの違うメスガキは多くいる事だろう。…だがそんな簡単に遭遇する事なんてあるわけない………な


ダメだ。意味のない特技だな


俺がそんなしょうもない事を考えながらパンをもしゃもしゃと味わっているともう既に目の前の愛梨は居なかった。


「じゃ!先に出るね〜!ざこにぃも早くしなよ〜?あっ…愛梨が着替えさないとムリとかぁ?」


玄関からニヤニヤとした煽り文句が聞こえてくる。朝からよくやるな…朝じゃなかったら分からせてたところだぞ…


まぁ俺の左手を心配してくれてるんだろうな


自分の左手を見つめ指を動かす。うん…まだ握れない


「はよいけ」


「はーい」


完食してから食器を流し台に置いておく。愛梨の分もだ。……いや、片していけよ


ささっと制服に着替えて時計を見ると……


7時40分か…なんで朝だけ時間経つの早いんだ。


「もう出るか…」


この日を境に俺は妹以外の女の子達を様々な方法で分からせる事になる


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