プロローグ
「ここは・・・どこだ?」
俺は何もない暗闇にいた。何もないという表現がここまで合う画があるだろうか。何処かの、何も無い部屋にいるわけではない。物理的に何も存在していない。
壁も、
床も、
天井も、
自分の肉体すらも・・・。
体がないことには気づいた時、ほとんど驚かなかった。あまりにも違和感がない。動こうと思えば動ける。動けている・・・と思う。何分景色が黒一色のせいで自分が進んでいるのか分からない。
「俺はどうしてこんなところにいるんだ?」
そんな疑問は浮かんでくるが、不思議と焦りはない。落ち着いている。
取り敢えず、自分がここにいる理由を考えた。
たしかーー
・・・
夏休みが明けて、少し涼しくなった頃。一ヶ月ぶりの学校で少し疲れていた。
俺 平沢 蓮は、勉強も運動も苦手ではない。学校での評定でもオール四だ。
すこし真剣になれば五を取ることもできる。いわゆる、《ギリギリ優等生》をやっている。
日々の生活も特にこれといったことはない。ぼっちな訳でも、人気者なわけでもない。普通に高校生をやっている。
「おい、蓮。帰りゲーセン行こうぜ~」
俺の中学からの親友の 宮場 仁だ。天性のゲーム好きでよく一緒にゲームをやったり、語り合ったりしている。
「夏休みに散々行ったろ。俺は帰りたいんだが?」
「なんだよつれないなぁ〜。じゃあ、俺に勝ったら一週間、毎日ジュース一本奢ってや「よし、行こう!」早っ!」
とまぁ~気を良くしてゲーセンに行ったはいいが、俺よりもゲーム好きで、俺よりもゲームに詳しい仁が、俺より何倍も遊んだゲームで負けるわけもなく、俺が意地を張って何回も勝負を挑んで、そのことごとくを打ち負かした。
「クッソ~何で勝てないんだ」
「経験が違うんだよ。それより蓮、明日からジュース奢りな」
「え・・・?それって、俺がお前に勝った時のお前の罰なんじゃ・・・」
「んな訳ないだろ。全部で八勝だから・・・一週間、毎日八本奢りな。いや、それより八週間、毎日一本がいいか」
「はぁ~わかったよ。面倒だから今日から八週間な」
仁にジュースを奢って別れたあと、俺は家に向かって歩いていた。友達から来たラインを返しながら横断歩道を歩いていると、突然。
ギィーーーーーーーーッ!
聞き慣れない、異質な音が周りの空間を支配した。視界にはガードレールを擦り、火花をあげながらこちらに向かっているトラック。
ドゥン!!!!
鈍く、重い音を最後に俺の記憶は途切れた。