第十六回 瀧川小文治は警護の役目を命じられる
瀧川小文治という男は、鳥山秋千代、虎石力松、亀屋多門之助の三人とともに、先日に安養寺に訪れた卜庵老人の子飼いの忍びの一人である。
小文治は身長が六尺を超える怪力自慢の鬼坊主である。髭面の悪相で与太者に見える。ガラのよくない地域に自然な感じで潜り込むことができた。
卜庵老人からの命令。
┅┅定村かなめが亀屋に一ヶ月ほど滞在することになるので、護衛せよ。
* *
博多の亀屋にやってきた定村かなめは、寺小姓の衣装ではなく、京の陰陽師の衣装を着て侍烏帽子をかぶっていた。
それは良い。
良くないのは、定村かなめが二人いることだ。
小文治は説明を求めた。
「どうなっているのですか?」
亀屋は言う。
「卜庵さまから聞いていないのかい?」
「細かいことは亀屋さんの指図に従えと言われましたので」
と、小文治。
ならば、と亀屋は唇を歪めた。
「それならぱ、言われた時間よりも少し早く来て、私から話を聞くことです」
亀屋の話によると、寺小姓の定村かなめは最初から二人いたと言う。
京の正七位下の陰陽師である定村種春の二人の子ども。
妾腹の子である兄の白縫数真。
正妻の子である妹の定村風見。
母親と性別が違うと言うけれども、見たところ奇怪なほど似ている。
ポンポン亀屋は話す。
「お二人のことは、私の知り合いの京の官人の御子息が博多見物にやってきたという話にして、この店の二階にご逗留いただきます。
護衛の割り当ては、白縫さまには秋ちゃんがつきます。
小文治は風見さまについておくれ。風見さまは従五位下という高位の方のお孫さまだぞ。くれぐれと礼儀に気をつけて」
面倒だ、と小文治は思った。
「女の相手をするのならば、秋でしょう。俺みたいな無骨者より」
亀屋の意見。
「先日の立ち合いで、白縫さまと秋ちゃんとの間で、気持ちの通じるものがありましたヨ。小文治もアレを見ていて思ったでしょう?」
「そいつは、まあ」
小文治も認めた。
亀屋は言う。
「秋ちゃんが白縫さまの相手でいいだろう。
残った風見さまのことを小文治がお守りしてやっておくれ。風見さまは、兄君の白縫さまとは違って、女だ。お姫さまだ。なよなよとしています。
ですから、風見さまがちょっと外に出たいというような時には、変な奴が近寄ってこないように、お前さんみたいに人相の悪い奴をそばにつけた方がいいでしょう」




