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と、おれがドラゴンのブレスに焼かれて死ぬ寸前となるより数日前の話をしよう。


召喚の日のことだ。

この世界ではそう呼ばれているらしいその日、おれはこの地に転移した。


いままで住んでいた場所と突然切り離されたことに対して、何の感慨もわかなかった。

そりゃそうだ。

おれは元の世界ではうだつの上がらない毎日を送っていた。


生まれた時から親に捨てられ、施設に預けられた。

学校に通いだしても集団生活にはなじめず、中学を卒業したその日に施設を脱走した。


狭い田舎だった。

そこにとどまっていたらすぐさま見つかり、施設に逆戻りになるのは目に見えていた。


おれは電車に乗り、東京を目指した。

切符なんてあるわけもなく、新宿駅の改札をぶち抜き、東口に降りたその瞬間から転移するその時まで、

歌舞伎町がおれの住処になった。


10年が経った。

おれはすっかり歌舞伎町のチンピラになり、ヤクザの使い走りをして食いつなぐ日々を送っていた。


あの日は、世話になっている組が仕切っている風俗店の集金中だった。

集金を告げると、店長はおれを一般客と同じ待合所に待たせ、バックヤードに姿を消した。

薄暗くも辺りをピンクに染める照明の元、おれは煙草をふかしながら店長が金を持ってくるのを待っていた。


2本目のハイライト――煙草が灰になりかけた辺りで、異変に気付いた。


周囲から音が消えていた。

空気が異質なものに変わっていた。


「おい、店長……」


声を上げた瞬間、おれは謎の光に包まれ、『暗闇』に引きずり込まれた。


『暗闇』――それ以外どう表現すればいいかわからないその場所で、おれは当然困惑した。


なにがおこった?

おれはどうなった?

夢なのか?

死んだのか?

なぜ?


いくつもの疑問が浮かんでは消えていく中、おれに語り掛ける声があった。


「おお、我が召喚によくぞ応じて下さいました。

 さあ、異なる世から来たりし救世主よ、この世界『ゼデルギア』をお救いください!」


やけに耳障りな、テンションの高い女の声だった。

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