永遠の始まり
緋桜の幻想恋~終焉へ紡ぐ約束~
(ひおうのげんそうれん)
世界から取り残されたような深い森の中で。
屍のように今も私は生きている。
もう何のために生きているのか。
どうやって息をしているのかさえ…。
わからない…。
ただそこにいて…。
ただ生きている…。
この呪われた身体を見るたびに、数百年経った今でもあの惨劇を…。
目の前で死んでいった愛する人たちの顔が鮮明に浮かぶ…。
恐怖に満ちた瞳で私を見つめ、私の腕の中でもがき苦しみながら死んでいったあの日を…。
数百年前…。
世界は国同士の争いもなく安寧な日々が続く平和な時代だった。
古くも美しい白亜の王城の周りをたくさんの花々が咲き乱れ、優しい風が吹く暖かい春のこの日、大広間では国内外から王族、貴族達が集まって盛大なパーティが開かれていた。フロアの中央では豪華なドレスを身に纏う女性を華麗にリードしながらダンスを披露する中、周りではその光景を見ながらワイン片手に貴族たちは自慢話に盛り上がっていた。
このパーティの主役である私はフロアの熱気に高揚し心臓躍る気持ちを押し隠し、皇女である任務を果たすため数段高い場所から次から次へと来る来賓客への祝辞の言葉に受け答えをしていた。
16歳の誕生日を祝うパーティの主役として、笑顔を絶やさずこの国の皇女としての役割を全うしていた。
平和な日々が続いたこの国で王家の娘として生まれ育ち、これからもずっと愛する家族と優しく見守ってくれているたくさんの人たちに囲まれて、これからもこんな幸せな日々がずっと続くと信じていたあの日…。
この国のすべての人たちに祝福されながら幸せな時間を送っていたあの瞬間。
大広間の中央で私は真っ赤に染まったドレスを着て立っていた…。