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安全なダンジョン

 さて、異世界の人材確保の仕事を頼まれてから一週間が経過しました。

 その後もポツポツと応募があり、印象のよかった人?から採用して、

 創作した異世界はすこし賑やかになってきました。


 そんないつも通りの仕事をしていたある日、

 ふと仁和さんに、何人ぐらい雇うのかと聞いたところ。

 ”テーマパークが開園できるぐらい”とのことでした。

 なるほど、どうやらここは一大異世界テーマパークになるようです。


 私たちの世界の人が訪れるとファンタジーな世界を体験できるテーマパークに。

 現在の異世界人が訪れると、古き時代を感じることができるテーマパークに。


 世界を跨ぐ2面性を持ったテーマパークになるようです。


 日本でいうと時代劇の村のようなイメージです。

 外国人が訪れると、日本らしいサムライやニンジャを見ることができる。

 日本人が訪れると、古い時代を体験できるテーマパークになるということです。


 つまり求められているのは、”らしさ”なのです。

 それは"泥棒なら口ひげにほっかむり”であるべきだし、

 チェック柄の帽子に虫眼鏡を持っていたら、それは探偵であるべきなのです。

 そこに意外性は必要なく、いかにも異世界らしいものが必要なのです。


(この仕事の核心をついた気がする、ひょっとして私才能があるのでは……)


 そんなことを考えていると、園田京子先輩から電話が掛かってきました。


「今日は出勤したらダンジョンまで来てね、完成したから」

「完成したんですね!楽しみです!すぐ行きます」


 ダンジョンはけっこう”らしく”出来たのではずです。

 すこしワクワクしながら、私は現地へ向かいました。


 いつも通りオフィスに向かい、社長バスに乗り換えて草原を走ると

 小高い丘が見えてきました。

 そして社長バスは丘の前で停車しました。


「さぁ着きましたよ綾部君」

「ありがとうございます」


 社長を降り、丘を見る。

 丘のふもとには石畳でできた道があり、ダンジョンの入り口がありました。

 どうやらこの丘の中をくりぬいて作ってあるようです。

 入り口にはそれと分かりやすい石柱や石で出来た門がありました。


「おはようあおのちゃん」

「おはようございます」


 そこに先輩もいました。


「こんなところに丘なんてありましたっけ?」

「ダンジョンを作るのに丘から作ったのよ」

「魔法ですか?」

「もちろん魔法よ」


(便利だなぁ魔法)


「入口雰囲気いいですよね、ダンジョンっぽいですよ」

「漫画やアニメを参考にしたわ」

「はやく中に入りましょうよ」

「あぁ、ちょっとまってね人と待ち合わせてるのよ」

「誰か来るんですか?」

「うん、ちょっとね」


(その誰かと一緒に中に入るのかな?)


「あぁちょうど来られたみたいね」


 先輩が見ている方向を私も見て見ると、2人の人影が見えました。

 すこし背の低い2人はヘルメットを被っているようです。


「先輩、あの人たちは?」

「業者の人よ」


(業者?)


 やがて目の前にきた2人は、イノシシっぽいお顔をした2人組でした。

 そして2人組は話しかけてきます。


「初めまして、世ダン連から来ましたオークの井上と斎藤です」

「初めまして、園田と綾部でございます」


 本日は宜しくお願いしますとお互いに挨拶を交わしました。

 井上と名乗った方は少し背が高く、眼鏡をかけて手に資料とバインダーを持っています。


「ふむ、ここが入り口ですね?少し拝見致します」

「宜しくお願いします」


 2人のオーク達は、入り口を詳しく見て何かを書き込んだりしています。

 私は小声で尋ねました。


「先輩、世ダン連ってなんですか?」

「世界ダンジョン連盟のことよ、ダンジョンの出来栄えを見に来たのよ」

「はぁ、そんな組織があるんですね」

「世ダン連の正式なダンジョンに認定されると、カタログに乗せてもらえたりネットのマップに表示されたりするわよ」

「……何ですか正式なダンジョンって」

「ま、その話は追々ね」


 そういうと先輩は2人を先導して中に向かっていきます。


「ほらあおのちゃん行くわよ」

「は、はい」


 私も3人を追いかけて入ります。

 入り口に【定礎】のプレートがみえた気がしましたがスルーしました。


 中に入ると2人のオークはさっそく照度計を取り出しました。


「照度OK」

「はい、照度OK」


 斎藤さんが確認し、井上さんが記録しているようです。


「明るさの基準もあるんですか?」

「世ダン連では、ダンジョンの明るさの基準を設けておりますので」

「は、はぁ」


(どうりで明るいと思った)


 バインダーに記録を終えた井上さんが、色々と聞いてきました。


「まず、事前にいただいた図面には落とし穴とございますが」

「それはこちらです、どうぞ」


 先輩が先導し、落とし穴の場所まで移動する。


「こちらが落とし穴になっています」

「ふむ、深さは?」

「1m以内です」

「はいOKです、マット敷いてますか?」

「底にマットが敷いてあります」

「はい確認しました」


(え、たった1m?)


 私はつい先輩に聞いてしまいました。


「え、1mなんですか?深さ」

「そうよ、深いと危ないじゃない」

「そりゃそうですけど、1mとかふつうに登れますよ」

「登れないと困るじゃない」


(あれ?これは私が間違っているのかな?)


 その間も、2人のオークは淡々とチェック項目を確認していきます。


「では次に、床から針が出る仕掛けですが」

「はい、針はスポンジで出来ています」

「はいOKです」


(なんだこれは)


「この岩が転がってくる仕掛けですが」

「岩は発泡スチロールで出来ています」

「はいOKです」


(……)


 他にも2人でかんがえた罠がことごとく安全になっていました。

 ガス(ただの水蒸気)が出る壁。

 ちょっとだけ回転する床。

 (途中まで)迫る壁。

 等々。


 すべての罠をチェックし、

 ダンジョンを回り終えた4人は入り口に戻ってきました。


「本日はありがとうございました、安全に配慮されたいいダンジョンですね」

「ありがとうございます、世ダン連のガイドラインに沿って作りましたので」

「世ダン連公認ステッカーとのぼりを後日送付いたしますので、ご活用ください」

「はい、本日はありがとうございました」


 こうして2人のオークは帰っていきました。


「あの、先輩、ダンジョンすごく安全になってましたけど」

「あおのちゃん、言いたいことは分かるわ、でもね?」


 そういうと先輩は一息おいて続けました。


「冒険者や勇者が罠でひどい目に合ってるとこなんて見たくないでしょう?」

「うっ、たしかに」

「異世界の子供も遊べる、冒険気分が味わえる安全なダンジョンとして営業したほうが儲かると思わない?」

「そんなものですかね」

「あおのちゃんだってお城に観光に行って罠にかかったり痛い思いしたくないでしょう?」

「そりゃそうですけど」

「世ダン連の正式なダンジョンとして認可されたら色々と特典があるからね、わざわざ安全にしたのよ」

「その世ダン連の正式なダンジョン認定はお金かかるんですか?」

「……そうなのよ、年会費がかかるわ」

「天下り団体ですかね?」

「どうかしらね」


(まぁ確かに、誰も来ないもの作ってもしかたないか)


「ちなみに世ダン連の認可を受けていないとどうなるんですか?」

「無許可ダンジョンになるわね、パンフレットやガイドブックに載っていないから人が来ないわ」

「えぇ!?」

「無許可のダンジョンは本当に危ないから近づかない方が良いわよ」

「見ても近づきません!」


(なるほど野良のダンジョンもあるのね)


「よし、これにてダンジョンも完成ね」

「先輩、これで本当に異世界っぽくなるんですかね?」

「どうかしらね、でも法令がしっかりできている以上は、会社としてはコンプライアンスを重視しないとね」


(まぁ種族は色々といるし、あとは服装で誤魔化すしかないかな)


「さて安全の確保もできたし、そろそろアレができるわね」

「アレというと?」

「この会社の究極の目的はね、元の世界からツアー客を集めて、異世界ツアーを開催することよ」

「そうなんですか!?」

「ふふ、他社には無いすごいサービスでしょ?」

「そりゃ実現したらすごいことになりますよ!」

「そしてウチが観光業界のトップになるのよ」

「さすが先輩!」

 

 2人でオフィスに戻って盛りあがっていると、そこに仁和さんも帰ってきました。


「ただいまぁー」

「おかえりなさい」

「ダンジョン完成したんだねーおめでとー」

「ありがとうございます」

「仁和さんも見に来てくださいね」

「うん、いくよー」


 仁和さんはそういいながら、駄菓子を片手にソファーに横になりました。


「村ももう完成ですよね?」

「そうねー」

「ツアーも考えていかないとですね」

「あ、そうだそのことなんだけど」


 そういうと仁和さんは体を起こして言いました。


「元の世界の若松観光が、異世界ツアーを開催するってニュースになってたよー」

「へ?」×2


 私と先輩は顔を見合わせて叫びました。


「えぇーーーー!?」


 まさか異世界ツアーの先を越されるとは思いもしませんでした。

 しかも相手は大手の有名な観光会社です。

 突然のライバル会社にどうなることやら。

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