彷徨う
緋桜の幻想恋~終焉へ紡ぐ約束~
(ひおうのげんそうれん)
輝くように美しかったブラウンの髪は死者のような白銀へと変わり、琥珀色の瞳は血を吸ったかのように赤く人ではない容姿になっていた。
そう私はあの日から、人ではなくなっていた。
成長することもなく、朽ち果てることもなく。
十六歳の姿のまま…。
何百年もの歳月をただ一人、屍のように生きていた…。
先の見えない暗闇の世界をあてどなく彷徨い続けた。
行先なんて何もなくて…。
どこに行きたいのかどこに行くのかなんてわからなくて…。
長い年月の間目の前で繰り広げられる死を幾度となく見続け、心が壊れからっぽになっても魂のない人形のようにただ歩き続けた。
そして人間の世界から逃げるように遠く離れた誰も踏み入れることの許されない、魔物や魔獣たちが住む深い森へとたどり着いていた。
人間が踏み入れることのない深い森にはさまざまな魔物や魔獣が住んでいた。
だがそんな者たちにさえ私は異質な物として認識されるのは時間の問題だった。
呪われたこの身に触れたものは、どんな強靭な牙や爪を持つ魔物でも屍と化す…。
すべての生命を喰らいつくすこの身を傍から見れば一種異様な存在だっただろう。
触れた草花は生気を吸い取られたかのように枯れはて、生命をなしたものはこの世の苦しみを味わいながら魂を抜かれ肉の塊へとなる。
どれだけの命を奪てきただろう。
幾度となく繰り返された光景が、自分自身が人ではないということを思い知らされる。
もう目の前でどんな生き物の死も見たくはなかった。
この世にただ一人残され、置き去りにされる。
孤独を思い知る様を…。