四
あれから二週間が経過した。
まずギルドマスターの家、ウェイスルン子爵家の上から下から大騒動で幕が上がった。
何せお茶会に参加するのは、家を出で半分平民のような生活をしている三男と、平民の冒険者である俺の二名だけなのだ。更には、そのお茶会の如何によっては最悪お家取り潰しされる可能性もあるらしい。
本当ならウェイスルン子爵家当主自らも参加したかったそうだけど、呼ばれてもないのに行くわけにもいかない。
そのためか、教師役のギルドマスターの妹がものすごく厳しかった。本当に寝る暇もないくらい朝から真夜中深夜まで、何十回となくお茶会のマナーを徹底的にたたき込まれた。
もうこの時点で俺は抜け殻状態。
更にギルドマスターの兄、現ウェイスルン子爵家当主から幾度も絶対失敗するな、と命じられてしまった。
命じられたとはいえ、人間出来る事と出来ない事があるんだよ。
そういえば服も子爵家からプレゼントされた。冒険者なんだから鎧でいいじゃん、と言ったんだけど、お前はお茶会に完全武装で挑むのか喧嘩売りに行く気か!? と怒鳴られてしまった。
護衛ならともかく参加者が武装するのは良くないらしいよ。
そしていよいよ当日を迎えた。朝から風呂に入らされて、無精髭も全て剃られ、髪まで整えられた。
鏡見て、一体こいつ誰だよ、って思ったのは秘密だ。
そして今、ギルドマスターに先導され第三地区にある公爵家へと向かっている最中である。
もちろん徒歩ではなくウェイスルン子爵家の馬車に乗って、だ。
「いいか、絶対、絶対余計な事は話すなよ! 基本的に俺が全て対応するからお前はお茶でも飲んでじっとしてろよ!?」
「分かってるって、しつこいな」
家を出てからずっとギルドマスターはこんな感じなのだ。
いい加減うざく感じてきた。
「絶対だぞ!? 下手な事を言えばその場で首を切られてもおかしくないんだからな!?」
「俺、首切られても大丈夫だけどな」
何せダンピールなもので、首を切られても火で灰になるまで焼かれてその上で聖水をぶっかけられでもしない限り、死ぬ事はない。
その後死んだ振りして、機会を狙って逃げれば良いだけだ。
なんだ、簡単じゃないか。
「あほぅ! お前の如何によって今後のギルド運営にも関わってくるんだよ!」
もう面倒臭くなってきた。
いっそ帝国から出て別の国へ移住でもしようかな。でも眷属がいるしなぁ。いや、彼女もかなり安定してきているし、俺がいなくなっても大丈夫だろ。
などと本気で考えていると馬車が止まった。どうやら第三地区の入り口についたらしい。
「ハーレンス公爵家主催のお茶会に呼ばれた冒険者レモングルドと、冒険者ギルドのギルドマスター、ガーバイル=ウェイスルンだ」
「話は伺っております、どうぞお通り下さい」
ギルドマスターが馬車の窓から顔だけ出して衛兵に説明するとあっさり通された。
俺が心配することじゃないけど、中すら見ようとしないなんて、本当に大丈夫なのか?
と、ギルドマスターに聞いたけど、この馬車はウェイスルン子爵家の家紋が刻まれているし、身元ははっきりしているから、中を改めて見る必要はないそうだ。
でも俺だけだったらまず間違いなく止められてただろう、とのこと。
何せ平民が第三地区に入る事など、帝国史上においても希有な例なんだって。
歴史に名が残るな、と呟くと、悪名として残らなきゃいいがな、と冷静に突っ込まれた。
そして窓の外を眺める。
すげぇ、殆ど建物が無くただっぴろい。
だがよくよく考えてみれば、ここは第三地区、上級貴族しか住んでいない場所だ。そして帝国広しといえども、上級貴族の数なんてたかが知れている。五十もないだろう。
これだけの土地に五十件未満の家しか建っていないのだ。そりゃ一件当たりの広さは膨大になるか。
馬車は暫く走り、そしてとある一件の家の前で止まった。
どうやらハーレンス公爵の家についたらしい。
「さあ、いくぞレモン。くれぐれも……」
くどくどと続くギルドマスターの小言を聞き流して、俺は馬車から降りた。
♪ ♪ ♪
白い髭を生やした爺さんに案内されたのは休憩室とやらではなく、応接室だった。
まだ相手方の準備が整っていないのでここで待っていろ、ということらしい。
「しかしでっかい家だな」
「当たり前だ」
ウェイスルン子爵家の家も大きいかったが、ここは別次元の大きさだ。
玄関ホールだけで俺の泊まってる安宿三件分くらいの広さがあったぞ? しかも床は大理石で、あちこちにいかにも高そうな壺や彫像が並んでいたのだ。
更にここの部屋に来るまでの間、十以上のドアを通過したのだ。また廊下も非常に長く、優に一キロ以上ありそうな雰囲気だった。
「家の中に馬車欲しいな」
「あほかお前は」
廊下の端から端まで歩くだけで十分以上かかりそうだ。なんだよこの無駄に長い廊下は。
しかも外から見る限り三階建てだったはずだ。あの長い廊下が三階分存在することになるのだ。一体こんなでかい家に何人住んでいるのだろうか。下手すりゃ同じ家に住んでいるのに月に一回しか遭遇しない、なんてこともありうるよな。
そしてこの応接室。
カンだけど、ここは下級貴族用の待合室だと思う。玄関や廊下にあったような調度品の質が若干異なるからだ。どちらかと言えばこの部屋は華美な感じがして、ウェイスルン子爵家にあった調度品と似ている雰囲気が感じられるからだ。
更にギルドマスターの言葉を考えるなら、下級貴族なんて滅多に第三地区には入れないらしいし、となるとおそらくこの部屋も使われる事なんてないにも関わらず掃除は行き届いている。
慌てて掃除した、という事も考えられるけどさ。
あの長い廊下から続く部屋数が一体どのくらいあるか考えたくもないけど、その部屋全部毎日掃除しているのだとしたら、どれほどの人数を雇っているのか。貴族の最上級、公爵家の金回りの良さを来客に見せびらかす一面もあるとは思うけど、もう住む世界が別だな。
「準備が整いました」
金ってあるところにはあるんだな、と俗なことを考えていると、扉がノックされ先ほどの爺さんが入ってきた。
「本日は天気が良いので是非中庭で行いたい、とリーデルお嬢様のご要望でして。お客人には少々お時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「また玄関まで戻るのか?」
「おいっ!!」
ついぽろっと口が出てしまい、ギルドマスターに窘められた。
でもさ、この部屋も玄関から数分歩いたところなんだよ? また戻るのって面倒じゃね?
「いえ、途中に中庭へ続く玄関があります」
だが執事の爺さんは俺の言葉にも動揺せず、僅かに口元を綻ばせただけだった。
これが上級貴族の執事か。
「し、失礼いたしました!」
「構いませんよガーバイル卿。本日は卿とレモングルド様はお客人です」
ギルドマスターが平謝りしているのを爺さんは鷹揚に返す。
後から聞いたんだけど、この爺さんも侯爵家という上級貴族の一人なんだって。つまりこの屋敷にいる使用人すら、子爵より格上の貴族って事か。
そしてお茶会開くよ、ってギルドに使者として来たのもこの爺さんだそうだ。
ちなみに、なぜ貴族が貴族を雇うのか、という理由だが偏に雇用先を増やすためだそうだ。
当主になれたら良いのだが、ギルドマスターのような貴族の次男、三男、或いはその子たちはどうなるのか?
基本貴族の子は貴族だが、更にその先、孫になると貴族ではなくなり平民落ちとなる、厳しいね。
でも生まれてから貴族でなく平民だ、と教育され育てられた孫なら平民街でも十分生きていけるが、貴族の子として育てられたものたちは生まれついての貴族だからか、平民街では生きていけない。
能力があれば騎士や官僚になる道も存在するが、それにもなれない彼らたちの雇用先が、上級や中級貴族の使用人、という訳だ。
もちろん最初から使用人になるぞ、という人もいるし、ギルドマスターのように貴族だけど冒険者になって稼ぐぞ、という人もいし、この爺さんのように代々上級貴族に仕える貴族家もある。
あと、女はどこかの貴族に嫁ぐ、という手段もあるので、どちらかと言えば男のほうが就職先にあぶれるんだって。ふーん。
そうこう言っている間に、中庭へ続く玄関とやらにたどり着いた。
確かに俺らが居た部屋から近かった。北区で言えば七件くらい先の家という感覚で、同じ家の中という括りではなければな。
玄関から出て中庭へと足を運ぶと、そこはまたもや広大だった。北区の広場並の大きさがあるし、噴水まであるよ。
また、中庭にはいくつか机と椅子が鎮座されていて、その中の一つに女性数名が立ながらこちらを見ていた。
一人だけ白を基調としたドレス姿で、残りは侍女服だ。あのドレスの女性が俺を呼んだ張本人って訳ね。
爺さんに先導され、歩いて行くうちにドレスの女性の顔立ちがはっきり見えてきた。
貴族のマナーはまず挨拶から始まる。
一定の距離で立ち止まってから、上位のものが声をかけるまで下位のものは黙っておく。尋ねられたらこちらからも挨拶をする、と。
そして、一通り時節の句やら定型挨拶が済んだ後、ようやく席に座る。この時先に座るのは下位のものだ。これは上位は常に上から目線で下位を見るためなんだって。面倒くせぇ。ちなみに同格同士だとホスト側が下位となる。
今回の場合、まず先導している爺さんが客人の到着した旨を伝え、そして主が俺らに挨拶しつつ声をかける流れだ。でもってその後、ギルドマスターが先に挨拶して、最後に俺となる。
よし、二週間かけて覚えたマナーだ。大丈夫、通じるはずだ。
気合いを入れ直して、改めてホストの女性を視界へと入れる。
年の頃は十代前半、金色の長い髪に青い目、そして特徴のある頭のてっぺんにくせっ毛……くせっ毛!?
「あーーーーーー! あのときの蒸しパン迷子お嬢様!」
二週間かけて覚えたマナーが全て吹き飛んで、つい大声で叫んでしまった。
あっ、と思ったときにはもう遅い。
迷子お嬢様の周りに居た侍女はもちろん、執事の爺さんすら唖然としていた。
ギルドマスターは、おわった、という表情を浮かべている。
しかし迷子お嬢様は俺の声にも驚かず、手で口を押さえながらくすくすと笑っていた。くせっ毛もくるくると回っている。
「レモングルドさん、ようこそお越し下さいました」
♪ ♪ ♪
「た、大変失礼致しました。何分この者は平民であり……」
「良いです。殿方には慣れないお茶会に招待したのはこちら側です。本日は無礼講ですよ」
ぺこぺこと平謝りするギルドマスターに、迷子お嬢様は笑顔でそれを平然と受け取っていた。さすが大貴族のお嬢様、慣れている。
侍女や爺さんは先ほどの驚愕から復活したようで、てきぱきとお茶の準備をしている。
「え、えっと、そういえば名前はなんて言うんだ?」
「レモン! お前はさっきから!」
ギルドマスターが窘めてくるけど、何時までも迷子お嬢様とか、蒸しパンのお嬢さんとか言うのは失礼だろ。
それに貴族の流儀なら、上位のものがまず挨拶をするのがマナーじゃないのか?
一番最初に大声を出してぶっ壊した俺がマナー言うのも変だけどさ。
しかし迷子お嬢様は意に介さず、貴族のお嬢様らしくスカートの端を手で少し持ち上げ、優雅に挨拶してきた。
「そういえば名乗っておりませんでしたね、失礼致しました。ハーレンス公爵家が長女、リーデル=ペイリア=ハーレンスと申します」
リーデルっていうのが名前か、しかもミドルネーム付きとはね。
確か貴族のミドルネームって血筋を表すんだっけ。ならば、リーデルはペイリアという血筋の子孫ということになる。
……で、ペイリアってなんだろ? それにギルドマスターも貴族なのにミドルネームが無いし、名乗れる血筋ってのがあるのかな。まあいいか。
「失礼致しました。私は冒険者ギルド帝都本部のギルドマスター、ガーバイル=ウェイスルンです。そしてこの者がランクD冒険者のレモングルドです」
「冒険者ギルド所属のレモングルドだ……です」
「ガーバイル卿ですね。レモングルドさんは先日お会いした時に冒険者カードを見せて頂きましたから知っております」
粗方お茶の準備が整ったようで椅子に座るよう、リーデルが手で指示してきた。
「へぇ……美味い」
出されたお茶を一口飲んでみたところ、普段チュニアやシッチェに煎れて貰っているお茶に比べ格段に味が良かった。
何というか深みが違うというか、苦さと喉の渇きが非常にマッチしていて今の俺にはピッタリだった。
そりゃこんなところに出されるお茶だからきっと高価な茶葉を使っているだろうし、安宿のお茶なんかと比べたら失礼だろうけど、それでもうまいものはうまい。
「ふふっ、今日の茶葉はハルフェンス地方の一番茶を使用しております。煎れた者はこのチュレイアです」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
一人の侍女が俺に深々と礼をしてきた。
二十を少し超えたくらいの女性で、実に堂に入った侍女だ。先ほどの驚愕から復帰してからというもの、全く表情が変わらない。この侍女も多分貴族でギルドマスターより上なんだろうけど、平民の俺に礼をするって侍女の鏡だよね。
ホストであるリーデルからすれば招いた客人がお茶を褒めたので、煎れた者を賞賛するために紹介したって形なんだろうけどさ。
で、申し訳ないけどハルフェンスってどこだろ?
きっとお茶の名産地なんだろうけど、俺の記憶にはそんな地名は登録されていない。
などと思いながら、会話は進んでいく。
もうこの頃になると、貴族のマナーってなんだっけ? というレベルになっていた。
侍女たちは表情は変わらないものの内心は、所詮平民か、とでも思っているに違いないと被害妄想しているけど、でも最初にリーデルが無礼講って言ったから問題ないんだよ、たぶん。
「しかし東区の裕福層のお嬢様だと思ってたんだけど、まさか貴族のお嬢様だとは思わなかった」
「ふふっ、驚かれましたか」
「そりゃもう、びっくり。ギルドマスターが大慌てで俺の泊まっている宿屋に駆け込んできてさ。何事かと思ったよ」
くすくすと上品に笑うリーデル。今日のくせっ毛はずっとくるくる回っている。きっと本当に楽しいんだろう。
俺はこの時とばかりにお茶を何杯もお代わりして貰った。腹がたぷんたぷんだけど、美味いんだよなこれ。
しかも一杯飲む毎に味が違う。
多分、その時に飲む人の体調や仕草なんかを的確に判断して、都度煎れ方とか茶葉を変更しているのだろう。すげぇな、お茶煎れの達人だよ、チュレイアさん。
「そういやさ、何で俺を呼んだんだ?」
「あら、もうお忘れですか? わたくし、あの時約束致しましたよね。今度はわたくしがプレゼントいたします、と」
「確かにそう言われたけど。まさかお茶会に呼ばれるとは思ってもなかったよ」
「わたくしもハーレンス公爵家の一員です。受けた恩は返さなければなりませんから」
蒸しパン一つ奢ったくらいで、それより遙かに高そうなお茶を何杯も飲めるとは思わなかった。
そしてあっという間に二時間ほど経過し、空に赤みがかってきた頃、侍女たちの動きが変わった。
そろそろお開きの時間になったようだ。
それを察したリーデルが口を開く。
「ところでレモングルドさん」
「あ、今日はものすごく楽しかった、こんな美味いお茶を飲ませてもらってありがとな」
「くすくす、それは良かったです……ではなくて、今から一週間後、とある方のお茶会に参加するのですけど、よろしければレモングルドさんもいらっしゃいませんか?」
彼女の言葉にギルドマスターの顔を伺う。俺は平民だから一人で貴族街に入る事はできない。つまりもう一度ここへ来るのなら、彼の手助けは必須だ。
だがギルドマスターの顔は、断れ、と如実に語っている。これ以上胃痛を酷くしたくないらしい。
それに、とある方のお茶会に参加、と言うことはホストはリーデルでなく別の人だ。
今日はホストが無礼講と言ったからこそ、俺もリラックスしてお茶を飲めたんだけど、別の人がホストをやるならマナーは徹底しなきゃいけないはずだ。
そして公爵家のリーデルを呼ぶくらいだから、おそらく同じ上級貴族なのだろう。
「ご心配は不要ですよ。わたくしのお友達ですし先方にも、無礼講になりますよ、と伝えて了承を得ておりますから」
だがリーデルは俺の顔色なんぞとっくに分かっている、とばかりに先回りしてきた。くせっ毛は左右に揺れている事からおそらく自慢したいのだろう。
貴族って先手先手を打ってきて、断りづらい状況を作るのが上手だな。
しかしいつの間に伝えたんだろう、と思ったけど執事の爺さんの姿が見えない。きっと彼が伝えて返事を貰ってきたのだろう。
はぁ、こういう素早い行動は凄いな。
「今日みたいな形なら俺は良いけど……正直俺だけじゃここに来れないよ?」
「当日、レモングルドさんが泊まっている場所に馬車を回します」
つまりあの爺さんが迎えに来るって訳ね。
ギルドマスターはもう全てを諦めた表情だった。それにここまで整えられたのなら断るに断り切れない。
「分かったよ。ちなみにその方ってどなた?」
「アルフェイラ第二皇女殿下です」
「「は?」」
俺とギルドマスターの動きが止まった。
なんつった、今?
第二皇女殿下?
「実は先日両殿下とお茶会をした際に、こっそり平民街へ出て蒸しパンを買いに行った冒険譚をお話したのですが、その時冒険者の知人が出来たと自慢したところ、両殿下も是非会いたいと申されましたの。快く了承して頂いてありがとうございます」
リーデルはそんな俺らの態度などどこ吹く風とばかりに、どんどん話を進めていく。
あの……皇女殿下って事は皇族……だよね? しかも両殿下っていうことは二人いるんだよね。
そりゃリーデルは貴族のトップ、公爵家だから皇族との付き合いもあるし、友達と言ってもいいだろうけどさ。
「残念ながらミッシャテローゼ第一皇女殿下は都合が付かず不参加となりましたけど、その代わりわたくしの妹のミレイシアに参加お願いしました。あ、今回リベリアラさんも参加者として来て頂けますね」
第一皇女は不参加だけど第二皇女と、更にリーデルと彼女の妹が参加するお茶会、また初耳のリベリアラとかいう女性も来る。
ど、どどどどどうしよう!
皇族とお茶会!?
助けを求めるようにギルドマスターを見るが、彼はもう関係無い振りしていた。
そりゃないぜ!
♪ ♪ ♪
リーデルとのお茶会が終わった帰り道。
「レモン、お前は今日を以てギルド除名な。もうギルドは関係ない。ないったらない。絶対関係ないんだ」
「助けろよ! お前それでもギルドマスターかよ!」
「もう俺の手が届く範囲じゃなくなった。諦めろ」
「じゃあ当日ガンゼズやアイ、ペトラーゼも連れて行くぞ。ガンゼズはともかくアイなら嬉々としてついてくると思うぜ」
「おいばかやめろやめてくださいお前はギルド潰す気か!」
大の大人が二人してみっともないののしり合いを繰り返していた。