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三題噺 昼、質屋、髭   

ランダムに決めた3つのお題(昼、質屋、髭)を基に作った小説となります。

初めての掲載なので至らない点も多々あると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。

 私はその日も窓から差し込む太陽の光によって目が覚めた。

太陽の位置から現在の大まかな時間を把握した私は、ベッドに立てかけてあったバットを手に取って隣の部屋へ向かい、まだその部屋で寝ている大男に向かってそれを思い切り振り下ろした。

鈍い音とともに手がふるえる。

まだだ、こんなものじゃ足りない。

しびれ始めた手に顔をしかめながらもう一度。

何度かバットを頭に打ちこむと、彼は小さく身じろぎをして口を動かした。

「もう朝か…」

「ええ、おはようございます。」

 

 この男は横浜の片隅にある小さな質屋『大金星』の店主。

世が世なら九州くらいは単騎で平定できたのでは、と思えるほどの人類を大きく逸脱したスペックを持ち、しかしながらそれを一切生かさない仕事をする自称人類最強(46歳)

私の業務内容の一つがどのような手段を用いても店主を起こす、というものであったこともありここで働き始めてしばらくは彼の体に少しでも傷をつけることを目標に日々努力していたが、みず○の公園市国における処刑方法を一通り試してもなんの成果も挙げられなかったため今は諦め、一番経費が安く手間のかからない方法(バットによる殴打)で起こしている。

まぁ安いと言っても毎日使うたびに折れてしまうのでそれだけで月に80000円程使っており、この店の会計をひっ迫し続けているのだが…

閑話休題。

まあ、上に述べた通りとにかく頑丈で強いこの男だがその強靭さが毛根まで反映されなかったのか、はたまた彼の鍛え上げられた筋肉が毛穴を圧迫しているのか。

理由は定かではないが彼の肌には一本の毛も生えていない。

産毛すらもだ。

端的に言うとそう、彼は禿げているのだ! 

と言っても、頭はスキンヘッドになっておりそれは彼の筋肉質な体にとてもマッチしていて…などと寝起きの彼の部屋を掃除しつつ考えていると、いつの間にか彼がこちらを鬼のような目で見つめていることに気づく。


「…今、なにを考えている?」


これは…殺気!? いや、私は頭の中で考えていただけで別に地の文と見せかけて実は最初から喋っていた、などという愚は犯していないはず…

逃げようとするも体が動かない。私が恐怖のあまり目を逸らしてあらぬ方向を見つめていると、まるで地獄の底から響いているかのような声が耳に入った。


「俺は、人の心を読むことができる」

 

 何かからだうごかない……

 というかどこのデスゲームだこんな怪人に一番持たせちゃいけない異能もたせたのは!


「いや、これは人のの体温や心拍数、呼吸頻度などの変化から心理を推し量る技術で、俺が独自に身に着けたものだ」

 

ヤバい、やっぱこの人化け物だ…どうしよう…

しかも結構な精度で心を読まれてるっぽい…

いや、諦めるな!

考えなければ。彼が心を読める以上全くもって嘘で

はなく更にこの状況で彼の機嫌を直すことができるような言葉 

を!

……いや、無理では?

なんというか、日本語の限界を感じる。

というかこの思考が彼に読まれている時点でもうど

う足掻いても詰みな気がする…


「で、何を考えていた?」

「いえ、その……………なんというか、店長の頭は少し薄いと言えなくもないかもしれないけど、そこもまたーチャームポイントだよなぁって」


我ながら酷いな。

少し違うことを考えていたとはいえ、人生最期の言

葉がこんな煽っているようにしか聞こえない駄文だ と思うと悲しくなってくる。

…………いや、今からでも泣いて土下座したら辞世の

句くらい詠ましてくれるんじゃ…?

 

 私が辞世の句を詠ませていただくために人生初の泣き土下座を敢行しようとしていると、彼はまだ不機嫌そうではあるが殺気を緩めてくれた。

 

まさか体が動くことを神に感謝する日が来ようとは

しかしどうして私は許されたんだ?


「まあ、今日はめでたい日だからな。少しくらい羽目を外しても許してやろう」

「何かあるんですか?」

「ああ、今日遂に俺が長年求めてきた物が手に入るチャンスがやって来たんだ」

 

ほう?

彼が欲しいものはよく知らないが、どうやらそれのおかげで私という一つの尊い命は救われたようだ。

そう思うととてもありがたい。

何かわからないけど私を助てくれたものは子孫代々語り継いでいき、毎年この日にパーティーを開くようにしないと……!


「それで、何がほしいんですか?」


そう聞くと店長はとても機嫌良さそうに近くの机から1枚の紙を手にとってこちらに見せてきた。

これは……この店も所属しているえびす商店街が主催

しているスタンプラリーの台紙…?

だが何故か全体が金色にまばゆく光っている。

「スタンプラリーのデザインってこんな感じでしたっけ??」

「そいつははこの一ヶ月間にその商店街で100万円以  上お金を使った人に渡される『裏・スタンプラリー』の台紙だ。

そしてこの『裏・スタンプラリー』のスタンプを一番に集めて町内会に提出したものに贈られる景品こそ、私が長年欲し続けてきたもの。

そう、伝説の育毛剤『松林』だ!」

…さてと、育毛剤にあったテイストの神棚を探さないとな(現実逃避)。

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