第4話 「元勇者対拳王」
4話目、スタート!
「さぁ、第2ラウンドといこうか?なぁ?」
確かに拳王と名乗るだけはある。規格外の強さだ。だが数秒でも稼げれば充分。
「ああ、今度は目に物みせてやる。攻撃術式多重展開」
俺の背後に魔法陣が多数展開される。その数は優に100を超えていた。防御術式が盾なら攻撃術式は大砲をイメージして構成していて、1発1発が必殺の威力を誇る。
「展開完了。一斉掃射!!」
「ほう。では敢えて受けてやろう。はぁぁぁっ!!」
数十秒程経ってようやく嵐のような砲撃が終わる。ジーグヴァルドが居た辺りには所々クレーターが形成されていて、その威力の高さを物語っていた。
「はぁっ、はあっ…………」
「確かお前生まれ変わる前は傭兵って言ってたよな?昔の傭兵ってのはこんな強えのか?なぁ?」
「まさか、これを受けて無傷なのか……!?」
「まあそれなりには消耗したがな。さて、次はこっちかね。烈火の型・【紅蓮】!!」
消耗した。それが俺には冗談にしか聞こえなかった。ジーグヴァルドには傷はおろかその服にさえ何の損傷も見られなかった。本当に規格外すぎる。
そしてカウンターとして放たれたのは何だったのか。喰らった俺でさえよく分からない。気がついたら上空に突き上げられていたからだ。
「がっ……」
「烈火の型・【弐式紅蓮】!!」
「ぐふっ!!!!」
そこから地上への追撃。今身に着けている戦士ノ鎧はそれなりに硬い装甲のはずなのだ。だが、彼の拳はその防御をいとも簡単に貫き俺へのダメージを与えてくる。
「くっそ、あいつを思い出すな…」
「まっ、この俺相手によく粘ったほうだな。修行して出直してこいや」
拳に黒のオーラが収束している。間違いなくあれを喰らったら負けるだろう。
「これで終わりだな。うん。魔拳!!」
「まだだ!兵装強制解除!!」
「うぉっ!!!!」
拳が目前に迫ったギリギリのところで纏っている鎧を内側から爆発させるように脱ぎ捨てる。
これが奥の手、兵装強制解除。近距離の相手にダメージを与えて弾き飛ばすことができるのだ。
「対人兵装起動・弓兵!!」
「ほう、新装備か。それで?俺に勝てると?」
これまでとは違い全身鎧ではなく、篭手と胸当て、脛当てといった軽装に換装する。そしてその手には漆黒の無骨な弓があった。
「喰らえ、|その矢、天翔ける流星の如く(スターダストブレイカー)」
「なっ、消えっ………。」
弓兵の特殊能力は瞬間高速移動。遠距離戦に特化しているのだ。戦士ノ鎧の能力は使えなかったがそれは今度披露するとしよう。
俺が上空に向かって放った矢は分裂しジーグヴァルドへと襲いかかる。
先程の攻撃術式とは違い兵装の強化を受けて放たれた矢の威力は比べ物にならない。まさに流星の如く。
その矢を魔拳でさっきと同じ様に迎撃しようとしていたジーグヴァルドだったが、今度の矢は威力が数段上がっている。迎撃に失敗し初めて目に見えるダメージを負っていた。
「ちっ………まさか烈火の型以外を使う羽目になろうとはなぁぁぁ!!!」
その怒声と共に、ジーグヴァルドへと向かっていたが逸れた。
―ガガガガガッッッッッッッ
矢の勢いは全く衰えていない。ましてや狙いを反らしたわけでもない。彼はその矢1本1本全てをまるで草木を払うかの様にその悉くを逸らしていたいたのだ。
「水月の型・【草薙】ってな。さぁて、そろそろ決着つけようかね?
魔装・烈火の極み・…………」
「ああ、この一撃にすべてを込める。極技発動」
『承認。極技。|此れは我が全てを掛けた一撃なり(バーストステラ)】
「零式紅蓮!!!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!!」
ジーグヴァルドの拳から漆黒と紅蓮のオーラの奔流が放たれる。もはやそれは光線の領域に達していると言っても過言では無いだろう。
対する俺が放つは此の身に存在する全ての力を集束した一撃。現在のみならず、未来の自分の魔力を消費して放てるのだ。この特性によって足りない魔力を補い100%以上の力で敵を穿つことが可能となる。
―ゴォォォォォォォォォン!!!!!
世界を揺るがす様な爆音。世界は白く塗りつぶされる。衝撃が鳴り止んだその時、立っていたのは……
台風が………