お前をパーティーから追放する! するったらする!
・ロイ : 主人公。♂
役割 : 後衛斥候兼荷物持ち兼雑用。
・ガンテ : 幼馴染み。パーティーリーダー。♂
役割 : 前衛戦士。
・ラング : 幼馴染み。でかい。♂
役割 : 前衛戦士。
・ギリ : 幼馴染み。細いけど大食い。♂
役割 : 後衛弓士兼司令塔。
「ロイ、お前をパーティーから追放する!」
場所は、パーティー共同で借りている一軒家。
数日こもったダンジョンから帰宅して寝て起きた翌日のこと。
突然、ぼく、こと、ロイは、パーティーリーダーのガンテから追放を宣言されてしまった。
同じ村出身の幼馴染み4人で冒険者をやってきたぼくら。
ムードメーカーでパーティーの牽引役を担ってきたリーダーのガンテ。
体格がよくメイスと盾で前衛を支えるラング。
細身だけれど手先が器用で弓が得意なギリ。
そして小柄で戦闘に向かないから荷物持ちと雑用を買って出ているぼく。
駆け出しの頃からそこそこ名前の知られた今まで、ずっと一緒に冒険してきたのに。どうして、今になって?
「り、理由、理由を聞かせてくれないかな? ガンテ?」
小柄で戦闘に向かないからといっても、自分の身は自分で守ってきたし、荷物持ちから各種雑用に至るまでできることはなんでもやってパーティーに貢献してきたつもりだから、追放される理由が思い付かない。
「……いいだろう。教えてやる」
ギラリと目を見開くガンテを見て、気づく。
あ、前髪が長くなってきたなあ。そろそろ髪切ってあげなきゃ。
「それは、お前がっ」
「ガンテ、また髪が伸びてきたよね。そろそろ切ってあげるね。ほら、座って」
「おう、頼む…………って、ちがーう!」
イスに座ったら急に暴れだして立ち上がったガンテに、ビックリしてしまう。
「話の途中だ! 聞けよ!」
「あ、うん。……あ、他人を指差すとか、ダメだからね? ぼくら、けっこう名の知れた冒険者パーティーでしょう? 立場のある人と顔を合わせた時に礼儀がなってないとダメなんだよ?」
髪の話じゃなかったみたい。
たまに、おこりんぼになるガンテは、ぼくを指差してガミガミ言うときがあるけど、そういうの直していかないと。
……なんて思ったら、
「そういうとこ! ロイ、お前のそういうとこ! もう我慢ならねぇ! 今日こそは言わせてもらうぞ!」
「うん。でも、叫ばなくてもちゃんと聞こえてるよ? あのね、ご近所さんからたまに『若い男の子ばかりだから仕方ないとは思うけれど、たまに騒がしいのよねぇ……』って、苦情がくるんだよね。そういうときって、ダンジョンでレアもの拾って喜んでたときだから止めにくいんだけど」
「あ、うん。近所迷惑なら気を付けるわ。……じゃねーよっ! あのな、そういうとこ! お前のそういうとこ我慢なんねぇんだよ!!」
そういうとこって、どういうとこ?
ラングとギリの方を見てみても、うんうんと頷いてるだけだし。
あ、ラングの袖のボタン取れそう。
部屋着だからって、ズボラだなぁ。
「ラング、袖のボタン取れそうだから縫ってあげるね。……はい、終わり」
「す、すまん。助かる」
「どういたしまして~♪」
「聞けよっ!!」
「聞いてるよ?」
なんか、ガンテ興奮してるなぁ……。
最近、装備を一新するために節約してるから、好きなもの食べれなくてイライラしてるのかな?
「今日の夕食は、どこかで豪華に食べよっか? 打ち上げついでにさ」
「外食よりビーフシチューを作ってくれ。久しぶりに食べたい」
「分かったよギリ。じゃ、今日は昼過ぎから買い物して夕食の仕込みするから。期待してて」
「……じゅるり」
手間がかかるから、しばらくの間ビーフシチューを作ってなかったからね。ギリの好物だから、頑張ろう。
「いや、だから、聞けよって!」
「いやだから、聞いてるってば」
別に無視してないじゃん。
「お前をパーティーから追放する理由は、それは、お前が…………」
ドンドン。
玄関のドアノッカーの音に、はーい! と返事して出てみれば、冒険者ギルドの職員さんだった。
なんでも、売却した素材の値段がこれから上がることが分かったから、追加分のお金をわざわざパーティーハウスまで届けてきてくれたんだって。
「なんかね、今回ダンジョンで狩った《ぬめぬめガエル》の粘液と皮が、レインコートと防水材になるから、これからの時期値上がりするの忘れてたんだって。なんか儲けた気分だね」
「お、ラッキーじゃん。次もあそこのダンジョンいくか? 《ぬめる沼池》人気ないから一気に稼げるんじゃねぇの?」
「これからの時期は、《ぬめぬめガエル》と《ねちょねちょナメクジ》の皮と《粘つく粘液》がオススメなんだってさ。《足食いガメ》と《万力泥カニ》と《泥沼イソギンチャク》と《ラージヒル》に気をつけて、とも言ってたけど。
あ、そうそう。《かば焼きウナギ》と《沼ヒラメカレイ》と《ナマズアンコウ》は美味しいみたいだから、生きたまま捕まえてほしいみたいだよ」
美味しい食べ物もお金も大好きなギリは、賛成みたいだけど。
「……いや、あそこは動きづらくて……」
体格のいいラングは嫌そうだね。
ぬかるみに足がはまって靴が脱げて大変だったしね。
「だ・か・らっ! 聞けって言ってるだろっ!!」
「だから、聞いてるって言ってるでしょ。無視なんかしてないよ?」
ふすーっ! と鼻息荒くしてるけど、ガンテって忘れっぽいから……。
「それよりさ、ガンテ。洗濯するから服だしてよ」
「ロイっ! お前は、俺らのおかんかよ! 前もそうやって人前で俺らをおかんみたいに構うから、こないだ後輩のかわいい女の子達に声かけられた時笑われたんだぞ!? 『若いお母さんですね?』って!」
えー……。いつの話?
あ、また指差してる。変な癖ついちゃってるなぁ。
「笑われたのってさ、ガンテが普段から変にカッコつけてるからじゃないの? ぼく、パーティー名恥ずかしいから変えてほしいって言ってるのに」
《黄昏トワイライトに集う4本の御剣フォースソード》
ガンテが猛プッシュするからこんな変な名前にしちゃったし。
「あと、右のモノクルと左手の包帯、そろそろやめなよ。ぼく、恥ずかしいよ。モノクルは魔道具だからいいとしても、包帯はなんの効果もないじゃん。左手は絶対にガントレットか小盾の方がいいってば」
包帯なんか、なんの効果もないのに年代物っぽくするためだけに汚し加工とか経年処理とかしてたじゃん。
不衛生だからやめてほしいんだよね。
洗ってないから臭いし。
おしゃれ着のダメージジーンズとは違うんだからさ。
「裾がボロボロのマントとか似合わないよ? 変に裂けたり痛んだりしてる上着も、仕立てのいいの買いなよ。もう少しでひとかどのチームって言われそうなくらい活躍してるのに、お金ないの? って、近所のおばちゃんたちから心配されてるんだよ? 節約して貯めたお金で、防具と一緒にちゃんとしたの買いなよ。偉い人と会う時、笑われて下に見られるよ?」
「うーーーがーーーっ!!」
あ、キレた。
ほんと、こうなるとぼくの言うこと、なんも聞いてくれなくなるんだよね。
ラング、ギリ、もう夜の分まで買い物してくるから、ごめんだけどガンテのことよろしくね?
奇声を発しながら暴れだすガンテを押さえる二人に視線で合図して、買い物袋片手に商店街へ。
夜はビーフシチューでいいとして、お昼はなんにしようかな?
ガンテの好きな白身魚のムニエルとか、ラングの好きな野菜たっぷりのスープとか。パンは白パンにしよっか。ぼくの好きなもちもち柔らかくてちょっと甘いやつ。
あとは、夜用に固めのバケットと、明日の分は何にしよっかな?
帰ったら、ガンテのパンツとかちゃんと洗っておかないと。
なんか分かんないんだけど、ガンテったら最近ほんとに自分のパンツ隠すようになったんだよね。
履くのなくなって困るのガンテなのに、どうしたんだろうね? 変なの。
※結論 : 昼食後うやむやになりました。
結局全員、胃袋掴まれてる問題。
※※※
買い物から戻っても不機嫌だったけど、ごはん作るっていったらおとなしくなったみたい。
あと、パーティー名。ほんとは、
《黄昏に集う4本の御剣》
と書いて、
《トワイライト・フォースソード》
と読んでもらいたかったとガンテの日記に書かれてた。
てか、ガンテって日記書いてたんだねぇ……。
あ、この子知ってるかも。
へー。ガンテってこういう女の子が好きなんだね。
……でも、なんかこう、よく分かんない詩みたいなの、なんなんだろうね?
運命に導かれ出会いし銀翼姫、とか。
その子って、確かに長い銀髪のきれい系な子だけど……。
……たしか、チーム組んでる年上の男性と恋人同士じゃなかったっけ?
横恋慕とかよくないから、いいタイミングがあったら注意しとかないと……。
※※※
部屋の掃除してたら放置されてた日記とか見つけて読んじゃった問題。
秋の桜子さんよりいただくことができました。