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転生担当の女神様は、テンプレ展開を嘆きます

作者: 苫夜



「それじゃあ、どんな能力をお望みですか?」


目を白黒させて困惑する人間に、私はそう話しかける。

ただいま、転生作業真っ最中でございます。

これでチート能力を上げたら、あとは色々事務処理を終えて、神言を唱えたらこれにて転生終了!





「ふーぅ、疲れたあぁぁ」


今日もまた、1人どっかの世界に勇者が誕生した。

これが、私、女神の仕事です。

ラノベとかでいう、初っ端でチート能力をくれるっていう認識の存在かもしれないかも知れません。


えっ?なんでラノベを知ってるのかって?

こう見えても私、地球の世界には変装して何度かいったことあるんですよ。

そこで見つけたラノベにはまっちゃって!

これが面白いこと面白いこと!

ただ一つのジャンルを除いては。


「異世界転生モノ、まるで私を特集したドキュメンタリーみたいだわ…」


そう。転生のさせ方も、転生した後の人間の暮らしぶりも、今まで私が担当した人間がどれも私の今まで読んできたラノベと同じ展開だったのよ!


みんなチート能力で異世界の勇者となって。


信頼できる仲間もつくり。


最強の武器を手に入れ。


そして力を合わせて魔王を倒す。




………もー見飽きたわ!転生させるのは仕事だけど、毎度毎度同じ展開!これじゃあさせてあげる方も飽きるってもんよ!


ゴホッ、失礼しました。少し言葉が荒れてしまいましたね。

でも、とにかく先ほど言わせて頂いたのは、私の本懐でございます。

今日まで我慢させてもらいましたが、明日からはもう我慢はしません。あっ、世界神様には秘密にしといてください。怒られたくありませんから。

すみません、あと一つだけ叫ばしてください。




「テンプレなんか、ぶっ壊してやるわ!」





---------------------





気づくと、目の前には美しい女性…と思ったらくたびれた老婆がいた。

周りを見渡すと、そこは一面真っ白な部屋。

……かと思ったら、何かところどころペンキ?みたいなので青く色付けられている。

なんだこれ?


「私はこの世界の女神です。あなたは、今日、異世界に転生することになりました。そのためにまず、私の方から色々とさせていただきたいことがあります。」


そう目の前のくたびれた老婆、いや女神が話し始めた。


なるほど、異世界転生か。

地球に未練はちょっとあるけど、転生できるならいうことはない。

唯一不満を言えば、女神が美人じゃないこと。

なんたって、チート能力で無双できるんだぜ?

その力で魔王を倒してもよし、女の子たちと仲良くなるもよし。


どうしようかな。どんなチート能力貰えるかな?選べるならどんな能力にしよう?


「まず始めに言わせてもらいますが、あなたはドワーフとして転生してもらいます。」


…………は?


「いやなんでですか!俺は勇者になりたいんですよ!」


俺は必死に叫んだ。そんな鍛治ばかりなんてやってられるか。


俺のその言葉を無視して、女神は続ける。


「ついでに言っておきますが、あなたのところはとても平和な世界です。魔王なんていませんよ?」


俺はもう叫び声をあげることさえ嫌になった。

俺の想像してた世界と違う。


「でも、安心してください。あなたには一つ異能力を差し上げましょう。無事転生を済ませたら、自らでそれを確認なさってください。」


絶望にいた俺を、その言葉が救った。

そうか、まだそれがあった。

なるほど、チート能力さえあれば、たとえドワーフでも、バラ色生活かも知れないからな。

俺はその能力がどんなものかを想像しては、ニヤつきが止まらなかった。


「それでは、お元気で。」


女神が神言を唱え始める。


俺の体は光に包まれ、俺の意識は闇に落ちた。





---------------------





よっしゃあ!やってやったわ!!


………ゴホッ、またまた失礼しました。どうも感情が盛り上がるとこんな口調になってしまって。


でも、私やりました。

徹底的にテンプレの芽を摘んでやりました。


・そもそも平和な世界。

・人じゃなくてドワーフ(ブサイク)に転生。

・授けた能力は、「ヘソのあたりから水がチョロチョロでる能力。毎分1mlくらいだせる。


これだけやれば大丈夫でしょう。

ブサイクのドワーフにすることで、ハーレム展開を回避。

平和な世界にして勇者の英雄展開も回避。

チート能力を使って衆目を集め、人気者になる展開も回避。どうやったらあんな能力を使いこなせるのかしら?


これで、ようやくテンプレの沼から抜け出せる。あの人には申し訳ないことをしたと思っているけど、こればっかりはしょうがないでしょう。

まあドワーフなんで、鍛治をすれば金には困らないし、水の心配をしなくてもいいから、きっと大丈夫でしょう。


さて、どんな展開になるかしら?

今から楽しみだわ。





---------------------





1ヶ月後。

私はウキウキしながらあの男の転生ログを見てみることにした。

さて、どんな暮らしをしているかしらね?

って、普通の暮らししかしてないでしょうけど。


〈転生1日目〉

・記憶を失ったドワーフとして、ドワーフの里に迎え入れられる。

・自らの能力に絶望する。

・鍛治の腕を認められ、鍛治師として働き始める。



いいわね。1日目から好スタートだわ。

多分ここからはあんまり動きがないと思うから、1度30日目の昨日のログを見てみようかしらね。


〈転生30日目〉

・魔王との最終決戦に備える。

・仲間たちと最後の戦いにむけ覚悟を決める。







??????????????????







《《《どうしてこうなってるのよ!!!》》》





私は急いで2日目からログを見直した。


〈転生2日目〉

・突然魔王発生。

・旅の女剣士に、鍛治の腕を見初められ、共に旅にでる。


なんでいきなり魔王発生しちゃってるのよ!

いきなりテンプレじゃない!

しかも早速なんか女がついてるじゃない!!

あのブサイクを連れてくなんて、どんな好みしてるのよ!!!


〈転生5日目〉

・旅の大魔術師に、顔をイケメンにしてもらう。

・エルフの少女が旅の同伴をはじめる。


なにさりげなく整形まがいのことしてるのよ!

それとハーレム展開まっしぐらじゃない!


〈転生13日目〉

・「ヘソから水が出る能力」を使って、砂漠で遭難した王族を助ける。

・助けた王族の国から正式に勇者として認められ、活動を始める。


もう文句を言う気力もないわ。



はぁ、はぁ。

…この後はどうせみる必要はないわね。

だいたい想像できるから。

でも万が一ってこともあるかもしれないし、一応見とこうかしらね。







結果:安定のテンプレ








ああ、もうほんとテンプレ展開なんてやってられないーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!




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― 新着の感想 ―
[一言] 強運と、無駄なたくましさを持つなろう主人公達は、どんな境遇でもテンプレへと昇華させてしまいそうですね。
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